毛皮のウォータークリーニングの問題点

最近、よくウォータークリーニングという言葉を耳にします。しかも、毛皮も出来る???というような見出しもあります。今日はこのことの問題点について書いてみます。

一般のクリーニングでもウォータークリーニングをよく耳にしますが、最近もうひとつ、気になったのは 忍者ウェットという洗う機械と手法をセットにして販売されています。詳しくはわかりませんが、一般の衣類のクリーニングではきっと素晴らしいクリーニング方法なのでしょうね。

しかし、毛皮を水洗いするのは極めて危険なことなのです。

毛皮のウォータークリーニングの問題点 | 毛皮と水の関係

私たちも毛皮の加工時に少量の水は使いますが、洗うような大量の水に漬け込むことはありません。
批判的な意見なのでここではリンクはあえて貼りませんが、忍者ウェットの動画で毛皮を洗うシーンがありますが、この動画の内容を少し書いてみます。

フォックスのボアのようなものを洗うシーンがあり、ジャブジャブ洗っています。しかし、これはフォックスという素材で水が皮面まで染み込みにくいという、たまたまの条件で、事なきを得ているというだけで、決してこれですべての毛皮が水で洗えるか?というと大きな疑問が残ります。

毛皮はドレッシング(脂なめしまたはミョウバンなめし)という手法でなめされたものと、染色をする毛皮に使われるクロムなめしという手法があり、一般的なナチュラルの(染色されていない)素材は、水に皮面がしっかり漬け込まれていると、時間とともに酸膨潤という現象が起こり、皮は膨れ上がり、最後はコラーゲン線維構造が壊れてしまうと言われています。

新しい原皮でも、この現象は起こります。結果として毛皮の皮の組織は破壊され、ボロボロになるということです。ですから、すべての毛皮がウォータークリーニングができるということではありません。

さらにもうひとつ付け加えるならば、仮にクロムなめしのかかった耐水性のある毛皮でも、生地の衣類は乾燥後にアイロンをかけることができますが、毛皮は水に濡れてしまうと、形が大きく崩れる可能性が高く、結果、縮みも起こり、最初の状態に戻すには、もう一度水張りという作業をしなければなりません。ここが生地でできた衣類との大きな違いです。

以前、水とドライで濡らした結果がどうなるかは、04/24/2015の当ブログ記事「毛皮用のクリーニングドラムについて」 で書いたことがありますが、ドライ溶剤で濡らしてもティッシュの形は崩れませんが、水は簡単に崩れ、すぐにボロボロになります。毛皮も水で濡らすと形が変わったり、縮み現象が必ず生じます。

そんなこともあり、水洗いは毛皮には適しません。専門家はなめしの際、塩を使い、その酸膨潤を防ぐとも言われていますが、クリーニングでそれが適しているということは聞いていませんので、できるとは私は言えません。

リフォーム品について

よく、リフォーム品で加工時に皮を水に濡らすとすぐに切れてしまうということが起こります。これは、酸膨潤が起こったのではなく、あくまで皮の劣化が原因で、起きています。このことについては、またいつか書いてみます。

リフォーム品の皮は脂が多く残留して、触った感触が少し湿った感じのするものは、時間経過とともに間違いなく劣化が進んでいます。
先日も二点リメイクをいたしましたが、一点は、皮の脂分がとても適性で、触った感触もカラっとしていて、とてもいい状態でしたが、もう一点は見た目は強そうな皮でしたが劣化はとても進んでいました。この状態では、すでに劣化が進んでいて、塩をつかおうが、何をしても切れてしまいます。H2O(水)以外のもので加工する以外にありません。しかし、劣化のひどいものはどんな溶剤を使っても切れてしまいます。

まとめますが、毛皮の毛の部分は擦り切れたり抜けたりしますが、それ以外は、毛は意外に強く、一番怖いのは皮の部分なのです。とくに水は要注意ということです。

毛皮の皮の劣化(方程式)

長澤祐一

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