初期採寸と仮縫い

受注を受けて採寸をして 仮縫いまでに痩せられるお客様がよくいらっしゃいます。

もちろん痩せることは悪くないのです。ただ、初期採寸に従って一回目の仮縫いトワルのパターンは作られています。そのため、トワル仮縫い時に、おやっと思うことがあるのです。

お痩せになられましたか?と聞くと、そんなことはありませんとおっしゃいます。しかし、よく聞くとジムに通われたというようなことが少しずつわかります。

女性の微妙な気持ちが会話に現れます。体型は明らかに変わっていらっしゃるのです。

それでも、変わったとはなかなかおっしゃってくれません。

作る側としたらワンサイズ以上痩せた場合、特にお太りになられていらっしゃる場合には簡単にワンサイズ以上サイズが変化します。初回打ち合わせ時の採寸から場合によっては数か月経過した後に仮縫いになるケースもあり、大きく体型が変化されるケースがあるのです。

これをうっかり見逃して、お客様の言うとおりに信じてサイズダウンをせずに作業をすすめると大変なことになります。

この辺が、リフォームにしてもオーダーにしても難しいのです。

仮縫い時には、夏場であっても当然ですが、冬の装いで試着をしていただきます。

そうすると、なかなかお痩せになられたことに気付かずに作業が進んでしまう可能性もあります。

ここはやはり、しっかりと体型変化を観察し、何気なくお痩せになられたかを聞いたりしてみる必要があるのです。最初は痩せてないと言われても、何度か聞くと実はジムに通い始めたというようなことが分かります。

場合によっては、バスト・ウエスト・ヒップくらいは採寸しなおすケースもあります。

単純にお客様の言うことを信じてしまうと大変なことになるからです。

私のところではパターンから毛皮作成まで私がやりますので、気付くことが出来ますが、パタンナーと毛皮制作者が別の場合には、お客様の体型の変化に気付かずに仮縫いが終わってしまうことがあります。

しかし、それは特別なことではなく、分業は普通のことで、今回のようなケースが見逃されることもかなりの確率で発生するのです。

大量に作ろうとすれば、分業は仕方のないことで、拘ると量が作れないということになるのです。

長澤祐一

二人でいる意味 二人がいる価値

今日は分かりにくいテーマですね。

二人とは、私と当社デザイナー(家内)です。

先日もあったことですが、お客様とラインや電話でやり取りして、お客様から良い反応をもらいます。

ここで、よくあるのが、、私にとっては楽に進むことができるお客様からの提案でしたが、それでも家内からは、一般的にはこうだ、、または、こっちのほうがお客様には良い、、と考える場合があり、ほぼお客様からは良い感触の意見をもらっているのに、それでも、念のために伝えるべき情報として伝えます。

私にとっては作業しやすい方向に進んでいるので、私一人なら、さらに私が知りえない、女性ならではの意見であればそのままスルーしてしまうところです。

そして私のなかでは、ついこのまま楽にスムーズに作業が進むと思うと、なかなか新たな提案は、私であっても難しいものです。

しかし、デザイナーも一歩も引きませんので、結果、振出に戻ることもあるのです。しかし、それはお客様にとっては利益になることが多く、決して、お客様が良いといったからそれでよいというわけにはいきません。

他社さんがどうかは分かりませんが、私達技術職にとって目指す仕上がりの方向が楽だと判断した瞬間に余計なことは言わなくなるものです。誰しも楽な仕事を仕上がりよりも優先させてしまう場合があります。

もちろん二人が楽な方向を選択してしまうケースもありますが、当社での打ち合わせは、お客様がいないところでも戦うというか、話し合います。

それが、パショーネの高いレベルをキープする大きな要因となっています。

これは出来そうでなかなかできません。

もちろん、作りの部分で私が手を抜くことはありませんが、デザイン的なことで考えると楽に作業が進む場合と苦しむ場合があります。そのときに知らず知らずのうちに自分の楽な方向を期待してしまいますが、デザイナーがしっかりしていれば、作りの効率よりもデザイン効果が優先になるのです。

今日のテーマの、二人でいる意味、二人がいる価値、、とはそのことです。

つい、効率が優先されがちですが、どんなにファッションを知っていて、ご自分のことを知っていらっしゃるお客様でも、プロではありません。決定する場合に、一般的には、、とか、本来は、、こうです、、とかいうことが意外に大事だったりします。

それともうひとつ当社デザイナーがやることは、お客様を緊張させないということです。簡単そうですが難しいことです。わたしなど自分が緊張してしまって、お客様に緊張させないことなど忘れてしまいます。いつも思いますがさすがなのです。アトリエや三越本店で接客させていただいたことのあるお客様はきっとご理解いただけているかと思います。

