一見簡単そうな、取り外し仕様のカフス

今日は、インスタグラムに最近載せた、カシミヤのコートに取り外し仕様で取り付けたカフスのことで書いてみます。

一般的なものは、どちらかというと簡易的に作られたものが多く、とりあえず、取り外しにしてあります、、、という程度のものが多く、完璧な作りのものがありません。言葉が少しきついですね。どちらかといえばいい加減なものが多いですとでも書けばいいのかもしれません。でも、本音じゃないことを書いてもしょうがないので、はっきり書きました。

仕上がるまでのストレス

取り外しのエリもそうですが、やはり完璧なものを作るのは毎回、仕上がるまでのストレスはきついのです。

後から付けたカフスやエリでも、まさに最初から取り付けられていたように完璧に作るのですが、ほとんどのものは、最初から取り付けられていても、はっきり言って、完璧だといえるようなものはありません。

この手の、丸みのあるものや立体的になっているエリ等を作るのは、ものすごく難しいのです。もちろん、どうでも良いものはいくらでもできます。でも、そんなものを目指して作っても意味がありませんから、必死に完璧を目指すのです。

今、この手の立体的なものや丸みのあるものは難しいと書きましたが、その意味を少し説明いたします。生地が例えば紙のように薄いものであれば、そう難しいものではありません。しかし、冬物のコートとかになると、ウールやカシミヤを殆どの場合使いますね。例えばカシミヤを使えば、薄いもので袖口の厚みは3mm、厚いもので4~5mmくらいあります。

そうすると袖口の外側と内側で約2cの長さの差ができます。単純に、一枚を少し円錐形に作って、袖口の中に返せば、当然、2cの差があるわけですから、カフスの見返し分として2~3cくらいを袖口の中に返せば、裏側でものすごい分量でだぶつきます。これを解消しないといけません。特に袖口が細いコートの場合には、本当に難しいのです。中でカフスの見返し部分が余ったりすると、手がうまく通りません。

たかがカフス、されどカフス

たかがカフスなのですが、厚み分を加え、内外の周長差をつけて作るのには、普通の手でパターンを引いていては、正確なパターンが作れず、それどころかコストがかかり過ぎで仕事にもなりません。たかが取り外し仕様のカフスといっても、画像に載せますが、かなりのパーツ数が要ります。結果としてCADが必要になってしまいます。

さらに、素材によってはしっかりとした芯を入れないと、袖口からずるずると落ちてきてしまったりします。芯の硬さも微妙ですし、どこまで入れるかもものすごく繊細です。入れ過ぎれば、袖口が下がってしまうし、不足しても下がってしまいます。

基本的には、袖口の裏に毛皮が3cくらい帰り、その先にボタンホールのついた生地の見返しをつけ、コート袖口の裏に返って裏地が縫われているギリギリのところにボタンをつけて、そこだけでピッタリと安定させないと、余計なところにもボタンやループをつけなければなりません。

さらに、カシミヤの生地がやわらかいとさらに難易度は高くなります。写真のカシミヤもかなり薄いものです。薄いと何が問題かというと、カフスを止めるボダンを見返しだけだと落ちでしまいますから、表側にも少し針をかけますが、表にあたりがでないようにしたり、かなり神経を使います。さらに、カフスの重みでも袖全体に歪みが出たりします。このくらいはしょうがないと作る側は思うのですが、お客様はそうは思いませんから、何とかしなければ、ご満足いただけないのです。

一番下にパターンをスクリーンショットした画像を載せますので、興味のある方は見てください。袖口の厚みや外径内径の差をつけて、立体的に袖口にぴたっと合うように作るには、1枚のパターンではできません。

写真上から三番目の袖口側から撮った写真を見れば、袖の中で毛皮が余って蛇行してないのがわかります。

たかがカフスです。少し円錐形になってるだけなのですが、中にピッタリに返すということを考えると、意外に難しいのがわかりますね。綺麗に作れたカフスは、袖口に取り付けなくても、取り付けたように綺麗に形になります。

毛皮のコートやその他の小物を作る場合

今回はカフスですが、毛皮のコートやその他の小物を作る場合でも、立体的なもの、素材に厚みのあるものを扱う場合には、必ず内径外径の寸法差を素材厚みに応じて計算して作る必要があります。バッグなどもそうですね。袋物のバッグなどは、あまり気にせず一般的には作られていますが、ちゃんと作ろうと思うと、バッグのパーツ数もとんでもなく多くなります。

参考までに、パロミノミンクで作ったバッグの画像を最後に追加しますが、そんなことを考えながら見ると、こんなバッグでも面白いかもしれません。ちなみにこのパロミノミンクのバッグがインスタグラムでは一番アクセス数が高く人気があります。

今日は、久しぶりに書きましたが、最近、車のメンテナンスのことを知りたくてユーチューブでいろいろ見てると、本当にたくさんのひとがいろんな動画を上げていて、ライブなんてものまでありますね。ライブに参加するひとが1000人超えてたり。すごいです。動画でカフスの作り方なんかやってもいいかと思いましたが、きっと誰も見ないだろうと思うと、無理かな?と思ってしまいます。

少し、真面目にアップしないといけないとも思っています。また書きます。また、見にきてください。

長澤祐一

 

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