以前20年在籍していた百貨店毛皮サロンでよくあったことです。
リフォームに持ち込まれた毛皮をみて「すごく綺麗な毛皮ですね~」「良い毛皮ですね~リフォームでする価値がありますね~」等、歯の浮くような言葉で受注に持ち込むということが当たり前のようにありました。もちろんうちではありません。
実際の毛皮は色焼けしたり皮も硬くなっていたりで、不安の残るものが多々あったかと思います。
その結果、仕上がりでクレームがたくさん発生します。当時私達が在籍していた某日本橋百貨店でのクレーム率は毛皮サロンのリフォームがトップでしたから。
決して自慢できるものではありません。しかし、そうなる理由があるのです。
受注を取りたいがために、状態の悪い毛皮コートを、わ~綺麗なコートですね~といって受注を取るのです。
当然、条件の悪い毛皮コートのリフォームを受けるわけですから良い仕上がりになんかなりません。
しかも、実際に作業する職人さんは、受注の現場事情など分かりませんから、状態の悪い毛皮コートは、元が悪いんだからしょうがないという発想で作業をします。当然ですが良い仕上がりになどなりません。誰も、この状態の悪いコートの責任などとる意識はないのです。
しかし、素人のお客様は、受注を受けるときに、わ~ 綺麗なコートですね、、、と言われてリフォームを依頼するわけですから、素人でもわかる仕上がりの悪さに怒りが頂点に達します。
仕事のなかでは良くある話なのですが、それで高いお金を取られるお客様はたまったものではありません。私達も同じスペースにいる同業者ですので、黙ってみているしかないのです。
毛皮を本当に知る人間がこの仕事場に何人いるのだろうか?と疑問に思うことがありますが、現状仕方のないことなのです。何かのきっかけで出会うことが出来れば良いのですが、なかなか出会うことができません。
顧客獲得という意味ではあまりに非効率的であり、かといって今のパターンを変えていこうとも思ってないのです。しかし、困っているお客様と出会いたいとも思うのです。
なかなかうまく出会うことができませんが、出会ったときには精一杯のことをしたいと思います。
長澤