川越まで、なかなか遠くてご来店いただけないですが、決して無駄な時間にはなりません。一度相談してみたいなと思っているお客様がいらっしゃったら是非、お声がけくださいませ。

長澤祐一

東レacs3Dは使える道具

3Dシミュレーションというと、きわめて現実に近いものを表現する、、、そんなイメージが強いですね。

最近使いながら思うのです。東レACSさんの3Dの地味な凄さをです。

これまで何回か書いてますが今日は書ききれていない分を補足します。

きっと興味のない人にはつまらないかもしれません。

しかしです。すごいです。

良くあることですが、出来上がったパターンを何度も修正しても、なんか上手く行かないことがあります。

そんな時に初めに戻ってエリとかを外して身頃だけ、しかもかなり原型に近いところまで戻ってチェックします。

そして少しずつ違和感のある部分を修正していきます。

その後、エリとかを付けて確認します。

そうすると、何故か全体のバランスがとても落ち着きます。

私のように洋服全般、ファッション全般を知らなくても、基本的なラインを3Dボディに着せ付けて、理屈はわかりませんが気持ちのよい雰囲気に仕上げます。

もちろん、ボディの肩からどのくらい離れると実際のフィッテングにマッチするかなど経験は要るかもしれません。

しかし、真剣に取り組めば必ず自分の向かう方向に導いてくれます。

そしてシンプルに原型に近いところまで戻って身頃を確認し、そのうえでディテールを付けていくと、綺麗にフィットするというか落ち着きます。

何度やっても上手く行かずに、一度原型に近い、もちろん原型ではありませんよ、あくまでディテールをなくしてという意味ですが、そこに戻って修正できると凄くたすかります。と簡単にいいますが、これを現実にやるとなると、相当の時間やトワルを組み立てる時間がかかります。それがないのです。凄くないですか?もちろん時間はかかりますがトワルを組む時間を考えたら微々たるものです。

これまでどれだけ、時間やトワルを無駄に使ってきたかと思うと、凄いことです。

例えばですが、気になった個所がトワルにあっても、どれだけやり直しが出来てましたか?

やり直せば確実に何時間もかかります。もしかして、なにも問題がなかったという結果も想像できます。そんなときに、もう一度修正をしてトワルを組み直そうという勇気が持てますか?

今回はいいや、時間がないから諦めよう、、、と思う局面が何度もありませんでしたか?

でも、このソフトでは諦めず再度点検してみようと思えるのです。

もちろん時間がゼロではありません。経験もひつようです。

それでも、以前よりも、どうしようか?やり直そうか、このまま先へ進むのか、と迷う時間、、、そんな無駄に迷う時間はなくなりました。

実際にトワルでやる再チェックは一回で終わらない可能性もあります。再チェックが駄目だと、ここまで使った時間とこれからやり直す時間を考えると呆然となります。

それがソフト上でほぼ解決できるのですからすごいです。

これまで私がやった仕事では、このソフトを使った成功率はかなり高いです。仕事に安定感が生まれました。

動画で芸術的に見せる、魅せる ソフトとは違います。

しかし、パタンナーがチェックしたい部分を的確に表現してくれます。

一旦チェックしたものの完成度、落ち着き感はすごいものがあります。

ただし、これまでの常識は捨てなければと考えます。

いろんな意味で、3Dに合った考え方を自分から変える必要があります。

生地だったらこうなるのに少しも同じにならない、、、などと言っているうちはいつまで経っても3Dを上手く使いこなせません。

これまでの経験を3Dに合わせていく必要があるのです。

そうすれば、きっと使いこなせます。

まずは、3Dで現れる違和感と現実のトワルで現れる違和感の表現の違いを細かくチェックしていくのです。

そうすれば、必ず3Dにでた違和感が理解でき、実際の生地にでる不具合を調整できます。

生地でドレーピングしたものと3Dとの現れ方の違いを学べばいいのかもしれません。

いずれ東レさんも、こんな場合は3Dではこんな感じに不具合が表現される、、というような指標または見本のようなものがでるのかもしれません。そうなれば素晴らしいですね。

今後の開発に期待しようと思います。  

実物のように正確に表現する3Dとパタンナーが求める3Dは似ているようでまるで違います。

パタンナーは3Dトワルをみて、実際の生地ならこんな感じになると頭の中で変換できるはずです。

ですから、超リアルじゃなくていいんです。リアルであることよりもバランスをチェックするための3Dソフトなはずです。

私は、迷ったとき、悩んだ時は 今回書いたように身頃の原型に近いところまで戻ってチェックします。すると、いままで何かおかしい、、と思ってたところが落ち着きます。パターンがプロではない私がここまで使うことができます。専門家ならもっともっと活かすことができるはずです。

