今日は久しぶりにカップシーマーミシンについて書いてみます。
以前書いた記事のリンクを下に貼っておきますので一度みてください。
前回はテキストと画像のみでしたが、今回は同時にユーチューブにも久しぶりにアップしてみました。
今回この記事を書いた理由は、最近ブログ記事でよく見られているからです。毛皮の劣化関係の記事と同じくらいの頻度で見られているのです。理由はよくわかりません。
本題に入ります。このミシンは以前も紹介しましたが、カップシーマーミシンでは珍しい国産のミシンです。これ以外にもトレジャーさんというところが以前からこのタイプを作っていましたが、決して良いミシンとはいえませんでした。このミシンは国内初のカップシーマーで自動給油タイプミシンなのです。
製造元は大阪の細井ミシンさんです。当時、私が他社工場で工場長をやったことがあり、このミシンを大阪まで行き20台ほど発注した記憶があります。
セッティングには大阪からわざわざ来ていただき、いろんなアタッチメントを作って頂いたのです。
動画にあるエアー装置は、千葉の業者さんです。今は当然ですが作っていないと思います。
国産初といいましたが、トレジャーミシンさんもこのミシンが出た後に、自動給油タイプミシンを発売しています。現在中古でよくみられる小型のトレジャーカップシーマーではなく、私のチャンピオン(細井ミシン)以上に大型でした。
現在ネットでもまったく見かけませんのであまり売れなかったのかもしれませんね。でも、良いミシンでした。
当時は、イタリア製のリモルディとかストローベル社の大型の多分自動給油だったとおもいますが、それ以外にもボニスとかいろいろなメーカーが出していましたね。毛皮産業が栄えていた時代でしたので。
今回の細井ミシンさんのカップシーマーの一番の私のお気に入りは、縫いの厚さを0.1mmくらいで調整できる定規です。動画でもはなしていますので是非見てください。
このアタッチメントは当時細井ミシンさんの中村さんという職人さんに依頼して作ってもらったものです。私が30歳くらいのときなので、もう亡くなられたかもしれません。当時はとてもお世話になりました。
これ以外にも、カップシーマーミシンでよくやる糸切り時に糸を緩める作業がありますが、これを自動化したりと、とても工夫してくださったことを覚えています。
多くの毛皮職人さんはカップシーマーミシンで縫うときに縫いの厚さをコントロールするこのタイプの定規を付けません。しかし、あることはあったのです。シンプルなタイプのものですが。しかし、当時私が一時、弟子入りして働いたことのある職人さんも定規なしで縫っていました。
定規無しで縫うのが優秀な職人だといいう感じですね。
しかし、よく考えてみてください。通常の平ミシンであれば、コバステッチを打つのにコバステッチ用のアタッチメントを使わないで縫う人などプロでもいませんよね。何故か毛皮職人だけが定規を使うことをプロならば定規なしで縫えという感じでした。稀に使う人もいましたがほとんどが定規なしで縫っています。それは今現在もあまり変わっていません。それほど、プロとしての自覚が違うのです。
普通の縫製であればアタッチメントを使ってより綺麗に縫うのが当たり前ですが、当時も今も定規なしで縫ってこそ職人だという発想が根強くあるようです。もちろん、この細井ミシンさんの作ってくれた定規は、以前にもあった簡易的な定規ではなく微調整が楽で使いやすいものでした。いつもおもいますが、道具は使い手しだいですね。
確かに、有能な職人さんは定規なしでそこそこ綺麗に縫えます。しかし、当時の私の師匠も他の職人さんを圧倒するほどの技量でしたが、それでも当時始めたばかりの私が簡易的な定規を使って縫ったもののほうが遥かに綺麗だったことを覚えています。
あとは当時私が37歳くらいのときに高円寺の職人さんと出会い、お互いのアトリエに行ったり来て頂いたりしたことがありますが、その方も定規を使っていたのを覚えています。当然ですがとても綺麗に縫っていらっしゃいました。ポーカートというルーパーが無く、とても変わったミシンでした。
以前の投稿を見てもらうと解りますが、以前アップしたときはリモルディと細井ミシンさんのチャンピオンを併用していて画像ではリモルディが写っています。リモルディもとても良いミシンですが、どちらかというとルーパーの稼働域が小さく薄く糸も強く絞めるようなレットアウトに特化したミシンでしたので、現在はチャンピオンしか使っていません。
チャンピオンは薄物もそこそこの厚物も縫えます。もちろんムートンのようなものは無理です。ムートンはムートン専用の厚物用でないとダメですね。
動画では実際に縫っているのが映っていますので是非見てください。自動給油ですのでとても静かですよ。
静かさでいえばドイツのストローベルがやっぱり静かで安定感は一番かなと思いますが、当時でも普通のカップシーマーミシンの倍くらいの値段がしてましたので手が出ませんでした。もちろん使ったことはあります。
今現在は、この細井ミシンさんのチャンピオンだけしか使っていません。細井ミシンさんはこのミシンのあとに輸出向けに小型で少し軽量のブルーのミシンをだしたのですが、それも私は持っています。現在は使ってないのです。それから、毛皮ミシンはレットアウトという作業をするときに例えばミンクの背中でカットして斜めにカットして少しずつ縫いずらして長さをだすテクニックがあるのですが、ミシンの縫い目の問題で、どうしても片方が糸が緩みやすいという性質があり、それを解消するために通常は左から右に縫うのですが、右から左に向けて縫うタイプのミシン開発していました。
さすがに私もそのミシンは持っていません。おそらくプロトタイプとして終わってしまったのかもしれません。さすがに、最初から逆に縫う訓練をしていればよいですが、一旦左から右へ縫うのが体に染みついてしまってから、逆方向のミシンに切り替えるのは右利きを左利きにするか、それ以上に難しいかもしれません。
当時毛皮産業は大変なブームでしたから新しい投資をしていたんでしょうね。当時の細井ミシンさんはカップシーマーミシンの異端児みたいでした。そんな細井ミシンさんですが、当時はあまり受け入れられていない感じでしたね。職人さんもミシン屋さんも皆、頭硬かったですから。でも良いミシンですよ。
ここ20年くらいの三越本店時代とそれ以降の私の商品は、ほぼ、このチャンピオンで縫っています。現在はほとんど見ることがないですが、私にとっては一番大事なミシンです。是非ユーチューブ動画を見ていただけると嬉しいです。
長澤祐一