毛皮の基本的な技術(その1)

背中心

背中心を出す

今日は「毛皮の基本的な技術」について書いてみます。写真を見てもらうとわかりますが、セーブルを水張りして余分な部分を落とし、背中心でカットしたものです。

写真が少しぼやけてますが許してください。写真では中心でカットしてあり、その中心側の左右が黒っぽくなっていますが、これがセーブルのキャラクター(背中心)です。左右にバランスよく、黒い毛が分かれていますね。

これが以外に難しいのです。写真では幅が2cmくらいありそうに見えますね。しかし、毛が広がって、そう見えているだけで、実際の毛の濃い部分は左右あわせても1cmあるかないかです。この背中心の出し方は、それぞれ技術者によって違いがあるかとおもいます。例えば一番多いのは下にチャコぺーバーを敷いてルレットなどで毛皮の上から、背中心の濃い部分をなぞる方法があります。他にもいろいろとあるでしょう。

しかし、大体の職人と呼ばれる人達の、そのキャラクターを出す精度は、かなりいい加減なレベルであると断言できます。一般的なものづくりでは、技術の日本と呼ばれていても、こと毛皮の技術になると、技術者のレベルは残念ながら、厳しい言い方ですが、こんな基本的なことさえもできないひとたちが大半であると言わざるをえません。 (さらに…)

ミシン針の針先を研ぐ(続編)

今日は、ミシン針の針先を研ぐ(その2)の続編として、毛皮用で使う三角針について集中して書いてみます。

前回、グラインダーで研ぐと書きましたね。最近、家内の意見を聞くと、少し訂正をしないといけないと感じました。

三角部分の針先も研いだほうがいいというように書いてありますが、男性と女性では指の力が違うようで、女性は、三角部分を研ぐことで、皮を切って進んでいくことがしにくくなり、ザクッという刺さり心地がなくなり、丸針と同じ、ヌルッとした刺し心地になるようで、それが刺さりが悪いと感じるようです。

三角針は、表面を削ってあるぶん錆びやすいこともあり、私はグラインダーで研ぎますが、それが、女性には刺さる感じが鈍くなると感じるようです。 (さらに…)

ロシアンブロードテールの作りについて(パーツ割り編)

ロシアンブロードテールの作りについて(パーツ割り編)

今日は、以前少しだけ書いたロシアンブロードテールと島精機PGM(CAD)というタイトルの内容を少し掘り下げて書いてみます。

写真1はCAD上で、後ろ身頃の原皮の割り振りを書いたもので、矢印右側がバーツを分割したものです。 この割り方で気になるのは背中が一枚の毛皮の幅でカットされていて、その左右は何故細いのか?ということです。

ロシブロパーツ割り

これはイスラエル等で作られる手縫いプレートにも、よく見られますが、中心や身頃前端に安定感を持たせる意味で真ん中やプレート端に一枚皮を持ってくることがあります。 (さらに…)

毛皮用ミシンのテクニック 

2015年5月2日付けの当ブログ記事“フォックス (FOX) のボリューム感を減らすテクニック”の最後に書いた『パショーネコンセプトのなかに”あたりまえのことをあたりまえにこなす とあります。口でテクニックを語るひとはたくさんいますが、実際に正確に縫える人はひと握りだということも最後に付け加えておきたいところです』の箇所が少し誤解を招きそうな気がしましたので、”毛皮用ミシンのテクニック”の観点から補足を書いてみようと思います。

毛皮用ミシンのテクニック

毛皮用のミシンのテクニックというと、スピードとかを競うような部分もあり早く縫えるひとが優秀と、とられがちなところがありますが、実際にはスピードはさほど問題ではないと私は思います。 (さらに…)

フォックス (FOX) のボリューム感を減らすテクニック

今日は久しぶりに毛皮のテクニック的なことを書いてみます。以前、当ブログのシルバーFOXマフラー(Silver Fox) でも書きましたが、わたしが書いた記事ではないのでテクニック的なことがあまり書かれておりません。今回、少し書いてみようと思います。