そして、これからという人にも必ず役に立ちます。これからの人は、先に3Dから形を学び、その結果を実物で学ぶというように、私なんかとは逆になるのかもしれません。

私の仕事も、東レACSさんと出会って新しい局面が見えてきています。きっと地味な開発のはずです。煌びやかな3Dに注目が行きがちです。でもすごく大事なことを東レACSさんはやってくれてます。アパレルという土壌をもった組織だからこそ、この地味なソフト開発に力を傾けられるのだろうと感謝しています。

例えばですが、仮に今、この東レacsさんの3Dソフトがなかったら私の仕事の質は、かなり落ちるか時間がかかっていると思います。導入して4年くらい経ちますが、このソフトなしでは大変なことになります。仕事の精度やかける時間が大きくかわり、もう逆戻りなんかできません。一般的なパターンを作成するCADと同じです。また一から線を手引きすることなど考えられません。

最近、ある動画編集ソフト会社さんからレビューを書いてくれないかという依頼がありました。

書くのは仕事ではありませんから、本当に使ってみないと簡単には書けません。あたり前のことですが今日書いているのは自分なりに使ってみての東レACSさんの評価です。機会があったら是非、一度トライしてみてください。

いつもトワルを組んで、上手く行かずに、もう一度パターン修正をして組み直すのか、このまま先へ進むのかと毎回悩んでいる人には本当に使える道具です。サポートもすごくしっかりしてます。

長澤祐一

プロなのに、

ここのところ弁護士、税理士さんに会って相談ごとをする機会がありました。

今日はプロなのに、、という話です。

怒られるかもしれません。私が細かいのかもしれませんが、対応が今ひとつなのです。相談するために資料を先に送っても先に読むこともなく、無駄な時間を使うことや、確認事項を聞いてもネットで調べてすぐに出てくることがわからなかったり、頼んだ相手が悪かったのか、少しも解決しなかったり、わからないことが多く、後からネットで調べて、なんだ簡単に出てくるじゃないか、、、というようなことがほんとに多いのです。

これでプロなのかな?とほんとに思います。

以前、私達の技術職の仕事では出し惜しみができない職種であることを書きました。

各先生方が情報の出し惜しみをしているのかもしれません。しかし、出し惜しみには感じませんでした。明らかに不親切、または能力不足ということが多かったのです。

能力不足や不親切は、ときに害になることもあります。

私達が打ち合わせを大事にする理由は、提案力次第でお客様の望むもの、または望む以上のものが出来上がるからです。

どんなに私が綺麗に作っても、それがお客さまが本来欲しがっているもの、またはお客様の考え以上のものを提案できない限り意味がありません。

もちろん作りは大事なのです。しかし、提案力もそれと同等に価値があります。

私のところはデザイナーとお客様の三人で必ず打ち合わせします。私一人で対応することはありえません。たまたま休みだからなんてこともありません。それくらい三人での打ち合わせが大事だからです。

男性が対応するお店や工場もあるでしょう。でもはっきりいって疑問です。

女性の洋服に対する知識や着用場面、さらにはコーディネート等を考えれば、デザイナーに相当な知識が必要になります。

どんなに男性が勉強しても難しいと私は思います。仮に女性であっても、この提案やアドバイスができるのはほんの一握り、、、いやもっと少ないと思います。叱られるかもしれませんが、当社デザイナー以上は私は知りません。

いいんですよ。自分で判断されて好きなものを買うのは。しかし、ファーの場合、なかなかいろんな場面を想定したり、毛皮の素材感を考慮した提案をすることは簡単ではありません。

今日のテーマのプロなのに、、、最初にでてきた諸先生方のことを考えると、万が一でもこの諸先生方と私達が同じレベルであることなど許されません。

とにかくお客様のためにどうあるべきかを常に考えることが私達が私達である最大の目的です。

まだまだ、ほんとうに足りないと感じます。時間は以前よりもあるはずなのに、まだまだやりたいこと、、お客様にして差し上げたいことが完全ではないのです。

この記事をどんな方が読むのかはわかりません。しかし、何かしらの仕事をしているならプロとしてどうあるべきかを考えてみてください。

私達が生き残ってきたのは、私の絶え間ない技術開発もひとつですが、当社デザイナーのお客様に寄り添った考え方と提案力、これが全てです。仕事さえしてればプロであるという意見もあるでしょう。

しかし、そのプロではありません。プロらしくありたいのです。

本当にプロであり続けることは難しいです。  長澤

たった一回のこと

投稿間隔が短いですが、書けない時期が続いたので書けるときにはアップしておこうと思います。

昨年、ホームページをリニューアルしました。その時にどんなホームページにしようかととても迷ったのです。

自己紹介を載せることを家内が要望を出し、業者さんへ依頼したのです。

ところがです。業者さんがいうには、何か業界で賞をとったとかがあればと言われたのです。まっ、ここはすぐ誤解が解けたのですが、何か賞でもとらないと自己紹介も書けないものかと、その時には思ったのです。

