ロシアンセーブル ヘビーシルバリーの私の評価

今日はロシアンセーブルのヘビーシルバリーについて書いてみます。

以前、一度このヘビーシルバリーについては記載したことがありますが、https://www.passione.co.jp/blog/%e3%83%ad%e3%82%b7%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%82%bb%e3%83%bc%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%bb%e3%83%98%e3%83%93%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%ab%e3%83%90%e3%83%aa%e3%83%bc/

このヘビーシルバリーという種類について、今日は別の角度からお伝えいたします。

三越毛皮サロンをコロナで辞める直前にインスタグラムを始め、最初は当然ですがフォロワーも少なく、友人やお客様に声をかけることもなく始めたためフォロワーになってくれるのは海外の毛皮業者や毛皮マニアがほとんどでした。

そんな中に、ロシアの技術者や原皮業者もたくさんいて、その原皮業者のなかにロシアですので当然ですがロシアンセーブルを扱っているところがたくさんありました。話長くなりましたが、この業者のなかでセーブル原皮を投稿してくるところがあり、その原皮の凄さに驚いたのです。

今日お話しするのは、この業者のロシアンセーブルヘビーシルバリーについてです。

その業者の投稿がこれです。https://www.instagram.com/sable_silvery_5/  白い差し毛が真っ白で原皮全体を埋め尽くすようなヘビーシルバリーです。私もたくさんのヘビーシルバリーをみていますがこんな原皮を実際に見たことはありません。この業者のなかでもすべてではありませんが、一枚だけありました。

正直これは、自分も最高のランクを買っていると自負していたのですが、驚きました。国内にはこのレベルは絶対入ってきませんから。

写真をみてもらうと解ります。リンクを貼っておきますので、是非みてください。残念なのは原皮の一部しか写っていなく本来の原皮がどうかはわかりません。

ここで、ひとつ私の意見を言います。最初、その差し毛の白さと多さに驚いたのですが、時間が経つと、そのセーブルは何か人工的に見えてしまうことに気づきました。 あまりにも刺し毛が白く均一過ぎて、ひとつ間違うと人工的に作られたフェイクファーにも見えてしまうのです。下に私のブログで紹介したヘビーシルバリーの画像も下に載せますので比較してみてください。もう、ここは好みでしかないのですが💦

なんとなく、人工的に見えるほどのヘビーシルバリーがよいのか?それとも私の画像のヘビーシルバリーが立体感があって良いと思うかは好みになります。 サイトには何種類もの投稿がありますが、上に張り付けた画像が一番ヘビーシルバリーという意味では凄いです。もちろん、写真の撮り方でも大きく多少差がでますが、押しなべてこの原皮屋さんのものは凄いです。 私のものと似ている画像もありますね。とにかくヘビーシルバリーという種類だけを載せているのはこのロシアの原皮屋さんだけです。 これほどの凄いヘビーシルバリーを載せていても、原皮本来の魅力を引き出せているかどうかは難しいと感じます。もちろん作りによっても変わりますから。

しかし、最後はいろんな種類を正確に知り見て触って感じてみて、自分の好みかどうかを決めるべきだと思います。

今回、紹介したロシアのヘビーシルバリーは私のなかでは残念ながら一番ではないのです。

決して負け惜しみではありません。この原皮の本質的な魅力が解ることが私の、パショーネの強みですから。

一般的な評価を加味しながらも基本的には私が凄い、綺麗、色香がある、、、と信じたもの、そういう原皮で商品化してきているのがパショーネの今の評価です。もちろん、パショーネを知らないひとがほとんどですが。

シルバリーの量や白さだけでもだめで本体綿毛の色の濃さ、青み、アゴの部分の黄色の量(少ない方がよい)等比較すべきところは一杯あります。

それだけの価値がある素材です。ワインと同じとは言いませんが、それに近いくらい本来は原皮の詳細を知り、製品として仕上がるための技術を知って、初めてその価格の高さの価値を評価でき、ご満足いただけるのだろうと私は考えています。

今日も難しい解説でした。私が書くことが絶対ではありませんが、極力バランスをとり解説しようとこれからも努めたいと思います。最後までありがとうございました。

長澤祐一

追伸、以前ヘチマカラーをインスタグラムに載せたことがあります。そのリンクも載せておきますのでよかったら見てください。https://www.instagram.com/p/CANPyJuJ8nm/

当時、ウクライナでの戦争が始まる前でしたので、ロシアやウクライナの毛皮技術者がコメントをくれています。インスタグラムには翻訳機能もありますので是非読んでみてください。ロシアンセーブルの本場の職人さんからのコメントです。そのコメントのなかで、原皮のマッチングが素晴らしいとありますが、さすがロシアの技術者さんです。原皮をピッタリに合わせるのがいかに難しいかをよくわかっています。そんな目で仕上がりをみてください。

リンクスキャットのベリーという嘘

最近、ファーのなかでも超高額品のリンクスキャットのベリーという記載でフリーマーケットのようなところに出品されています。

ベリーとは、例えばリンクスキャットのような素材でいえば、腹の白い部分のことを指しています。

しかし、白ければいいのかというわけではありません。私たちプロがベリーというには、いくつか条件が付きます。

リンクスキャットの腹の白い部分の斑点模様は規則性があります。本来はこの自然な状態が一番価値があり綺麗です。

ここで、フリーマーケットによく出品されている悪い例を書いてみます。

先に書きましたが、腹の薄い綺麗な腑の部分ではなく皮が少し厚く、ベリーと言われるコートを作ってわずかに残った部分を集めて小さなパーツを中国やギリシャ等で接ぎ合せたようなものを使ってベリーと称して売られている本来のベリーではないものがあります。もちろん、海外の本当のプロは解ります。

しかし、フリーマーケット等で買おうとしていらっしゃるお客様はほとんどが素人の方ですので、そんなことは解りません。現物もベリーはとても、軽いのですが、偽ベリーは実際は重かったりします。

ここに何度も書いていますが、元価格が3000万とかでその1/10なんて偽物か、なにかわけがあるかしかありえないのです。

よく、リンクスキャットの超ロングとかになると、着丈の長さを出すためにレットアウトという加工をします。技術者によって着丈を少しだけ伸ばすためならば、腑の模様が崩れないように腑を避けてカットしてずらすという手法もとる場合がありますが、超ロングコートとなるとそれも難しく、腑をカットしないわけにはいかず、カットして長さを出すしかないのですが、それでも、元々の腑が規則正しのをカットしますので、白い残皮の部分を細かく継ぎ足したものとはまったく別のものなのです。

