ブラックミンクと、その染色や仕上がりの特徴について

今日はブラックのミンクについて書いてみます。

黒のミンクで代表的なものの一番がアメリカ産のブラックグラマミンクでしょう。私はこの分野の専門家ではないですが、もしかしたら専門家が知らないことも伝えられるかもしれませんので、是非最後まで読んでみてください。

まず、ブラックグラマミンクについて書いてみます。産地については専門ではないので詳しくは書きません。知っている範囲で書くとすればアメリカ(北米)ですが、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ほぼブランド化してしまっているようです。一般的にはパールミンクとかパステルミンクのように色としての名前がありますが、ブラックグラマミンクは色の種類というよりは一つのブランドのようになっています。ナチュラルでここまで濃いミンクはおそらくないのでしょう。以前は軽く強化(黒くする)されているものもあったような気がしますが、最近のブラックグラマは本当に刺し毛が短くシルキーで綺麗です。しかし、ブラックグラマミンクは黒ではないのです。離れてみるとほぼ黒にみえますが、基本的に真っ黒という毛皮はいません。茶を思いっきり濃くしたダークという色がありますが、それをさらに濃くして刺し毛が綿毛に埋まってしまうくらい短くなったものです。ショートナップとよく言われますが、ブラックグラマミンクのそれは他のものとはまったく違うといえます。もちろん生産者ごとに品質の差はあるようですが、他の色のミンクのショートナップとは違います。私のインスタグラムでもdixonminkさんというアカウントがあり、よくDMでもやり取りをしますが、素晴らしいミンク生産者です。私のもつ在庫に素晴らしく綺麗なブラックグラマミンクがありますが、それが彼が生産したものかはわからないのです。でも、私の持っているものも素晴らしく綺麗です。

次に染めてあるミンクについて少しだけ説明します。

よく私のオンラインショップの商品にも強化という説明書きがあります。出来るだけ解りやすく説明すると強化とは、漢字で見てわかるように強調するとか強めるとかになります。例えば、ダークミンクを黒に近づけるための処方になります。ですから、薄い色のミンクからは強化では黒くはなりません。元々濃いダークやデミバフミンクを強化することで黒に近づけるということです。ですから、色の濃いダークに比べて少し薄いデミバフミンクだと、強めの強化をするようですが、色をよく見ると少しだけブラウン系の色なのが分かります。良くミンクにブルーイングすると言いますが、これも同じく青味を付けるとか青味を強調するとかの意味になります。ホワイトミンクをより白く見せるためにホワイトニングするとも言われます。全てが同じ系統の薬品を使うかは私は分かりませんが、相対的に見て強調するという意味です。

ブラックに戻ります。黒くする方法に二種類あり、一つは染色です。一般的には染色は酸性染料を使うと言われています。
しかし、強化とは、酸化染料を使っているそうです。染色は確かではありませんが、50??度前後のお湯のなかで染めるらしいです。温度を上げると綺麗に色が定着するらしいですが、皮を痛めてしまうことがあり、とても難しい作業のようです。酸化染料は水の中で色を付けると聞きます。酸化染料の一番わかりやすいのは人間が使う髪染めのなかに、よく最初はクリーム色していて、空気中の酸素に触れて黒く発色するものがありますが、あれが酸化染料です。毛皮の場合は鞣し工程のなかで水の中に毛皮を入れて強化するのだと思いますが空気中の酸素ではなく水のなかで染料が酸化発色しミンクの毛を変化させるということらしく、その分真っ黒にはなりにくいと言われています。だから強化なのかもしれませんね。

 

この強化のメリットは染色のようにお湯につけずに色を付けることができるためにクロム鞣しという処理をせず、通常のドレッシングという鞣し工程の過程で色を強化することができ、仕上がった皮が染色にくらべて柔らかく仕上がるというのが最大の特徴です。

ただ、この強化だと黒っぽくはなるのですが、真っ黒にはなりません。よく見ると濃いブラウンです。これをブラック強化と一般的には言われています。

さらに、酸化染料で染める方法がもうひとつあります。染色工場でやる方法です。上のほうでも書きましたが、これは水のなかではなくクロム鞣しをして、耐熱の皮にしてからお湯の中で染める方法です。これは同じ酸化でも、真っ黒に染めることが出来ます。その代わり少し皮が固くなったり皮の伸びが悪くなったりします。ブラック強化と一長一短の特徴があり、用途によって使い分けるしかありません。

それから、一般的には黒は染色工場さんでも酸化染料で染めるようですが、皮が固くなるのを嫌い私は酸性染料で染めてもらっています。これは通常の赤や青のような染料で染めるようです。もちろん黒という酸性染料があるのかは分かりません。調合して黒にしているのかもしれないのですが、私は刈毛用として酸性染料の黒染を依頼していました。
その理由は、刺し毛が綿毛に比べ染まりにくく、どうしても綿毛は黒になるのですが、刺し毛が黒になりません。グリーンっぽくなったりします。黒の染料が三原色を均等に合わせて作るからなのかどうかは不明ですが、わずかなバランスでグリーンっぽくなったり他の色が出てしまいやすいのです。そのために刺し毛をカットしてしまう刈毛でしか酸性染料では染めません。黒染めの酸性染料染めが何故いいかは、皮が酸化染料の染色よりも柔らかく仕上がることが私にはとてもメリットがありました。当時の担当者さんには苦労をかけたようですが、それでも仕上がりが柔らかいということには代えられませんでした。

ちなみに酸化染料で染めたブラックは皮は硬くなりがちですが、しっかりとドライクリーニングをすれば柔らかさはでます。
さらに、酸性染料で染めたミンクの刺し毛がグリーンっぽくなったりしましたが、酸化染料で染めたミンクの刺し毛はちゃんと黒になりやすいという結果が出ています。酸化染料自体が三原色を組み合わせた染料ではなく詳しくは分かりませんが薬品に近いのかもしれません。間違っていたらごめんなさい。

毛皮のブラック染色とブラック強化の説明は私が知る限りでは以上です。強化そのものの意味がよく分かりにくいことと、酸化と酸性染料の違いなど染色方法で皮の柔らかさや色の出かたが違うことなど、とても複雑で分かりにくいですね。

今回のことについても、あくまで私の感性で感じたことなので、他のひとが同じように感じるかどうかはわからないのです。

そして、手法の説明も完璧ではないはずです。しかしひとつ言えることは、仕上がった結果に対する説明に関しましては絶対の自信をもって書いています。そこだけご理解いただき信頼してもらえると嬉しいです。    長澤 祐一