そんなことはないはずです。自分なりの紹介コメントやページにすればよいはずです。特に自分を膨らませることもなにもなく当たり前のことを書けば良いはずです。

そう思いながらいろんなところを見てみました。以前から知っていたところも含めて再度確認をしたのです。

そんな中で良く目にしたのは内容は書きませんが、自分を大きく見せることばかりが羅列してあり、これでは逆効果では?と思うものが結構ありました。

自分をよく知ってもらうことは大事です。しかし、必要以上に大きく見せようとする記載がときどき見受けられました。

実は、私が昨年グーグルのリスティング広告を初めてやってみたのですが、その時にも、特に業者さんにクレームはつけませんでしたが、職人歴30年の技術者と謳われたのに冷や汗をかきました。

他のホームページでも職人歴45年だとか書いてあるところもたくさんあり、よくありがちなキャッチフレーズでした。

私達の仕事が業歴が長ければよい商品が作れるなら良いのですが、毛皮の業界にあっては業歴の長さと商品の良さとは比例しません。もちろん業歴で言えば40年くらいはやっているわけで、それでこんなものかと思うと、とても業歴の長さなど書けません。

以前、驚いたことがありますが、そこそこ有名なデザイナーさんが、某国内有名ブランドに在籍していたことを書いて、某国内有名ブランドさんから裁判を起こされ、結果は負けなかったようなのです。

しかし、負けなかったとは言え、事実を知れば結構恥ずかしい話です。某ブランドへ在籍していた期間は2~3ヵ月だったと聞きます。たかだか2ヵ月程度の在籍でそのことを自分の略歴として謳うのであれば、それじゃ訴えられても無理はないかな、、、とも思います。

ちなみにその某デザイナーさんが、私達と一緒に某有名百貨店の毛皮の展示会に出たことが一度ありました。そのたった一回出たことを会社業歴プロフィール欄に大きく書いてあるのです。

今日のタイトルの たった一回のこと というのは、このことです。

私のところなんか恥ずかしながら、某百貨店に20年在籍して辞めてから、やっとのことで業歴として記載させてもらったところです。これだって散々悩みました。

そんなことを知ると、そのデザイナーのホームページに記載してあるたくさんのことが、なんか薄っぺらく感じてしまいます。

ただ、知らないユーザーからみるとすごいな~ということになるのでしょうね。

しかし、そんなところに惹かれてしまうような方は、私達の顧客にはなりません。

よく、雑誌掲載記事もたくさん載せているところもありますね。

すべてがそうではないと信じたいですが、私もブログを始めたばかりの10年くらい前ですが、結構たくさんの取材の申し込みがありました。知っている人もいらっしゃると思いますが、その大半が取材といっても、お金を取って記事を掲載するというパターンが多く、そのなかにはそこそこの有名人がきて取材します。そのかわりお金がかかります、、、というのもあり、取材という名目の相手にとって都合のよいビジネスなのです。

私のところが他と同じようにやることは残念ながらありません。

そんなことをしたら、せっかくの商品力が薄っぺらくなってしまいます。必要なことは伝えますが、余計なことを伝えて商品の価値をわざわざ、落とそうとは思いません。

しかし、ぱっと見のインパクトというか、そんなものにもつい頼りたくなるというのも本音です。今現在はネット上でも、これまでにない本当の信頼関係を築けるようにと考え模索しています。

それにしても、ネットで商品や自分を表現するのは難しいと感じます。

長澤祐一

毛皮の染色 3 染色サンプル作成

今日は毛皮の染色 3 染色サンプル作成というタイトルです。

このテーマでどれくらい書けるかやってみます。

小さなチップサイズ、例えば5センチ×5センチのような小さな端切れのようなミンクだと、当然ですが染色浴も小さくなり、すべての助剤も少量になります。

さらに一番大事な染料の量も微量になってきます。そのため、1mlさらにはその1/10という単位になります。

もちろん、染料は例えば200ccの水に0.2gの染料を溶かして作ります。

200ccに2gの染料を入れても作りましたが、染料がなかなか完璧に溶けません。YouTubeなどでも溶かし方は出ていますが、鉱物を細かくしたような染料なかなか綺麗には解けないのです。

沸騰する中で溶かしても、一旦冷えて時間を置くと下に僅かですが沈殿します。沈殿するのは仕方がないのですが、沈殿したままで容器に入れた染料を使うと容器底に沈殿した染料が溶け切らない状態の溶かした染料を使うことになるのでデータとしては正確さを欠きます。