自分は、その継ぎ足したベリーが悪いとは言っていません。悪いのは本来ベリーとは腹の薄い軽い部分で白いところをベリーと呼んでいるにも関わらず、小さな端切れを集めて作ったプレートから作った決して軽いとは言えないものをベリーと謳い、本当のことを偽って販売することには、それはおかしいだろう、と感じます。フリーマーケットで販売する側も素人ですから、それはしょうがないと思うかもしれませんが、何百万もするものを売るならば、フリーマーケットであっても、売る側がもっと勉強をする必要があると感じます。

リンクスキャットの腹の部分の模様を少しだけ説明しますね。

リンクスキャットの腹の部分は、首の部分は白い毛が広い範囲であり、その周りに茶色い腑がちりばめられています。

そのあごや首の下には、小さな茶色い腑が中心部分に点線を描くように続きます。

最大の特徴は、この中心の点線の横に左右対称に大き目のスポット(腑)が斜めに二個セットで存在し、それをお尻付近まで繰り返します。

最後はお尻というかおなかの最後の部分で白い部分が大きくひろがり、両端に小さな腑が出ます。

ここは腑が小さく皮も厚くなり、はぎ落されカットされた残皮としてよく使われます。

リンクスキャットの腹の部分は基本的にはほぼすべての原皮がこうなっています。

画像が完璧なものがあれば良いのですが天然素材のためないのですが、傾向としては上で解説したようにほとんどのリンクスキャットの腹の模様は出来ています。

上の画像は、リンクスキャットの裏面からみた画像です。

本来は、裏側も真っ白ですが、時々加工するために水に濡らすと、こんな風に腑が浮き出て見えることがあります。

この画像をよく見ると中心に小さめのスポットが真っすぐ並んでいるのが解りますね。

さらにその中心の両脇にほぼ規則正しく腑がならんでいます。

赤〇で囲んである部分です。左側は〇をつけてませんが、完璧な左右対称ではないですが、ほぼ同じように存在します。

そして、その両サイドにはっきりとしたスポットで二個ずつ斜めに出ています。

それ以外にも多少ぼやけた腑が見えますが、基本的には中心部分とその両サイドに斜めに二個ずつ並ぶのが定番の腑です。

下は私のインスタグラムに投稿した画像ですが、上で記載した規則性を意識してみてもらうと、その規則性が確認できます。もちろんすべて同じではないですが、逆にそのばらつきが自然の美として存在しています。

一見ランダムに出ているように見える腑ですが実際には規則的に並んでいます。これを知っていれば、ベリーと言われているその画像が本当かどうかが、おおよそ見当がつくのです。

実際のコートで見るとなかなか見分けるのが難しいですが、上の法則を知っていると多少は騙されにくいかもしれません。

もちろん騙されてもいいと思う人はそれでよいのです。このブログでは難しい毛皮素材のなかで騙されて実際の価格と本来の価値に違いがあり、それを知らずに買ってしまうようなことがないように書いています。

ですから、それっぽいものをそれなりの価格で購入したいというお客様もいらっしゃいますので、それはそれで良いのです。ただ、販売する側が無知なため、または知ってても隠して販売するというようなことで、本当の価値を知らずに買ってしまうようなことがないようにと書いています。 知らずに間違って買ってしまって許せる金額ではありませんから。 長澤

原皮の保管方法と毛皮のクリーニングとの関係

劣化に関する最新記事をアップ致しました。是非見てください。https://www.passione.co.jp/blog/%e6%af%9b%e7%9a%ae%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bf%9d%e7%ae%a1%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e5%8a%a3%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%84%8f%e5%91%b3/

今日は、原皮の保管方法と毛皮のクリーニングとの関係と言うテーマです。

一般の方には、あまり関係のない話ですが、原皮をある程度大量に抱えている会社にとっては大事なことです。

私のところでも、会社の規模も小さいですし大量に商品を生産して大量に販売するというわけではありませんが、そんな私のところでも在庫をエクセルで管理していますが、小さなアーミンのような原皮も含めると2,000枚は楽に超えます。

当然一年で使い切ることはありません。

そう考えると何が一番大事になるかと考えると、原皮の状態を徹底してベストの状態で管理することです。

チンチラのように元々、劣化がしやすい素材はクロム鞣しという処理を染色屋さんでしています。これは染色などのための前処理として耐熱効果を出すための処理ですが、劣化防止にも使えます。

今期、初めてですが、セーブルやミンクの一部にもクロム鞣しをして劣化防止をしようと試みました。しかし、クロム鞣しのために少しグレーっぽく色がついてしまいます。セーブルのように元色が、そこそこ濃いものは良いのですが、ホワイトミンクや薄い色のミンクにはクロムの色が少しついてしまい、ホワイトやパールミンク等の原色としては使えません。

敢えてグレーっぽくしたいなら良いのですが、ナチュラルの色としては、わずかにグレーっぽく、くすんだ色になり難しいのです。

それと皮が少しだけ硬くなります。通常の毛皮の鞣しは、ドレッシングと呼ばれていますが、要はドレスのように柔らかく鞣すということです。

クロムを入れて耐熱処理をした皮は少しだけですが硬さがでます。

そんなこともあって染色用のホワイトミンクはクロム鞣しする意味がありますが、ナチュラルの色のまま使うパールやサファイア、ブルーアイリス等のミンクにはクロム鞣しをかけることが出来ないことが分かりました。

劣化防止にはクロム鞣し以外にもう一つあります。これは、やったことがない人には、毛皮業界の人と言えども理解できませんが、以前書いたことがありますが、鞣し屋さんのひとと話すと意見が一致した方法があります。

その方法は鞣しの最後の工程で毛皮の脂をドライクリーニングの機械で抜きます。この抜く作業によって毛皮から余計な脂が抜けて、皮の表面もカラッとした状態になり、空気中の湿気を吸収しなくなります。

もちろん、一般のレベルのドライクリーニングでは、私の感覚としては、まだ全然不足していますので、鞣し屋さんに再鞣しをしてもらい最後のドライクリーニングのときに少し強めに脂を抜いてもらいます。

