毛皮の染色 1 染料について

ここ9ヵ月間、ある事情で毛皮の染色をやってみています。

ようやく、9ヵ月が経ち、コート分の染色をすることができました。

一回のブログでは書ききれないので分けて書こうと思います。

今日は染料について書いてみます。

毛皮の染料は酸性染料という種類で、普通の染料屋さんでも売っています。

毛糸や生地を染めるのに使われています。

最初はもっと簡単に手に入ると思っていました。しかし、実際に初めて見るとなかなかうまく手にはいりません。

毛皮用に使われる酸性染料は分子がとても小さいと言われています。もちろん私は化学的なことはわかりません。聞いた話です。

知人からメーカーを聞き、メーカーから直接買うことができないので、問屋さんを紹介してもらって業者向けのものを1キロづつ売ってもらって染色がスタートしました。

ただ、赤の毛皮用の染料が手に入らず、赤だけを毛皮の染色工場から1キロ分けて売って頂き、やっとスタートしたのです。

実際、市販の一般的な酸性染料の赤を買って使ってみましたが、やはり毛皮の毛には入っていかず染色を何度試みても上手く着色しませんでした。染料販売店のひとに聞きましたが、そんなことはないはずだと電話で言われましたが、事実、着色しませんでした。

毛皮の染色は、毛皮の皮が熱に耐えられるようにクロム鞣しという処理をします。そして実際に染めるときには60度くらいのお湯のなかで染色します。生地などは沸騰させるまでやったりと、毛皮と生地の耐熱温度の違いもあり、染料販売店のひとの情報だと染まるはずだ、、なのですが、やはり染まりません。うっすら着色され赤味は付きますが、本来の染料吸着とは大きく違い、色落ちもしてしまいます。

最終的には、毛皮染色工場から訳を話して赤だけ譲ってもらうことになり、ようやく赤の毛皮用染料が手に入ったのです。

ところが、あとで気付くことになるのですが、私が染料卸屋さんから買った染料の青と黄色と、工場から分けて頂いた赤の染料の濃度が違うことが散々やったところで気付くことになります。

自分で買った青と黄色は当然同じメーカーのものなので濃さが一緒でした。しかし、別に買った赤だけは、同じ量の染料を使うと倍の濃度があり、どうやっても予想した色にならないのです。

散々テストをやって、例えば赤・青・黄色を 等分に入れれば予定ではグレー又は濃くすれば黒になるはずなのですが、何度やっても赤っぽいグレーになってしまい、もしかしてメーカーが違うということは、1gあたりの濃さが違うのかもと、青と黄色に 赤を少しずつ足していってグレーになるポイントを探っていくと、一対一の青と黄色に対して赤は半分の量で綺麗なグレーになることが解り、そこからは思うような色に作ることが出来るようになったのです。

今日は色の配合の方法についてまで書いてみます。

私のアトリエには島精機という会社のかなり高額なCADやペイントソフトが入ったコンピュータがあります。そのペイントソフトに測色計が付属していて、例えば、欲しい色を毛皮でも紙の印刷物でも測色計で測ることができます。

それによって、色の配合値が解ります。それに基づいて、染料を計測して混ぜることによって、ほぼ、求める色が出せるようになりました。

ただし、濃度は色の配合だけでは解決せず、毛皮の重さに対して、総量で何グラム又は溶かした染料を何cc入れるのかを実際の染色結果から求めるしかありませんでした。

一番難しかったのは染料を使いやすくするために、あらかじめ例えば200ccの水に染料を0.2g溶かした染料水を作ることでした。

問題は染料がなかなか均一に溶けてくれず、温度を上げて完全に溶かしたと思った染料が、温度が冷えて時間が経つと、また何割かは粉のような状態に戻って水の中に沈んでしまうことでした。

溶け切らない染料が容器の底に沈むことで、容器内の染料の濃度が若干変わってしまい苦労しています。

もともと毛皮の染色は見本に対してかなり曖昧な仕上がりでも仕事として通ってしまうということがあり、毎回同じ仕上がりというよりも、こんな感じということが多かったのです。微妙な色がピッタリということではなかったのです。

しかし、それは当たり前のことでした。コンピュータで表現できる色は1677万色です。人間の識別力を超えてます。ですからこんな感じがまかり通るのです。

私が今回染色を始めたのは、その業界にあるこの程度なら合格、、というレベルでは通らないような難しい色だったのです。薄いグレージュのような色でしたので、本来ならプロにお願いするのが当たり前のことなのですが、おそらく思ったような仕上がりは期待できないと考え自分でやる決心をしたのです。

よく考えればとても不思議な話です。プロに任せたら不安だから自分がやる、、 普通じゃあり得ないはなしですが、今回の求められている精度はプロでも難しいと判断しました。だって、通常仕上がってきた色に、もう少し赤くとか青くなんて言えません。まして今回のグレージュの超薄い色にわずかに赤味が入った色なんて、どうにでも解釈できてしまいます。

そんな意味でもせめて毛皮の色見本だけでも自分で作ろうと思ったところが始まりでしたが、結局全て自分でやってしまうということになったのです。

ここに至るまでは書くとこんなに短いことなのですが、掛けた時間は何か月もかかったのです。

次回は、実際に染める作業について書いてみます。 長澤祐一