フォックスのボリューム感

フォックスは見たとおり、毛も長く毛皮のなかでも、最もボリューム感のある素材です。そのため、エリなどはフルスキンで使う場合が多いですが、コート全体になると、ボリュームが出すぎてしまい、以外に綺麗に見えないことがあります。

そのボリューム感を減らすテクニックはたくさんあり、例えば直線で縦にレザーを挟んだり、横にレザーを挟んだり、Vにカットしてレザーをはさみこんだりしてボリューム感を落とすテクニックが一般的ですね。商品でもそのようなものは、よく見かけます。 (さらに…)

パショーネのアトリエ設備

今日は先日、久しぶりにパショーネのアトリエ一階の掃除・片付けをしたので、写真にして初めて公開しようとおもいます。興味のある方は見てください。興味がないひとにはまったく面白くない今日のブログです(汗)。

お客様にもあまり見せることがない、この一階には、二階アトリエで設置できないものが置いてあります。

パショーネのアトリエ設備

下の画像の左端のキャメル色の扉のついている大きな四角い形をしているものが(半分しか写っていませんが)乾燥機です。90c × 180c の板が ゆとりを持って6枚は入ります。しかし、今は全部入れることはありません。 その右隣、写真中央の白いテーブルにブルーの色をしている機械が回転アイロンです。ローリングアイロンとも呼ばれているようですね。多分、イタリア製だと思います。 (さらに…)

ロシアンブロードテールと島精機PGM(CAD)

ロシアンブロードテールという素材を接ぎ合せる作業について書いてみます。まずは下の写真を見て下さい。

1 パターン

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2 ロシブロの縫い

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3 袖の縫い上がり

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4 袖の仕上がり

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通称ロシブロと言われるこのロシアンブロードテール素材は、附に特徴があります。その附を利用して、原皮を接いでいくのですが、一般的には、手縫いの一着分になったプレートとして売られています。 (さらに…)

レットアウトのシミュレーション(島精機のCAD(PGM)の使いやすさ)

本日は弊社アトリエで島精機のCADがどう生かされているかをご説明したいと思います。

島精機のアパレルCADは通常のアパレルCADと違い、レイヤー形式になっていません。大きなキャンパスに、自由にパーツ化したパターンを置き、そしてパターン内部線やそれ以外の線も自由に書くことができます。

自由にパーツ化するというのが意外に他のレイヤー形式のCADではできません。出来ないというよりも、大変な労力がいるということになるのでしょうか。通常は透明レイヤーに線を引き、重ねてみることによって様々な作業をしていますが、島精機のCADはすべてがパーツ化してあります。

仮に100個の小さなパーツを使って”自由に”作業をすると、レイヤー形式のCADだと、多くのレイヤーが必要になりますが、島精機のCADはパーツが100個大きなキャンバスにあるということになり、都度、アクティブにするためにレイヤーを指定する必要もありません。
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アトリエの設備投資


ヒートレスアイロンHSP320(ナオモト工業)

今年また設備を少し増やしました。昨年11月27日付けの当ブログ「毛皮の毛の癖をとる」で書いたインバータコントロール付きで、仕上げ馬が二台付いていて、バキューム/吹き上げの付いたバキューム台です。

これでバキューム/吹き上げの付いたバキューム台が二台と吹上のないタイプが一台になり、表生地を縫う時などは、片方で通常のアイロン、もう片方で仕上げのアイロンというように同時作業も出来るようになり効率が上がりました。 (さらに…)

毛皮クリーニング、私のもうひとつのこだわり

見えない裏側の皮の部分のクリーニング

 

今日はなぜ私が見えない裏側の皮の部分のクリーニングにこだわるのか?という、もう一つの理由について書いてみます。

私が経験したリフォーム品の数は弊社がリフォーム専門ではないという理由もあり、そう多い数量ではありません。ただ、少ないと言っても年間で数点しかやらない訳ではなく、何百着と言う単位にはならないというくらいの着数はやっています。

このなかの半分近い点数で、匂い、カビ、は当たり前ですが、ダニ等の虫がついている場合がみられます。虫が付くのは古い毛皮コートの保管の状態に原因があります。 (さらに…)