自分でやる場合は、オガに有機溶剤をたくさん混ぜて、毛皮用のドラムに原皮と一緒に入れて三日間くらい回します。ドラムを回し始めて三日目に入ったところくらいから突然柔らかくなりだします。そして、ドラムのなかで有機溶剤が自然に気化するのを回しながら待ちます。

その後、ドラムの蓋を網の蓋に替えてオガを落としながら徹底して乾燥させ、原皮の筒状の中に入ったオガも綺麗に落ちるまで回します。

こうして、通常の鞣し上がりのときの、皮に含まれた脂が多いかなと思った状態から、触ってもサラサラいうような気持ちのよい感触になり、湿気のある国内での原皮の長期保管に適した状態になります。

よく、長期保管したミンクの原皮の皮が硬くなり、ミンク本来の柔らかさや風合いが無くなり、ミンクの束も以前より重くなった感触のときがあります。

もともと仕上がった少し多めの脂が入った状態のミンクが長期間、動かすことなく同じ場所で保管されたことで湿気を吸ったまま皮がわずかに硬化してしまうことがあります。

鞣し上がったばかりの柔らかく軽やかな状態から変わることがあるのです。

これは湿気を吸収して、その湿気によって皮が硬くなるからです。私たちの毛皮加工の中で水を使って皮を伸ばしたり曲げたりして毛皮を加工することがありますが、この原理と同じです。濡らすほどではないので加工の時のように固くはなりませんが、同じことが原皮の保管の時にも起こります。

これを防ぐには水分を吸収し難い皮の状態にするしかありません。

そのためにドライクリーニングをしています。

このことは、自分のリスクで何年も仕入れた皮を保管し、自分で良いと思った方法が正しいのかどうかを何年もかけて見続けて確認する必要があります。

今、現在私がやっている方法が現時点での最良の方法と考えていて、この考えのもとにクリーニングもしています。

私の中ではクリーニングが一番の目的ではなく皮と毛の状態を管理することで皮に匂いがついたり劣化したりしないようにし、毛皮本来の魅力が持続することを目的とするためのクリーニングなのです。

毛皮の毛も確かに汚れます。しかし、毛は意外に洗って落とすことが可能です。私のインスタグラムのロシアのフォロワーもバイオクリーニング剤を使って毛の表面から洗っている動画をよくみかけます。

ただ、残念なのは毛皮大国のロシアでさえも皮に一番のリスクがあることを理解していないように見えます。もしかしたら気候の違いで皮が湿気で酸化したり匂いが発生したりしないのかもしれません。

皮の部分の管理は、毛皮にとってかなり重要であり大変です。

正直、私も、最初は表の毛を綺麗につくることばかり考えていました。

25年以上もですよ。しかし、10年くらい前だったかもしれませんが、あるとき、いくら綺麗に作っても毛皮本来の魅力を引き出すのには皮そのものの状態をベストにしないと毛皮本来の魅力が引き出せないことに気が付きました。

技術的なノウハウや道具がそろったのが、ようやくです。ほんと、ようやくここに来て、いろんな問題が人に頼らず自分で解決できるようになったところです。

このコロナになったことや、そのことで某百貨店毛皮サロンを辞めさせてもらえたことで、これまでよりも時間が出来、考える時間を貰えたことで時間のかかる試験をすることが出来て、なんとなく、あ~こんな感じかな、、と思えるようなところに辿り着きました。

誤解されるかもしれないので一言付け加えますが、今まで作ったものがダメだったということではありません。

ただ、毛皮は鞣す作業も手作業ですので、常に私が望む皮の状態とはいきません。どうしても、今回は皮が厚いな、、とか、今回は皮が脂っこく重いな、、とか都度変化します。

じゃあ、鞣しのせいにして、しょうがないと言って、自分が納得していない状態で作業を進めるのかという問題にぶつかります。

自分の場合は、そのまま先に進めないので皮が厚ければ薄く鋤こうと思い回転アイロンという機材を使って皮を鋤いたりするわけです。

脂も抜きたいと思えば自分で抜く方法を考えるだけなのです。

誰も拘らないところに拘り、執着して来ましたが、ようやく100%とはいきませんが、そこそこの平均値を出すことが出来るところに近づいたような気がします。

以前よりも時間も手間もかかりますが、前工程の誰かのせいにすることなく自分で解決策をみつけられたことは大きいです。

原皮の保管と毛皮のクリーニング、離れたテーマのようで、とても近い距離にあり毛皮の本当の魅力を引き出すための大事な部分なのです。

長澤祐一

使用素材の明確化の必要性

今日は商品に使われる素材について書いてみます。一般的には例えばミンクであれば、どういう種類の原皮を何枚使用しているとかが記載されるべきなのですが、ほとんどの売り場やオンラインショップでも、そこまで記載されることはありません。

自分的に言えば少し残念な気がします。毛皮は作るものによって、頭の部分が残ったり腹の部分がたくさん残ったりします。商品のデザインや作り方で残る部分が出ることが多いのが毛皮製品です。

その残皮をスクラップといって買い求めてリサイクルのように、その残皮で製品もたくさん作られています。主に中国やギリシャで作られるものが多いのですが、稀に国内でも作られています。ギリシャなどでは、小さなピースを集め仕訳・整理して、プレートにされることが多く見られます。インスタグラムのDMにもギリシャや中国のフォロワーから残皮を売ってくれと依頼があります。

例えば、ヤーンと呼ばれるネットに3~4mmのテープ状にカットされたセーブルを使い作る商品がありますが、腹の部分だけが綺麗に余りますので、それを大量に集めマフラーにしたりもします。もちろん、毛皮を100%使い切るという意味ではとても良いことなのです。

ただ、ネット等ではそういうものの販売については、本来であれば原皮の詳細を書く必要があると思うのですが、セーブルマフラーとしか書かれないケースが多く見受けられます。もちろん全部ではないのですが。

