毛皮の仕上げやクリーニングでよく起きる誤解

今日は、 『毛皮の仕上げやクリーニングでよく起きる誤解』 というタイトルです。

このパショーネのブログでも、クリーニングや仕上げのことについてよく記載をしています。ひとつ誤解があるといけないので書いてみます。

私の毛皮を仕上げる技術は、自分で言うのもなんですが、かなり上手いほうです。

その理由は毛皮素材の本来の良さや作りによって毛皮のポテンシャルが上がることを知っているからです。

ただ、ひとつ誤解があるかもしれませんので書いておきます。

素材や作りが良くても、毛の癖や、汚れが付いていたり、毛皮の皮面が硬かったりすることで、本来の良さを出せていない毛皮があります。

その場合は、元の良さを引き出すことが出来れば驚くほど綺麗になります。

ただ、誤解があるかもしれませんのでお伝えいたしますが、パショーネ以外で、お買いになられた商品をパショーネでクリーニングをしたり仕上げをしても、もともと持っていたクォリティは発揮することが出来ますが、元のパフォーマンス以上にはなりません。

パショーネがやっているのは、あくまで元々持っている素材や作りの良さを引き出すだけなのです。どんなに頑張っても元のクォリティ以上にはなりません。ただ一般的に売られている商品のほとんどが、本来の力さえも表現されていないことが多く、その多くは仕上げる前よりは良くなりますが、パショーネの商品と同じようにはならないのが現実です。

チンチラなどのボリューム感も一般のチンチラの例えば半裁横段のマフラーの多くは、横段の接ぎ目の間に1cm幅くらいのレザーが入っています。

チンチラの1パーツの幅が一般的に例えば5cだとします。そこに1cのレザーがチンチラとチンチラの間に縫い込まれます。そうすることで、5パーツ接ぎ合せると、ざっくりですがレザーによって5c分長さが長くなります。

こうやって高額なチンチラの使用枚数を減らします。これはこれで良いのです。ただ、ひとつ言えるのは、当然ですが1本のマフラーを作っても材料コストが原皮一枚分減ります。

見た目を同じように見せて使用枚数を減らすという売り手側の都合のよい作りになります。

そして、当然ですがボリューム感も減ります。綿をどんなに入れても素材のボリューム感と同じにはなりません。

もちろんレザーをチンチラの間に入れない職人もいますが、一つ一つのパーツを綺麗にそろえることや、チンチラの白い腹を均一にいれることなど注意すべき点がたくさんあります。

世に出ている大半のチンチラが、これを正しく守っていません。そのことによって、本来、横段で綺麗にみえるはずのチンチラが上下の幅やボリューム感が違ったりしていて汚い作りになっています。

話を仕上げにもどしますが、前回の”価格の価値とは”のブログでも書きましたが、安いには安いなりの理由が必ず存在します。流通コストを省いたことで安くできたり、工賃の安い職人に出したり、中国で作ったり、レザーを入れて素材コストを下げたり、、、とたくさん理由はありますが、常に何がしかの理由が存在します。

最後にもう一度、元のテーマにもどりますが、どんなにパショーネが仕上げをしても、元の素材が良くなるわけではないのです。私たちがやることは、元の素材の魅力を最大限に引き出すことをしているだけです。仕上げ方でごまかすことは出来ません。元が良ければ当然ですが、その力が100%引き出されれば魅力的な毛皮に戻ります。

ただ、一般的に世に出ている商品の多くの割合で、正しい作りや仕上げがされていないために元の素材のクォリティ以下に見えるものが多くあり残念だといつも感じています。

長澤祐一