毛皮クリーニング、私のもうひとつのこだわり

見えない裏側の皮の部分のクリーニング

 

今日はなぜ私が見えない裏側の皮の部分のクリーニングにこだわるのか?という、もう一つの理由について書いてみます。

私が経験したリフォーム品の数は弊社がリフォーム専門ではないという理由もあり、そう多い数量ではありません。ただ、少ないと言っても年間で数点しかやらない訳ではなく、何百着と言う単位にはならないというくらいの着数はやっています。

このなかの半分近い点数で、匂い、カビ、は当たり前ですが、ダニ等の虫がついている場合がみられます。虫が付くのは古い毛皮コートの保管の状態に原因があります。

一般的にはタンスの奥にしまいっきりなったり、最悪の場合箱にはいりっぱなしだったりと、湿気が毛皮に残った状態でタンスの奥や箱に入ってしまったら、もうダニやその他の小さな虫の温床になるのは必然的なのです。

そして卵も毛や皮に生み落としている可能性も高いのです。それを取るための最善の方法はドラムの中でドライクリーニングやそれ以外の方法ではたき落すか死滅させるかしかありません。

虫がついているかどうかは、私たちがそのリフォーム品を扱っていて、突然、腕や首がかゆくなったりしますので、間違いないでしょう。ダニかどうかは明確ではありませんが、何がしかの目に見えない虫が付いていることが多く見受けられます。

どんなに表の毛皮が綺麗でも、これは、とても悲しいことです。そんなこともあり、アトリエでは、裏地を外し、毛皮だけになったときに必ず、その毛皮に合わせた溶剤やオガの粗さなども、都度替えてクリーニングいたします。

そんなときに、都度いろんな悩みが起きます。

例えば、劣化が進んでいる皮には水分は禁物ですのでオガに水溶性の消臭剤は使えません。そんなときはオガのタイプを何種類も混ぜて、毛の奥までオガが届くようにして、ドラムを回します。オガにも消臭効果があるからです。

これ以上は企業秘密なので書けませんが、常に、毛皮の毛と皮面をみてどうするかを決めます。そして、お客様に納めるときには最低でも、自分に悔いの残らない、やり残しのない状態で納めようといつも、心掛けます。

一般的にはリフォーム業者がクリーニングをすることはありませんので、役割が違うのかもしれませんが、何度も書きますが、裏地を解いた、このタイミングでしか、ほんとうの意味でのクリーニングは出来ません。

ですから、どうしてもリスクはあっても見過ごすことはできないのです。

今日の写真はテーマとは違いますが、ミンクの皮の劣化したものをお見せいたします。注意して見て欲しいのですが、接着テープが剥がれ、その部分が茶色く変色しているのが解りますね。私が、過去に見てきた中で、このテープが一番、性質が悪く、ほとんど劣化します。私たちも接着テープは使います。

しかし、こんな状態にはなりません。糊の成分のせいかどうかわかりませんが、このタイプはすべてだめです。剥がれてしまって、尚且つ劣化します。私たちが使う接着テープになぜ自信をもてるかというと、それは社内にすでに加工途中の15年以上も経ったものあったり、お客様に納めたものが戻って来て、中を確認したりと、都度点検をしていますから、大丈夫なのです。

そして、この劣化を早めるのが、皮の脂分です。この写真の皮も、乾いているのに、しっとりと湿ったような状態にあり、特に湿気の多い時期は常に湿った状態になってしまいます。脂が湿気を呼ぶのです。だから、不必要なほどの脂は抜かないといけないのです。

本来は、最初の時点で、いわゆる、商品が作られる時点で、ここはチェックされなければなりません。しかし、すでに仕上がっているものは、それは出来ないので、リフォーム時に裏地を外した時点で、この判断をし、毛皮が今後、劣化が進むことのないようにしてあげなければなりません。

長澤祐一

 

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