最近ファーマークという、いわゆる原料の生産地、鞣した場所、その他その毛皮の生産に関わったところが記載されたタグが付くことがありますが、それも大事なのですが、販売する側はもっと、元素材のどの部分から作られたものなのかを記載すべきだろうと思います。それによって同じセーブルでも価値が大きく変わるからです。どんなに長いロングマフラーでも、セーブルの頭だけを使って作られたものも良く目にしますが、本来のセーブル本体を使ったものから比べれば価値は大きく下がります。それを、価値のあるセーブルをリーズナブルに提供しますというような言葉で半分騙して売るようなことはすべきではないはずです。買ったお客様がどこかで恥をかくことがあるかもしれません。私達のように商品をみて原皮の頭なのか、腹なのか、一番価値がある胴体の部分なのかがすぐにわかるひとは別にして大半の顧客側に立った人たちは記載がなければ、それぞれの価値が解らないのが普通です。

もちろん、全てを教えればいいのかというと、知らなくてもいいものもあるはずです。そして、教え、伝える私達にも大きなリスクがかかります。私も現実に悩んでいます。どこまで伝えれば、本当の商品価値が伝わるのか、そして夢を壊さずに販売ができるのか。特にオンラインショップという場所で、テキストで書いたものは簡単に記憶から消せません。そして、知りたいと考えるひと、知らなくても良いと考えるひと、オフラインであれば、それぞれを見ながら対応できます。しかし、オンラインショップでは一方通行になりがちです。悩みます。

ファーマークも聞くところによるとかなり厳しい基準でマークを申請し提供されるということですが、何故か私は、表紙だけを変えようとしているだけのように感じます。申請・登録の基準が厳しく、小さなメーカーは、ほぼつけることができません。今流行りの、跡を辿るという意味では正しいのかも知れませんが、そんなことよりも、各メーカーや販売元がもっと丁寧な使用素材の説明をするべきではと感じます。そして以前も書きましたが自社が行う全てのことに対して、他の何かをもって証明したりしなければならないという仕組みを変えるべきであろうと感じます。私のところではファーマークは手に入りませんが、元々つける気はありません。自分の商品の良さや信頼性は自分のところの商品力やサービス内容で築くしかないと考えています。それが小さくてもブランドとして生き残る唯一の道であり私達の意地でもあります。

 

パショーネのオンラインショップでは、ほとんどの商品に使用原皮の内容と枚数を記載しています。たまに漏れているものがあるかもしれませんが、極力、商品の内容は細かく書くように努めています。

 

下に、原皮の使い方で頭や腹が余ることがあることの以前の記事がありますのでリンクを貼っておきます。作り方や作るものによって原皮の余る部分が出るということの参考になるかもしれません。よかったら見てください。  長澤祐一

ホワイトミンクマフラー

 

 

 

 

 

 

 

 

僅かな差が 大きな差に

すみません。一つ追加します。(2021/9/5)

最後の方だと一度読んだ方が気が付かないかもしれないと思い最初の部分に記載追加します。以前、ミンクは毛が短いほうが価値があるという誤解という投稿でも書きましたが、今日の某ブランドのミンクの毛もショートナップではなく、サガミンクによくある刺し毛の長いタイプを使っています。私のミントグリーンのコートも多分ショップかインスタグラムでですが少し刺し毛が長いタイプだと書いています。ピンクのコートの背中側の画像の裾の部分を見ると刺し毛が長いのがわかります。パショーネのコートも刺し毛が少し長いタイプですが、毛の癖が綺麗に取れているので、凄く綺麗なのが分かりますね。売り場でも知識の乏しい販売員がショートナップの良さだけ売り物にする場合がありますが、実はそうでもないのです。ショートナップももちろん素晴らしいのですが、サガミンクに見られる刺し毛の長いタイプも綺麗に作られると、それはそれで美しさが分かります。ショートナップにしても、刺し毛の長いタイプにしても、毛の癖がちゃんと取れてミンク本来の力が出れば綺麗なのです。

ここまでが、追加です。ここから下が元々の投稿になります。この下も読んでもらえると、より理解できるとおもいます。

 

以前、出店していた百貨店毛皮サロン在籍中、某有名ブランドFE???でお買い上げになられたコートのお直しをメーカー側がやれず、サロンに在籍していたリフォームの業者さんに依頼があり、そこでも出来ないといわれ、困って、私のところに持ち込まれたことがありました。

同じデザインを色違いで二点買われたようで、二点のお直しを同時に依頼されましたが、お直し自体は、なんで出来ないと断られたのだろうという程度のものでした。仕事を終えて、とりあえず写真を撮ったのです。

もちろん、作業中にも感じましたが、そのブランドが撮ったモデルが着用した画像や、ショップに飾ってあった時のイメージとはあまりにも落差があり、同じ仕様の同じデザインのコートなのに、芯の貼り方や最後の始末の仕方が違っていて、おそらくはイタリア国内で作っているのだろうと思われるのですが、作り方が違うということは、一つの工場で作ったのではなく外注加工で作られたものだと想像ができました。

普段は、よくそのブランドの店頭で見るくらいなので細かく作りまでは見ることが出来ませんでしたが、その時はじっくり見ることができ、もともとイタリアの毛皮そのものの基本的な加工技術(あくまで基本的な加工技術です)が繊細で綺麗だとは思ったことがなかったので、特に驚くことでもなかったのですが、それにしてもあの高級感のある売り場で見る印象とはだいぶ違うなと感じたものでした。正直、素材も作りも私が見る限りでは、少し残念な気がします。しかし、いつも発想は斬新です。それ故に惜しいな~と思うのです。元々海外ブランドの毛皮コートは素材の硬さや重さのあるものも多くあり国内の小柄な女性が着るには難しいと感じていました。

同じ皮系の素材として靴やバッグがありますが、どのブランドも、とても均一に高いレベルで作られていますが、毛皮は原皮一枚ごとの個体差が大きく、全てを均一に作るのはとても難しい素材です。国ごとに技術レベルも違いますが、それ以上に個々の技術者のレベルに大きくばらつきがあり、それが顕著にでる素材なのです。私のとこでも何度か外注加工を試みたのですが、仕上がりに納得がいかず結局自分で直すことが多く、その難しさをいつも感じ、外注に出すことを断念しています。