さらに沸騰させ続けると意外に蒸発して水分も減ったりすると染料の濃度が上がったりと、様々なところで問題が発生します。

それでも、大量に染色するなら、せめてミンク一枚を染めるならまだ、その誤差は許せますが5センチ四方の端切れミンクだと、染料のわずかな狂いが染め上がりに影響します。

水に溶かした染料をピペットという正確なスポイトのような器具で0.5mlを測ることになります。こんなケースだとどうしても誤差が出て染色後の色の結果に対しても不安が残ります。

それともう一つですが、少量の場合だと染色浴も小さかったりするせいかは分からないのですが、染料が綺麗に毛に吸着する前に皮にも吸着してしまい、その結果本来の求める計算した色にならないケースがあるのです。

そのため、私は小さなチップでの色見本は、結果としてサンプルにならないと考え、最低でもミンクの半分の量、または一枚のミンクを基本にするという結論に達しました。

ただ、それは正確なカラーサンプルが作れますが、コストがかかり過ぎるので現在はどうするか検討中なのです。

色の濃度は 毛皮の重さに対して染料の重さを決めていけば、そこそこ決めていくことができますが、青 赤 黄 の三色をそれぞれのバランスで配合していくカラーサンプルの場合には、あまりに小さい5c角のミンクではただしい量の染料が計測できないため難しいのです。

それと、素材の重さに対して決定する染料量は、毛皮の重さといっても半分は皮の重さも入りますので、皮が厚い雄と皮の薄い雌ミンクでも違いがでます。そのため、原皮一枚に対して染料を決めるのではなく、少しでも計算どうりに結果を求めようとして、すべての原皮を一枚ずつ計測して、その合計に対して染料の量を決めました。

プロがどうしているのかは分かりません。もちろん経験値も必要です。しかし、最初に経験が来てしまうような作業の仕方にはしないよう、どんな部分にも数値に置き換えてみるという手法を取りました。

例えばミンクの皮の毛の生えていない部分はカットして落としてしまい、極力、毛と皮が常に一定であることを気遣いました。それによって、どの部分を染めてもほぼ一律な仕上がりになるようにと心がけたのです。ミンクは前足部分までは毛が短く胴体部分は毛が長いなどの差もありますが、極力毛の生えていない頭などを落とし、重さイコール毛の量がほぼ正確にわかるようにしたのです。

そうすることでデータとして、他に活用できるというレベルが維持できます。

多分、そんなに手間をかけたら、業者とはいいませんが、儲からないとたくさんの方が、いうかもしれません。しかし、いずれデータや工程も整理されつくされると、無駄のない作りが出来ることになります。

私はそうやって現在に至っています。最初から儲からないから手を抜くという手法でやっていたら現在のパショーネの商品は生まれておりません。

私もまだまだですが、究極に考え尽くされた作業になれば必ず結果は出ます。そこまで我慢できるか、こんな無駄な時間をかけてられるか!といって最初から手抜き作業をして、いつまでたっても進歩しないかのどちらかです。

今日は染色の見本作成のことを書きました。書きなぐりに近いですが、次回はまた別のことを書いてみます。

長澤祐一

毛皮の染色 2 補助剤

今日は前回の続きで染色の補助剤について書いてみます。

プロがどんなものを使っているかは、ほとんどわかりません。少しだけ経験者の方に聞いてそれ以外は自分で調べたものです。

毛皮を染めるのにプロが使っているかどうかは分かりませんが、染料店で聞きかじりながら購入して使ってみて、これは良いと感じたものは湿潤剤というものです。

湿潤剤とは、毛皮の毛や皮の部分にしっかりと水が染み込んでいくようにするための助剤です。

プロは大きな桶に入れて何時間も漬け込むのかもしれませんが、私のようにテスト染めや染めても数本という場合には、何時間も水に漬け込み毛に水が均等に染み込むまで待つことができません。そのため最初は水を染み込ませて手で揉むようにして毛の一本一本にまで水を染み渡らせることをしていました。時にはブラシをかけたりして毛をほぐすようにしてやりました。

しかし、毛皮の毛は理論は分かりませんが、水を弾きやすくなかなか均等に毛の一本一本の奥まで染み込んでくれません。水や雪の中で生き抜くことを考えれば当たり前のことですが、きれいに水が染み込まないのです。

それを湿潤剤というものを使うと、ほぼ一瞬にして毛が水の中でフワーと馴染んでくれるのです。

なぜそれが必要かというと、綿毛が小さな束になったまま染料を入れてしまうと、小さな束の中まで染料が入りきらずに、結果として仕上がってから、その束がほぐれたときに染まってない部分がでてきて色むらになったりします。

一見たいしたことには感じませんが、染色前工程としてはすごく大事なことだったのです。

それともう一つ、均染剤というタイプの助剤があります。

均一に染めるための薬品ともいえますが、使い方は難しいのです。

均染剤は読んで字のごとしで、均一に染めるという意味の助剤です。しかし、使い方を間違えると逆に色が染まらなくなってしまいます。

理屈は分かりません。アルカリ性に傾くのかどうかは分かりませんが、大量に使うと吸着した染料が落ちてしまいます。酸性染料ということもあり、酸性に傾くと染料が入りやすくなるという性質を使って、ギ酸などを使い染料水を酸性にして染料を吸着させるというものですので、アルカリ性に傾くとせっかく吸着した染料が落ちてしまうのです。

