毛皮のクリーニングで使うオガの保湿力と吸収力

今日は、オガの保湿力と吸収力です。

前回のオガの汚れ具合と吸収力(2022年3月25日)の続きになります。

 

やっと、前回紹介したバイオクリーニング剤で洗ったオガが完全に乾燥しました。前回のときにすでに二週間経っていましたので、ほぼ二か月間、完全に乾燥するのにかかったことになります。

 

ヒノキの匂いは消えていません。一般的にプロの間で言われているオガの外側のチャカチャカした部分は取れてしまっているのかもしれません。顕微鏡で見ればわかるのかもしれませんが、顕微鏡がないのでわかりません。ただ、以前からオガのチャカチャカした毛羽立ちが汚れを取るともいわれていますが、その効果は明確にはわからないのです。

 

私がオガに求めているものは、一般的な毛皮のクリーニングで使うような、簡易的に効果も期待できないような安易な使い方ではなく、毛皮の毛と皮の両面を徹底的に洗うための、汚れや皮や毛に含まれる脂分を取り除くための用途としてのものです。

 

そのため、今回オガを水洗いしてみてわかった水分の吸収力や保湿力は十分な結果だと判断しています。

以前、洗った時には単純に水洗いをしました。その理由は、最近の洗剤のほとんどが香料が入っていてオガの洗浄には使えないからです。今回使ったバイオクリーニング剤は無香料なので安心して使えました。

それと、以前に洗ったときの乾燥方法は、セメントの上に布を敷いて、そこにオガを敷き詰めるようにして乾燥しましたが、その時の乾燥時間は早かったのですが、セメント側から雑菌が入ったせいか、乾燥中にカビが発生してしまいました。

そのため、今回は深さのある大きな容器に入れて乾燥してみました。表面から乾燥して白くなっていき、そのため毎日数回はオガを中から混ぜるようにして乾燥しています。今回は雑菌が入らずカビの発生はありませんでしたが、乾燥に三倍以上の時間がかかりました。

オガの価格からみても、この洗って再利用する意味はない気がしますが、オガの誰も知らない本当の能力・効果を見極めるには大事なことでした。

 

以前も書きましたが、私の毛皮クリーニングのなかでオガに求める役割は、汚れを吸収して毛皮の皮に戻さないための吸収力と保湿力でしたので、完璧とは言えませんが、私が想定していた役割は担ってくれているようです。

前回書き忘れましたが、前回クリーニングしたコートはブラック強化染めのコートでした。そのため、あれほどまでに水が真っ黒になったのかもしれません。しかし、逆に言うと、それくらい皮から染み出してオガに染料が吸収されたことが証明出来ています。

最近、毛皮の染色もやることにしましたが、毛についた染料は簡単には落ちませんが、皮面についた染料は皮面に染料が刺さっているような状態ですので落ちやすいとも言えます。その皮面についた染料が前回クリーニングでは落ちたことが証明されています。

 

毛についた染料は簡単には落ちません。落ちるとすれば60度前後のお湯のなかで、ペーハーを上げてアルカリ性に変えていくと色は落ちていきますが、普通の水につけたくらいでは落ちません。

 

上に書いた60度のお湯を使うとありますが、普通の状態の毛皮ではだめですから絶対にやらないでください。染色屋さんではクロム鞣しという前処理をしてからやります。クロム鞣しをしないでやるとお湯の中で縮んでカチカチに固まってしまいます。

 

話それました。クリーニングのために使うオガの役割としては、濯ぐときの水の役割ですので、一般的な毛皮のクリーニングで使う少量のオガでは汚れを有機溶剤で溶かして、その汚れや脂分を十分に吸収するという一番大事なことが出来ません。

写真の上が今回洗ったオガです。一回で最低でもこれくらい一着のコートを洗うのに必要になります。

下の写真は、上で書いたコンクリートの上で布を敷いて乾燥した時のものです。この乾燥でカビが発生してしまいました。

 

 

今流行りの言葉に持続可能というのがありますが、ただ、形を変えるだけのリフォームでは、持続可能とは言えません。毛皮を持続可能なものにするために必要なことがあります。

 

丁度、クリーニングや保管の時期になって来たところですが、時々は毛皮のことを思い出してケアーのことを考えてみるのも良いかもしれません。

 

長澤祐一