今日アップしたブランドのこのピンクのコートの何が一番残念かというと、染色時に起こる毛癖が付いたままの状態で作られています。細かい毛の癖ですが、これがこのコートが一番残念な部分です。モデルさんの髪の毛が寝ぐせが付いてたりしたら駄目なのと同じなのですが、ほとんどのケースで染色時に毛に強い癖が付きますが、これをなかなか完璧に綺麗に取り除くことが出来ません。もちろん私のところではできますが、やはり設備も技術も必要になります。癖を取るのに蒸気を使いますが、蒸気だけでは100%は取れません。熱をかけることのリスクもかかるので自信がないと出来ないのです。よくある毛皮用のスチーマーで7割くらいは取れますが、残りの30%の毛癖を取ることが見栄えとしては、より大事になります。そして大きなリスクもあり、一般的にはその三割を取るのを断念します。染色における熱と毛に染料を入れるために使われる薬品のによるダメージは厳しいのだと想像できます。

 

 

たかが毛癖なのですが、とても大事なところです、ここに某ブランドのコート画像とパショーネのコート画像を両方アップしますので、その僅かな違いが大きく仕上がりに影響することが分かってもらえると嬉しいです。

 

これ以外の画像は直接インスタグラムのリンクからみてください。

染色では色の濃い方が癖が強く出やすいのですが、下のリンクを見てもらえば毛の癖がしっかりとれることが確認できます。

 

以前、アップした染色時についた毛癖取りについての投稿もここにリンクを貼っておきますので見てください。

毛皮の染色後の毛癖取りと仕上げ

 

毛皮の原皮と商品の扱い方について

今日は、最初から謝ります。ブログはあくまでブログ用に記事を書くと、先日公言したばかりですが、今日はその約束を破ります。

理由は、どうしてもパショーネの商品に興味のある方には必ず読んでいただきたいからです。

 

インスタグラムにもアップしましたが、このブログにも今日はアップしようと思います。

インスタグラムのコメント欄を全部読む方は少ないと思いますから、そんな意味でここにもアップします。

ここから下がインスタグラムのコメントです。画像が見たい方はインスタグラムを見てください。https://www.instagram.com/passione.co.jp/  本日2021年8月19日の投稿です。

 

こんにちは。コメント最後まで読んでいただけると嬉しいです。今日は商品のアップではありません。でも、素材はまたチンチラです。もう飽きた!と言れるかもしれませんがチンチラの投稿が目的ではありません。

今日の画像のテーマは二つあります。チンチラの原皮が綺麗でボリューム感があることはもちろんのことですが、画像の二枚目三枚目にはもう一つの意図があります。

パショーネでは原皮や商品の取扱いには、かなり気をつかっています。

その理由は、今在庫としてある原皮や商品は、いつか買っていただくお客様からの、お預かり品のようなものだからです。

商品をショップで綺麗に展示することも大事です。しかし、展示によって蛍光灯の光で色焼けしたり退色したり、または汚れたりするリスクがあることを常に頭に入れておく必要があります。

原皮も同じように気を遣います。二枚目と三枚目画像のようにバンドルごとに黒い生地をかけて光や汚れから守ります。少量だから出来るのだろうとも言われるかもしれません。確かに専門の業者さんの扱う数量とは比較になりません。それでも総原皮枚数で言えば、千の単位は簡単に超えます。それを全て生地をかけて同じように管理するのは大変な作業です。それでも、将来のお客様のためにやらなければなりません。カバーをかけることが大変なのは、バンドルを見て、それが何の種類か、何色かが瞬時にわからないという不都合があるからです。でも、それは原皮のためではありませんよね。自分の作業が都合よく出来なくなるという、管理する側の自分都合から発生していることです。

パショーネが商品の魅力にこだわるのはあたりまえのことですが、商品や原皮そのものの扱いにも気を使います。毛皮を綺麗に飾ること、華やかに見せることも大事です。しかし、そこには常に商品や原皮そのものの価値が下がるというリスクを意識しなければなりません。クオリティが高いという意味は、そういう地味な部分もできて初めて言えることだと思って仕事をしています。自分の商品だからといって、香水をつけて毛皮の試着はありえません。でも、ちゃんとそこまで気をつけて毛皮商品と接していますか?私達は、私はあたりまえのことですが、デザイナーも香水は付けません。神経を使うということはそういうことです。繊細な仕事とはそういうものです。見えないところを何処までやるのかです。

 

以上、ここまでがインスタグラムのコメントです。

 

なかなか気を付けようと思っても、一般的には出来ていないことです。国内業者さんにも見受けられますが、海外などでは当たり前に床に原皮を置きます。私達は昨年4月まで日本橋にある某百貨店毛皮サロンに常設していましたが、常に、綺麗に見せることと飾ることのリスク(褪色・変色)との間で大きな葛藤がありました。今は、それはなくなったといっても、アトリエでお客様をお迎えするときに常に綺麗に商品を展示したかたちで置くのかどうかを悩みます。現在はオフシーズンなので全て保管状態になっていますが、シーズン中にはどうするかを考えなければなりません。

基本的にはラックにかけて一時的に展示したとしても、お客様に見せる瞬間以外はラックに黒い生地をかけての展示になるかと思います。

宝飾品のように磨けば戻るという素材ではありません。知れば知るほど扱いに神経を使います。

 

毛皮商品の色焼けにつきましては、また後日このブログでアップいたしますのでお待ちください。  長澤祐一

 

ブラックミンクと、その染色や仕上がりの特徴について

今日はブラックのミンクについて書いてみます。

黒のミンクで代表的なものの一番がアメリカ産のブラックグラマミンクでしょう。私はこの分野の専門家ではないですが、もしかしたら専門家が知らないことも伝えられるかもしれませんので、是非最後まで読んでみてください。

まず、ブラックグラマミンクについて書いてみます。産地については専門ではないので詳しくは書きません。知っている範囲で書くとすればアメリカ(北米)ですが、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ほぼブランド化してしまっているようです。一般的にはパールミンクとかパステルミンクのように色としての名前がありますが、ブラックグラマミンクは色の種類というよりは一つのブランドのようになっています。ナチュラルでここまで濃いミンクはおそらくないのでしょう。以前は軽く強化(黒くする)されているものもあったような気がしますが、最近のブラックグラマは本当に刺し毛が短くシルキーで綺麗です。しかし、ブラックグラマミンクは黒ではないのです。離れてみるとほぼ黒にみえますが、基本的に真っ黒という毛皮はいません。茶を思いっきり濃くしたダークという色がありますが、それをさらに濃くして刺し毛が綿毛に埋まってしまうくらい短くなったものです。ショートナップとよく言われますが、ブラックグラマミンクのそれは他のものとはまったく違うといえます。もちろん生産者ごとに品質の差はあるようですが、他の色のミンクのショートナップとは違います。私のインスタグラムでもdixonminkさんというアカウントがあり、よくDMでもやり取りをしますが、素晴らしいミンク生産者です。私のもつ在庫に素晴らしく綺麗なブラックグラマミンクがありますが、それが彼が生産したものかはわからないのです。でも、私の持っているものも素晴らしく綺麗です。