よく、素人のかた(すみません自分も素人ですが💦)に私のようなものが染色をして色落ちしないか?と聞かれます。染色に対して理解がないと色が落ちてしまうと考えがちですが、酸性にして吸着した毛からの色落ちはしません。

落ちるとすれば、完全に吸着せずに付着状態になっている場合には色落ちします。私が経験した限りでは酸性によってキューティクルが開き着色したものは色落ちはしないと実感しています。

この均染剤は色むらを防ぐと言われていますが、例えばこういうことです。

仮に、染料の入れ方を間違えて、いきなり一部分に染料を入れてしまったときに、当然ですが、一部分に色がついてしまいます。しかし、均染剤が入ることによって一度毛についてしまった染料が水に溶けだして染料にバランスよく混ざって再度、酸をいれることで毛皮全体に吸着していくということができます。

均染剤を使わないと、一度、間違って毛皮についてしまった染料は落ちることなく、その部分は色むらになります。ということは染料を入れるタイミングや入れる方法はとても難しくなるということです。

それを少しでも安心して染料を入れられるように均染剤があります。

ただ、この均染剤の濃度や入れるタイミングもとても微妙で経験が必要でした。私もかなりの時間とテストを重ね今の方法をみつけたのです。

この均染剤の濃度を上げて使うと、染色した毛皮の染料を落とすことにも使うことができます。ただし、あまり強すぎてアルカリ性になりすぎると毛よりも皮に悪い影響があるようなのです。

化粧品でもよく弱酸性、、やアルカリ性という言葉が出てきますが、肌にも影響があるのと同じく、毛皮の皮の部分にも大きな影響があると聞きました。

最後に染料を吸着させるための酸について書いてみます。

私は最初は酢酸を買って使いました。ただ、一般のアマゾンとかでは酸度の強いものが売っていなく、染料店で蟻酸を購入して使っています。気を付けて欲しいのは、鼻を近づけて匂いを嗅ぐようなことはしないでください。一般の酢と違い強力な匂いがします。もちろん手に付けることもしないことです。慎重に扱ってください。劇薬とまではいきませんがとても危険です。

使い方は、染料を毛皮と馴染ませてから使いました。あくまで私のやり方ですが。

染料のなかにいきなり原液を入れるよりも、一度、染料をカップに取り出して、そこに蟻酸を入れて濃度を薄めてから、染色浴のなかに壁づたいに少しずつ入れていきます。

この辺は大量に染めるプロの方とは違うかもしれません。

インスタグラムで私のフォロワーのなかに海外の染色業者さんがいます。その動画では専用のドラムの端に染料を入れる容器があり、そこから少しずつ入れているものがあったり、いきなり染料を溶かすこともなく桶のなかに入れたりと、丁寧だったり乱暴だったりといろいろなやり方でやっています。

こんなものを見ると、やはり毛皮の染色の色の正確さはなかなか難しいだろうなと感じます。

というか、毛皮の染色とはその程度のものなのです。100万分の1の色なんて求められていないのと、求められても、そんなの無理!!と簡単に言えてしまうのです。

それが、毛皮染色の標準の考え方です。

逆に言うとそうしなければ仕事として受けられないからです。

しかし、今回は毛皮の染色とはそういうものなので多少の違い(多少ではない)は勘弁してくださいと言えるような色ではなく、すごく難しい色でしたので、素人の私が半年かけて挑戦してきたのです。

そしてようやく辿り着いたところで、この投稿を書くことにしました。

いつも書いていますが、もうこうなるとコストとか時間とかとは別の次元になります。

出来るまでやるのです。出来るまで諦めずにやるしか方法がないのです。

次回は、染料の色を作る計算式等について書いてみます。

長澤祐一

ハンドステッチミシンをお譲りいたします。

ここでこんな記事を書くのもと悩みましたが、前回も大切にしてたギターをイケベ楽器さんに売ったことを書きましたが、自分が所有しているだけでまったく使っていないものはやはりもったいないですし、ギターやミシンにも申し訳ないなと考えました。

以前からいつか手放さないとと考えていましたが、ギターをきっかけにいろいろ考えたのです。

そんななかで、今回のハンドステッチミシンを大事に使っていただける方(縫製工場さま)に格安でお譲りしたいと考えました。

価格はお問合せください。ここでは記載いたしません。ネットでも同じような機種のミシンが出ていますが、かなりの高額です。

私の場合はそんな価格ではありません。

ただし、運送や発送ができません。それと通常の100ボルトではなく動力になります。

運ぶのも、私もお手伝いは致しますが、さすがに重いのでお二人で来ていただき、車も乗用車では無理です。できればワンボックスタイプの車がよいです。あと例えばですが、お取引のあるミシン屋さんとかが同行されると安心かもしれません。その分くらいは価格は下げて考えております。

