プラクトミンクについて

プラクトミンク回転アイロン

今日は、プラクトミンクについて書いてみます。プラクトとは刺し毛を抜いたもののことをいいます。一般的に多いのはビーバーやヌートリアです。ミンクがプラクトされるようになったのは、刺し毛付きのミンクが売れにくくなってからでしょう。刈毛とともに毛皮らしさを抑えることを目的として出てきた加工方法です。当時のアンチファー運動も影響していたのかもしれません。

刈毛はプラクトしたものを刈っていると思われがちですが、そうではありません。ヌートリアの刈毛はプラクトしたものを刈ってます。その理由はヌートリアやビーバーは刺し毛付きのままでは、刺し毛が硬くて商品にならず、最初のなめしの段階でプラクトにします。

しかし、ミンクは刺し毛が付いたものも、とても綺麗な毛皮なので刺し毛がついたまま売られています。そして、プラクトも刈毛も、それぞれ別々に加工されます。ビーバーやヌートリアのようにプラクトしてから刈られているのではありません。

それが出来る理由のひとつに、ミンクの刺し毛は、先は確かに硬く綿毛より太く、ちゃかちゃかするようにできていますが、奥のほうにいくと綿毛と同じように細く柔らかい性質をもっています。だから、刺し毛が付いたままシェアードしてもプラクトを刈毛したような柔らかい仕上がりになるのです。

逆に、プラクトは刈毛のように全体を刈り、毛の本数は変わっていないことに比べると、刺し毛を抜いている分毛の密度が薄くなり、刈毛より毛が長い分、上にも下にも向き、なんとなく毛に腰がないように感じます。そして、シェアードは刺し毛の根元の、綿毛よりも少しだけ太い毛が綿毛のなかに混ざっているので、プラクトよりも明らかに弾力があります。

使い方を付け加えると、刈毛は一般的に毛並みは逆毛で使い、プラクトは並毛で使います。

これが、ミンクのプラクトと刈毛の違いです。画像はレットアウトしたものをプラクトしたミンクですが、左右で見え方が違います。左が通常プラクトしたものです。右が回転アイロン(ローリングアイロン)をかけたものです。

見て分かるとおり、回転アイロンをかけたほうは毛の割れが少なく一本一本がほぐれた状態になるためボリューム感や見た目の柔らかさもでます。回転アイロンは一般的に温度を上げて使うと認識されていますが、今回は温度をまったく上げずに回転アイロンに毛をあてただけでこのような風合いがでます。

温度を上げない理由は、以前も書きました(毛のボリューム感という記事)が、綿毛をアイロン温度上げてを伸ばすことでストレートパーマをかけたような状態になり、それは毛のボリューム感を失ったり、冬の時期では静電気を起こす原因になったりすることがありますので、アイロンといえども温度を上げずに、櫛を何百回もかけるようなつもりで使うこともあります。

この風合いは手で、櫛を何百回かけても、やはり機械の能力にはかないません。昨日書いたワークステーション(PC)と同じく、毛皮つくりになくてはならない道具のひとつです。

次回は当社が回転アイロンを刺し毛付きミンクやセーブルに絶対に使わない理由を書きます。

長澤

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