次に染めてあるミンクについて少しだけ説明します。

よく私のオンラインショップの商品にも強化という説明書きがあります。出来るだけ解りやすく説明すると強化とは、漢字で見てわかるように強調するとか強めるとかになります。例えば、ダークミンクを黒に近づけるための処方になります。ですから、薄い色のミンクからは強化では黒くはなりません。元々濃いダークやデミバフミンクを強化することで黒に近づけるということです。ですから、色の濃いダークに比べて少し薄いデミバフミンクだと、強めの強化をするようですが、色をよく見ると少しだけブラウン系の色なのが分かります。良くミンクにブルーイングすると言いますが、これも同じく青味を付けるとか青味を強調するとかの意味になります。ホワイトミンクをより白く見せるためにホワイトニングするとも言われます。全てが同じ系統の薬品を使うかは私は分かりませんが、相対的に見て強調するという意味です。

ブラックに戻ります。黒くする方法に二種類あり、一つは染色です。一般的には染色は酸性染料を使うと言われています。
しかし、強化とは、酸化染料を使っているそうです。染色は確かではありませんが、50??度前後のお湯のなかで染めるらしいです。温度を上げると綺麗に色が定着するらしいですが、皮を痛めてしまうことがあり、とても難しい作業のようです。酸化染料は水の中で色を付けると聞きます。酸化染料の一番わかりやすいのは人間が使う髪染めのなかに、よく最初はクリーム色していて、空気中の酸素に触れて黒く発色するものがありますが、あれが酸化染料です。毛皮の場合は鞣し工程のなかで水の中に毛皮を入れて強化するのだと思いますが空気中の酸素ではなく水のなかで染料が酸化発色しミンクの毛を変化させるということらしく、その分真っ黒にはなりにくいと言われています。だから強化なのかもしれませんね。

 

この強化のメリットは染色のようにお湯につけずに色を付けることができるためにクロム鞣しという処理をせず、通常のドレッシングという鞣し工程の過程で色を強化することができ、仕上がった皮が染色にくらべて柔らかく仕上がるというのが最大の特徴です。

ただ、この強化だと黒っぽくはなるのですが、真っ黒にはなりません。よく見ると濃いブラウンです。これをブラック強化と一般的には言われています。

さらに、酸化染料で染める方法がもうひとつあります。染色工場でやる方法です。上のほうでも書きましたが、これは水のなかではなくクロム鞣しをして、耐熱の皮にしてからお湯の中で染める方法です。これは同じ酸化でも、真っ黒に染めることが出来ます。その代わり少し皮が固くなったり皮の伸びが悪くなったりします。ブラック強化と一長一短の特徴があり、用途によって使い分けるしかありません。

それから、一般的には黒は染色工場さんでも酸化染料で染めるようですが、皮が固くなるのを嫌い私は酸性染料で染めてもらっています。これは通常の赤や青のような染料で染めるようです。もちろん黒という酸性染料があるのかは分かりません。調合して黒にしているのかもしれないのですが、私は刈毛用として酸性染料の黒染を依頼していました。
その理由は、刺し毛が綿毛に比べ染まりにくく、どうしても綿毛は黒になるのですが、刺し毛が黒になりません。グリーンっぽくなったりします。黒の染料が三原色を均等に合わせて作るからなのかどうかは不明ですが、わずかなバランスでグリーンっぽくなったり他の色が出てしまいやすいのです。そのために刺し毛をカットしてしまう刈毛でしか酸性染料では染めません。黒染めの酸性染料染めが何故いいかは、皮が酸化染料の染色よりも柔らかく仕上がることが私にはとてもメリットがありました。当時の担当者さんには苦労をかけたようですが、それでも仕上がりが柔らかいということには代えられませんでした。

ちなみに酸化染料で染めたブラックは皮は硬くなりがちですが、しっかりとドライクリーニングをすれば柔らかさはでます。
さらに、酸性染料で染めたミンクの刺し毛がグリーンっぽくなったりしましたが、酸化染料で染めたミンクの刺し毛はちゃんと黒になりやすいという結果が出ています。酸化染料自体が三原色を組み合わせた染料ではなく詳しくは分かりませんが薬品に近いのかもしれません。間違っていたらごめんなさい。

毛皮のブラック染色とブラック強化の説明は私が知る限りでは以上です。強化そのものの意味がよく分かりにくいことと、酸化と酸性染料の違いなど染色方法で皮の柔らかさや色の出かたが違うことなど、とても複雑で分かりにくいですね。

今回のことについても、あくまで私の感性で感じたことなので、他のひとが同じように感じるかどうかはわからないのです。

そして、手法の説明も完璧ではないはずです。しかしひとつ言えることは、仕上がった結果に対する説明に関しましては絶対の自信をもって書いています。そこだけご理解いただき信頼してもらえると嬉しいです。    長澤 祐一

原皮のラベル 他人が決めた価値に頼るという違和感

以前から疑問に思っていたことですが、最近また気になったことがありましたので書いて見ます。
毛皮の素材表示または素材のタグ、例えばサガファー(sagafurs)やコペンハーゲンファー(kopenhagenfur)の各種タグがあります。ロシアンセーブルなどで言えばSOBOLのラベルなどです。

私のところも以前は付けていました。sagaロイヤルやコペンハーゲンのラベルのようなものを。
しかし、今は付けていません。それは、そのラベルに絶対的な信憑性がないからです。ラベルは原皮一枚ごとに付けるわけにもいきませんから、最終的には原皮屋さん、加工屋さん、販売店の良心に依存します。最後、商品になったら誰もわからないのが現実です。かすかに言えるとすれば原皮を良く知る人ならば、これはこのクラスのものだろうと推測で判断が出来るということだけです。
タグがなくてもすぐわかるとすれば、ほんとのトップクラスのブラックグラマミンクや生産者が特定しやすいマーブルミンクくらいだと思います。

