毛皮の毛先

今日は毛皮の毛先について書いてみます。先日のブログで回転アイロンを使ってシェアードやプラクトミンクがとても綺麗になることを書きましたが、アトリエではミンクやセーブルのような繊細な刺し毛をもつ毛皮は回転アイロンをかけません。その理由は、回転アイロンによって、わずかですが刺し毛の先が切れてしまうからです。

ビーバーやヌートリア、またはその他、刺し毛が硬く太いものは、そう気にすることはありませんが、ミンクやセーブルの刺し毛は繊細ですのでローリングアイロンはかけることは一切いたしません。以前にローリングアイロンを買ったばかりのときに何度かかけて毛先を切ったことがあるので、その後はかけておりません。

弊社アトリエで使っている回転アイロンの刃先はすでに仕上用として丸く削り磨いてありますが、それでも切れてしまいます。一般的にクリーニング等に出したときに業者さんがどんな仕上げを最終でしてるかは解りませんが、あまり気にせずに、どんな毛皮にでもアイロンをあてているのかもしれません。

実際、海外の写真や動画でもグレージングといい、毛を綺麗にする作業として、どんな毛皮でも回転アイロンにかけていますが、きっと気にせず使っているのだと思います。私が言っているミンクやセーブルの切れてしまう毛先とは、通常では気にしないレベルなのですが、やはり、切れた毛先は大げさに言えばフェイクファーの毛先のようにブツブツ切れた状態になっています。

繊細なメスのミンクやセーブルの毛先は、肉眼でみても、よく見ると、先がどこまでも細く細く延びています。もしかするとメスミンクのほうがセーブルよりも毛先が繊細に尖っているかもしれません。ミンクの毛先は、尖った部分からすぐに太くなるので、わずかな毛切れも違いが出るのかもしれません。

セーブルは本来はミンクよりも繊細な毛質ですが、逆にセーブルは弱すぎて先が切れてしまっているのかもしれませんね。普段ミンクを見ているときには気が付きませんが、一本の原皮を回転アイロンをかけるまえに触り、見て、その後アイロンをかけたものを見て、触ると、綺麗なミンクががっかりするほどに変化します。

見た目、大きく変わるわけではないのですが、そのわずかな違いが繊細なメスミンクの持ち味であり、それが理解できないと、良い商品を良い状態で作ることや管理することは難しいのです。基準はひとそれぞれですが、以前オーダーメイド(原皮の調達)を書いたときにもいいましたが、原皮の目利きこそが私どもの最大の武器のひとつでもあると言えます。

一般的には原皮屋さんのほうが、普段から膨大な量の材料を見ていますので、全体感に関しては適いませんが、アトリエでは一枚の毛皮を再なめしに出す前、出した後、加工始め、加工途中、加工後、商品として、または販売されたあと修理で戻ってきたり、等、ずっと同じ原皮を見続けます。そうすることで、どんな材料が加工前には、どんな状態であるべきかを知ります。

そんな意味でも、原皮屋さんとは、また違った目利きの能力が備わります。ただし、これはメーカーで、尚且つ販売の現場にいるからこそ出来ることで、中間に関わるだけではなかなか難しさがあります。

長澤

ローリングアイロン2013

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