私のところでも、以前はシルクのコートのステッチ部分に使用するために使いましたが、何着も縫うことなく現在に至っております。ですから、新品と同じです。

購入時にミシン屋さんから納入してもらう際に、使用するために説明をしてもらい、その動画もあります。針の交換方法等もビデオがあります。

それ以外にも、エラーが出やすい、この一本糸のハンドステッチミシンの縫い方も教えます。

以前の記事を見られて、きれいに縫う方法を教えてほしいという問い合わせもたくさんあり、みなさん上手く縫えるようになったと返信をいただいております。

このまま、まったく使用せず新品のまま会社においておくには忍びないのです。どなたか欲しい方がいらっしゃれば、格安でお譲りいたします。

一度お問合せくださいませ。

ヤフーやメルカリなどには一切出しません。儲けが目的ではありません。ただ、申し訳ないですがもともとの本体価格が130万くらいしたものですので、ただでというわけにはいかないのです。申し訳ありません。お問合せいただければすぐにご連絡させていただきます。

先日ギターを売るのにメルカリなども見ましたが、ほぼでたらめな情報ばかりで、こんなところには出せないと感じ、私のこのブログのみで、お譲り先を探すことにいたしました。

売れてしまった場合は、すぐにこの記事を削除いたしますので、この記事が掲載しているということは売れていないということになりますのでお問合せくださいませ。

以前書いたこのハンドステッチミシンの記事のリンクも下記に載せますので見てください。

特殊ミシン | ハンドステッチミシン

レスポールゴールドトップ68年・クラウンインレイ入り

昨日、45年近く所有していたレスポールゴールドトップをイケベ楽器さんの渋谷店で買い取っていただきました。

今後、もうギターを弾くこともなく、私はコレクターではないので、どなたかに引き継いでもらうことを選択しました。

直接、ヤフーやメルカリなどでの販売先をさがすことはしませんでした。変な投機目的で買われたりすることを嫌ったからです。

確かにレアーなギターであることには間違いありませんが、コレクションするのではなく、しっかりと楽器として弾いてもらうことを考え、広くたくさんのギタリストにみてもらうことを考えてイケベ楽器さんを選択しました。

他の店にも持って行って相見積りなども取りません。ちょっとでも高いところへ、なんて考えもありませんでした。

このレスポールゴールドトップはコレクトアイテムという価値もありますが、それ以上に音が素晴らしいのです。

出来るだけ、ライブで弾いたり録音で使ったりしてもらいたいという思いでイケベ楽器さんにもちこんだのです。渋谷のイケベ楽器さんの5階ビンテージ館です。

いつか、店頭に出る日がくるかもしれません。良かったら見に行ってみてください。そして音も出してみてください。

ナチュラルなきれいな音も、歪ませた音もどれも音というより声のような音色です。

もうひとつですが、イケベ楽器店の鈴木さんもビンテージ館の小松崎さんも対応が素晴らしく、短い時間でギターの確認をしっかりしていただき、あれこれ値引きの対象になるようなことをいっさい語らず、すごく気持ちの良い査定をしてくれたことにも感謝いたします。

楽器のことはまったく素人の家内も、とっても気持ちのいい買取をしてもらえたねと喜んでいました。

音の確認も、わずか15秒くらいで、それまで笑顔を見せなかった小松崎さんですが、音が出た瞬間に微笑んで、いい音ですね、、、と音の良さを一瞬で理解してくれたことにも感謝です。

もう私の所有しているギターではありませんので、このブログに記載してあるレスポールゴールドトップの投稿はすべて削除いたします。長い間このブログを見に来ていただいてありがとうございました。

