毛皮を軽くする

passione_6_5_2015

今日のテーマは「毛皮を軽くする」です。軽くする方法は最近の傾向は、毛皮の分量を減らし、オーガンジーのような軽い素材と組み合わせたりする方法が主流ですね。でも、これは、私にとっては、なんとなく逃げているようにしか思えずにいます。

私がいつも書いている軽さは、このことではなく、毛皮そのものを軽くする方法です。毛皮そのものを軽くできれば、他社がやっている軽い素材との組み合わせをすれば、もっと軽くなります。

そんななかで今日の写真はセーブルの皮を手作業で鋤いたものです。道具は、職人さんならわかると思いますので載せません。

セーブルでも私は、すべてグラインダーのようなもので鋤くか道具を使って鋤くか、なにかしらやります。セーブルはミンクより皮が薄いと一般的には言われていますが、やはり、まだまだ厚いと私は感じます。

写真は皮を道具で擦ってでた、皮表面のタンパク質です。毛根が出てくる手前まで鋤くことで軽さと柔らかさが出ます。

わずかにスプレーで濡らして、少し時間を置き皮が膨らむのを待ち、乾く寸前で鋤く場合と、濡らさずに鋤く場合があり、それは皮次第です。

私がいつも書いている溶剤で脂を抜く方法も軽さを求める方法です。この二つの方法で私は軽さと柔らかさを追求しています。

皮を鋤いても、バキュームの中に溜まったタンパク質を手にとってみると、ほんとにわずかな重さなのです。恐ろしく軽いのです。これで一体毛皮がどれくらい軽くなるのかと不安を感じたり疑問に思ったりします。

しかし、以前も書いていますが、皮が水分を空気中から吸収することを考えると、タンパク質そのものが吸収体となっている厚い皮の毛皮は、やはり、想像通り重くなるのです。

重さの元は皮の重さではなく、皮に染み込んでいる脂や水分も含まれ、全体で重さとなるのです。そういう意味では、皮を薄くすることは、柔らかさを出すこととともに、水分の吸収体を削るという、とても大事な作業であり、よい結果を生んでくれます。

前回書いた、チンチラを脱脂した際にも水分が残りましたね。湿気は重さ、硬化にもつながります。そのために皮を鋤くのです。薄くして軽量化するというのは表向きの理由であり、本来の理由はここにあります。

毛皮のリフォームをするときに、どうして、このコートはこんなにカラッして軽く皮も毛の状態も良いのだろう??  どうして、このコートはこんなに重くベタっとしているのだろうと、常に皮と毛、両面と向き合います。その理由は、この軽さの追求と皮の劣化を止めるにはどうしたらいいだろうか?を常に考えるからなのです。

ただ、作るだけなら、他社でもできます。信頼をいただき、長期間お待ちいただいているお客様のためにも、止まらず考え続けなければ良い結果が出せません。

今日のテーマの”毛皮を軽くする”は、アトリエの技術のなかでも、とても力を入れている部分なのです。

長澤祐一

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