にも関わらず、販売側は一生懸命に、素材ラベルを気にし、それをことさらアピールします。今も時々、毛皮小売店のサイトで見ます。何故、自分の評価でお客様に薦めることをしないんだろうといつも思います。自分が見た、感じた評価ではなく他人か決めた価値感にその評価を委ねる。なにか違うなといつも思います。

ひとつ付け加えますが、実際にどうやって原皮とラベルが一致されて原皮屋さんに供給されるのかは私には当事者ではないので解りませんが、実際の原皮とラベルの品質が一致しないというのはオークション会社の問題ではないのかもしれません。その原皮とラベルの取り扱いをする段階での問題のように感じます。しかし、上で書きましたが原皮一枚一枚にラベルを付けるわけにはいきませんのでどうしようもないのです。原皮屋さんが適切に原皮とラベルを提供したとしても、末端の制作段階において原皮が他のものと混ざらないという保証もなく、加工段階で意図的に差し替えられることも可能性がないわけでもありません。最終的には毛皮を扱う業者がすべて良心的であるということを祈るしかないのです。
ただ、それは難しく感じます。

私のところでは、原皮はそれぞれ自分で価値を決めて使います。あまり他人が決めた価値には拘りません。あくまで使う原皮と作る商材が求めているものを一致させることを優先しています。余程のことがない限りはラベルは付けません。例えば、 ブラックグラマのような特殊なものは付けますが、実際、そのラベルが原皮のロットのものかは判別できませんし、なんとなく矛盾を感じながら仕方なく付けています。

例えばロシアンセーブルなどのSOBOLラベルも、正確ではないかもしれませんが、聞くところによると1バンドル50枚に一枚付くとも言われています。しかし、現実には4枚使用のショールなどにも必ず付きます。実際、私も付けます。セーブルを買っている量もそこそこあれば、欲しいといえばもらえます。逆に言うと普段はセーブルを買ってもラベルは付いてきません。

なんとなく不安を煽るようですが、そうではありません。一般的なものを不安なく買うという意味ではラベルは大切です。さらに最近よく言われているトレーサビリティ・跡をたどるという意味でも大切です。ただ、さらに今以上の商品を買おうとするならばラベルを気にすることよりも、毛皮そのものを今以上に知る必要があるのと、買う相手をしっかりと選別する必要があるということです。品質を証明するラベルがついていることをことさら強調する売り場が仮にあるとすれば、一度少しだけ疑ってみても良いかもしれません。

私のブログは販売業者さんもみていると思いますので付け加えますが、これを読んでカチンとくるか、これを読んでなるほどと思うかは、その人次第で、出来れば良く受け止めてもらい、それぞれが毛皮という本当に解りにくい商材の信頼性をラベル以外の方法も含めて高めていくことに努めてもらえればと祈ります。

極端な話ですが、某超ビッグブランドのFEN??がコートの品質を保証するためにわざわざ原皮のラベルを付けていますか?そんなことはないですよね。私が知る限りではありませんでした。時期によって変わるのか商品によって変わるのかはわかりません。素材ラベルを付けないのは、品質やブランド力に自信があるからなのでしょう。当然のことです。でも、それは知名度があるから余計なラベルを付ける必要がないわけでわなく商品に対する自信からなのだと私は思います。きっと、創業当初で知名度がない時代であっても自分のブランドタグ以外に余計なラベルを付けることはなかったのだろうと、それが自分のブランドに対する自信や良いものを作っているという意識からくるものであって、今のようにビッグブランドになったからではないのではと感じます。

私のところがそれと一緒とは言いません。しかし、自社ブランドへの誇りと商品に対する思いは同じなのです。そんなこともありPASSIONEでは他人のつけた価値に頼るようなラベルは一部のもの以外は付けていません。

以前、某百貨店時代に、お客様からオーダーを受けて、PASSIONEブランドラベルを付けないでくれと言われたことがあります。きっと無名の私達のラベルを付けるのを恥ずかしいと感じられたのかもしれません。百貨店側のお客様なので当然指示に従いましたが、当時、悔しい思いをした記憶があります。お一人だけでしたが、そんなことも過去にはありました。

だからといって、他人が決めた価値に頼って、曖昧な原皮のラベルを付けようとは思わないのです。
書きたいことはまだまだありますが、今日はこのへんで止めておきます。

もしも、お客様として今回の記事を読まれるのであれば、きっといつかお役に立てると思う記事ですので、原皮のラベルにおける諸事情は記憶に留めておいていただければと思います。      長澤祐一

ミンクは毛が短いほうが価値があるという誤解

ミンクは毛が短いほうが価値があるという誤解。この記事は当社オンラインショップの昨日のニュースに投稿したものですが、結構知らないひとが多いので、ここにも載せてみます。画像はここには載せませんので、是非ショップのニュースで見てください。

一般的にいうとミンクは毛が短いほうが価値があると言われています。ただ、この短いという意味には、いくつか誤解があります。いわゆるショートナップといわれるアメリカンミンクのようなタイプのミンクの本当の意味は毛が単純に短いということではありません。ショートナップの本来の意味は綿毛に対して刺し毛の飛び出す長さが、とても短いという意味です。一般的にサガミンクは綿毛から飛び出す刺し毛の長さが長いとされていますが、最近ではヨーロッパのミンクもコペンハーゲンファーのようにアメリカンタイプのように刺し毛が短いものが多くなりつつあります。
しかし、フェンディのようにヨーロッパ系のブランドの多くはアメリカンタイプの刺し毛の短いタイプではなくサガミンクのようにすごく長い毛のミンクを好んで使っています。アメリカンタイプのシルキーといわれるものよりも毛が長く、より毛皮らしいものを好んで使います。一度フェンディのショップにでも行って見てみると、それが良く分かります。今回のこのウィスパーピンクのボレロも毛が長いタイプを使っています。写真でも解るように拡大して撮ってある写真がありますので前回アップしたダスクブルーボレロと比べてみてください。毛皮を少し知ったひとはショートナップをことさら良いと思い込んでいますが、実はフェンディはミンクについては真逆のスタンスを取っています。フェンディの発症の地がイタリアであるためにヨーロッパ系のミンクを好んで使うのかは分かりませんが、そういう事実があるということも認識したうえでショートナップについて話す必要があります。

