アメリカン・マホガニーミンクの帽子の作り

4~5年前に大切なお客様からのご依頼で作ったオーダーメイドの帽子です。帽子はアトリエでは、めったに作ることがありませんが、作るときはかなり気合をいれて作ります。下の写真はテレビドラマの一風景ですが、このような感じに作りたいというご要望で作りが始ましました。

参考写真1

しかし、帽子屋ではないので型もなく、パターンで作ろうか、どうしようかいろいろ考えた末、帽子の材料屋さんに声をかけ、型を貸してもらおうとしたのですが、ちょうどいいものが見つからず、それでも、一度受けた受注をお断りすることは絶対にしたくないので、最終的には、型を自分で作ることにしました。

一般(他所)で手に入らないものは自分で作る

帽子の型は、一般的には木の型ですが、素人の私が木の型を作ることは不可能なので、粘土で作ることを考えました。そのために数万円したテンガロンハットをネットで購入して型取りの原型にしたのです。

もちろん、型取りに使ったテンガロンハットは使うことなく処分いたしました。

テンガロンハットの唾以外の本体部分の型を固めの粘土で型取りし、それを原型にしてパターンを起こし毛皮で仕上げていきます。

ハットの本体裏面にサランラップを敷き詰めて、そこに細かくした粘土をどんどん入れていって空気が入らないようにしながら粘土を埋め込みました。これだけでも、一般の帽子が作れるような時間はかかってしまいます。

一般的には、フェルトならばスチームで木の型にのせて形を作っていくのだろうと思いましたが、毛皮がフェルトのようにどこまでも自由に伸び縮みができるとは思えないので、パターンで作ることにしたのです。

型を粘土で抜いたものが下の写真です。

型抜き

パターンだとフェルトをスチームで形にするよりも、平面的になりやすいので、綺麗な立体にしたいこともあり、伸ばしやイセを多用したパターンを作った記憶があります。

もちろん、毛皮の接ぎ目もまったく解らないように作ることも忘れてはいけません。上の画像のトップ内側のピンクの線が切り替えラインです。これくらいなかに切り替えラインが入るとトップの淵は綺麗に丸みがでます。

この写真は、一度型を抜いて実際にトワルを作り仮縫いをして、部分的な修正を加えて、再度、トワルでパターンを抜き取る作業の写真です。

下の写真が仕上がりです。サイド部分の幅のバランスは参考にした写真1とは異なりますが、綺麗な仕上がりになりました。

仕上がり

コストが優先ではない

このあと、この同じハットは作っていませんが、それでも、作れないなんて死んでも言えないという意地もありましたので、ご満足していただける帽子が作れて本当に、よかったと思っています。いつも、言っていますが、初めて作るものにコストなんか最初から考えていないのです。

納得のいくものが作れるかどうかが一番重要なことであり、そして、短期的にはコストがきつくても、技術やノウハウはアトリエに資産として必ず残ります。それが、いつか儲けにつながっていくのです。

アトリエでも、よく、他所に仕事で何かを頼もうとして、あれはない、これもない、これは出来ない、あれは出来ない・・と言われることがほんとに多いのです。

しかし、そんなことを言っているから受ける仕事もなくなり技術も進歩しないんだろう・・、と愚痴りたくなるときもあり、今現在、当たり前にやっている仕事以外にも新しい技術を自分で生み出していかないと未来が見いだせないのでは・・と、自戒しているところです。

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帽子の参考資料 デイビークロケットハット(Davy Crockett hat)

長澤祐一

 

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