きっと次のオーナーが決まれば、記事をご自分で書かれるかもしれませんね。

今後もこのギターが新しいオーナーのもとで活躍することを期待します。

本当に私の元で約45年間、活躍してくれてありがとう。お疲れさまでした。

そしてイケベ楽器さん、ありがとうございます。

長澤祐一

毛皮の染色 1 染料について

ここ9ヵ月間、ある事情で毛皮の染色をやってみています。

ようやく、9ヵ月が経ち、コート分の染色をすることができました。

一回のブログでは書ききれないので分けて書こうと思います。

今日は染料について書いてみます。

毛皮の染料は酸性染料という種類で、普通の染料屋さんでも売っています。

毛糸や生地を染めるのに使われています。

最初はもっと簡単に手に入ると思っていました。しかし、実際に初めて見るとなかなかうまく手にはいりません。

毛皮用に使われる酸性染料は分子がとても小さいと言われています。もちろん私は化学的なことはわかりません。聞いた話です。

知人からメーカーを聞き、メーカーから直接買うことができないので、問屋さんを紹介してもらって業者向けのものを1キロづつ売ってもらって染色がスタートしました。

ただ、赤の毛皮用の染料が手に入らず、赤だけを毛皮の染色工場から1キロ分けて売って頂き、やっとスタートしたのです。

実際、市販の一般的な酸性染料の赤を買って使ってみましたが、やはり毛皮の毛には入っていかず染色を何度試みても上手く着色しませんでした。染料販売店のひとに聞きましたが、そんなことはないはずだと電話で言われましたが、事実、着色しませんでした。

毛皮の染色は、毛皮の皮が熱に耐えられるようにクロム鞣しという処理をします。そして実際に染めるときには60度くらいのお湯のなかで染色します。生地などは沸騰させるまでやったりと、毛皮と生地の耐熱温度の違いもあり、染料販売店のひとの情報だと染まるはずだ、、なのですが、やはり染まりません。うっすら着色され赤味は付きますが、本来の染料吸着とは大きく違い、色落ちもしてしまいます。

最終的には、毛皮染色工場から訳を話して赤だけ譲ってもらうことになり、ようやく赤の毛皮用染料が手に入ったのです。

ところが、あとで気付くことになるのですが、私が染料卸屋さんから買った染料の青と黄色と、工場から分けて頂いた赤の染料の濃度が違うことが散々やったところで気付くことになります。

自分で買った青と黄色は当然同じメーカーのものなので濃さが一緒でした。しかし、別に買った赤だけは、同じ量の染料を使うと倍の濃度があり、どうやっても予想した色にならないのです。

散々テストをやって、例えば赤・青・黄色を 等分に入れれば予定ではグレー又は濃くすれば黒になるはずなのですが、何度やっても赤っぽいグレーになってしまい、もしかしてメーカーが違うということは、1gあたりの濃さが違うのかもと、青と黄色に 赤を少しずつ足していってグレーになるポイントを探っていくと、一対一の青と黄色に対して赤は半分の量で綺麗なグレーになることが解り、そこからは思うような色に作ることが出来るようになったのです。

今日は色の配合の方法についてまで書いてみます。

私のアトリエには島精機という会社のかなり高額なCADやペイントソフトが入ったコンピュータがあります。そのペイントソフトに測色計が付属していて、例えば、欲しい色を毛皮でも紙の印刷物でも測色計で測ることができます。

それによって、色の配合値が解ります。それに基づいて、染料を計測して混ぜることによって、ほぼ、求める色が出せるようになりました。

ただし、濃度は色の配合だけでは解決せず、毛皮の重さに対して、総量で何グラム又は溶かした染料を何cc入れるのかを実際の染色結果から求めるしかありませんでした。

一番難しかったのは染料を使いやすくするために、あらかじめ例えば200ccの水に染料を0.2g溶かした染料水を作ることでした。

問題は染料がなかなか均一に溶けてくれず、温度を上げて完全に溶かしたと思った染料が、温度が冷えて時間が経つと、また何割かは粉のような状態に戻って水の中に沈んでしまうことでした。

溶け切らない染料が容器の底に沈むことで、容器内の染料の濃度が若干変わってしまい苦労しています。

もともと毛皮の染色は見本に対してかなり曖昧な仕上がりでも仕事として通ってしまうということがあり、毎回同じ仕上がりというよりも、こんな感じということが多かったのです。微妙な色がピッタリということではなかったのです。

しかし、それは当たり前のことでした。コンピュータで表現できる色は1677万色です。人間の識別力を超えてます。ですからこんな感じがまかり通るのです。

私が今回染色を始めたのは、その業界にあるこの程度なら合格、、というレベルでは通らないような難しい色だったのです。薄いグレージュのような色でしたので、本来ならプロにお願いするのが当たり前のことなのですが、おそらく思ったような仕上がりは期待できないと考え自分でやる決心をしたのです。

よく考えればとても不思議な話です。プロに任せたら不安だから自分がやる、、 普通じゃあり得ないはなしですが、今回の求められている精度はプロでも難しいと判断しました。だって、通常仕上がってきた色に、もう少し赤くとか青くなんて言えません。まして今回のグレージュの超薄い色にわずかに赤味が入った色なんて、どうにでも解釈できてしまいます。

そんな意味でもせめて毛皮の色見本だけでも自分で作ろうと思ったところが始まりでしたが、結局全て自分でやってしまうということになったのです。

ここに至るまでは書くとこんなに短いことなのですが、掛けた時間は何か月もかかったのです。

次回は、実際に染める作業について書いてみます。 長澤祐一