ここまでがニュースで書いたことですが、少し付け加えようと思います。ショートナップの意味は上で書きましたが、このブログでも以前書いています。それ以外で書いてないものというと、綿毛と刺し毛も含めた全体の毛の長さです。ショートナップという基準でいえば、やはりアメリカンミンクの最高ランクのものには敵いません。特にブラックグラマ系のミンクのほんとうに綺麗なものは刺し毛も綿毛もほとんど同じくらいの長さになります。このクラスは一般のひとは、おそらくですがほとんど見ることはないと思います。

デンマークのミンクも素晴らしいのですが、さすがにこの最高ランクのブラックグラマミンクには敵いません。私が、敢えてデンマークのミンクとアメリカのミンクのわずかな違いを言うとすれば、他の業者のひとは感じないと思いますが、綿毛が長いと感じます。その分、触り心地は、ふっくらとした柔らかなボリューム感があり刺し毛はアメリカほど短くはないのですが、触り心地はアメリカと同じように心地よいのです。まあ、これは実際に業者の方が触ってみたくらいではわからないくらいの差ですが。私は実際に色を合わせたり、お尻同士や、腹同士を縫い合わせたりしますので、必ず、綿毛の長さをミリ単位で測ります。その結果はミンクの個体差はあるとはいえ、相対的には上に記載したようにデンマークのミンクのほうが少しだけ綿毛が長いと感じます。

フェンディも長い刺し毛の長いタイプだけを使っているというわけではありません。時々ショートナップのものを使っているときもありますが、相対的にいうと長い毛足のあるものを多くつかっているような気がします。短い毛のミンクも時々見受けられますが、アメリカンミンクのような超ショートナップのものは、私は見たことがないのです。某百貨店時代に毛皮サロンのそばにフェンディがありましたので、よく見に行ったことがあり、店長から顔を覚えられてしまい嫌味をいわれたことがあります。💦 フェンディの商品については、また別の機会に書いてみます。

毛皮の中でも、オスとメスの区別やサイズの細かい区別、さらには色の種類、毛の長さ、、、というように、ここまで細かく区別されている毛皮素材はとても珍しく、だからこそ細かい知識が必要になるのです。

今日はこれくらいでやめておきます。

長澤祐一

 

ブラックグラマミンクのショートナップ

 

毛皮の逸品とは?

今日は毛皮の逸品という言葉の意味について書いてみます。ネット検索すると「逸品」すぐれた品(しな)。絶品。とあります。他の商品については私は解りませんし書くつもりもありませんが、毛皮なら書く事ができます。

最近、よく逸品会というものが各小売店でありますが、毛皮の逸品とは?果たして何を示すのかという疑問をよく持ちます。大半が中国で作られた毛皮製品、一部に海外ブランド、一般の人があまり聞いたことのないインポートものという大きな枠で括られた商品群。

一般の国内毛皮加工が海外品から大きく劣るという国内事情もあり、中国産やヨーロッパ製品で決して抜群に綺麗なとどは言えないものでも逸品として陳列するしかなく、しかも、値段がより高額なものが逸品だと認識されているこの業界のなかでは正直、目もあてられない現状があります。

例えば、牛肉のなかでも一般の牛肉と、逸品と言われる牛肉があり、それは毛皮に置き換えれば、ミンクでも、チンチラでも、セーブルでも、リンクスキャットでも、とても逸品と言えないものもあれば、うぁ~綺麗!! デザインも最高! と思わず感動してしまうようなものがあるということです。リンクスキャットだからセーブルだからと一括りにして逸品と扱うのは、完全な売る側の勉強不足なのです。

ミンクでも、例えチンチラの小物でも、圧倒的に優れた素材や作りの違いがあるものが逸品と呼ぶのに相応しいのであって、素材が高ければ、値段が高ければ ”糞でも味噌でも”逸品というのは売る側にも問題があるような気がします。

逸品会等のカタログに出ているもののなかで、おっ、これは、ほんとうに逸品なのか?と目を疑うものもあり、その出品されているものを良く知っていると、そう感じるものがあります。そんなものが出ていると、知らない他の商材にも疑問を持ったりもします。ただ、ひとつ商材を揃える側に立って理解するところがあるとすれば、厳密に逸品しか出さないと言ってしまうと出展する商材がほんとうに限られてしまうという現実もあることもよく理解できるのです。しかし、こと毛皮という商材に限れば、疑問は大きく残ります。

毛皮の話に戻りますが、一般のお客様はリンクスキャット、セーブル、、、と聞くと、すごい、高い、というようなイメージを持たれるかと思います。しかし、リンクスキャットやセーブルでもピンキリなのです。ボリューム、毛質、色、腑の綺麗さ等でランクが別れ、さらに、作り方でも大きく品質が変わります。腹だけを使って作られる真っ白いリンクスキャットのベリーでさえも、ろくでもない商品はたくさんありますし、ネットでは十把一絡げでセーブルやチンチラを扱われていますが、本来の価値はそれぞれに大きく差があるのです。

今日はこれ以上書くと、いろいろと支障がでますので、いつもよりも短いですが、ここまでで止めておきます。書き出すと止まらなくなりますから。(笑)

今日の写真は、最近インスタグラム(Instagram)を始めて、私が綺麗と思う写真をアップしていますが、その中のいくつかを載せてみます。

一番上の1枚は チンチラカフスセット(マグネットでマフラーにも使えるタイプ)の写真です。

よく、このブログで背中心を正確に出すことや腹のラインを正確にチェックすることなどを書いていますが、このチンチラをよく見ていただければ、背中の黒い部分の分量や白い腹の分量が正確に左右に別れていることがわかりますね。

そして、写真で見ても、デンマーク産の最高ランクのチンチラの良さが解ります。ちなみにこれはブラックベルベットタイプではありません。それでも、これだけ白、グレー、黒がはっきりしていて、まさしくこれが逸品なのです。腐ったセーブル、チンチラ、リンクスキャットは逸品ではありません。

もう一枚は、見て解りますが、写真からも、その毛のシルキーさが伝わるような黒染めのチンチラです。チンチラブラック染めは、どうしてもチンチラの毛のウエーブが染色工程で伸びでしまいボリュームが落ちます。

そのため、デンマーク産のものでも、さらに選び込まれたボリュームのある原皮を選ばなければなりません。写真でも黒の沈み込むような黒さと毛の横面に光があった部分でチンチラの立体感が出ていますね。これも、間違いなく逸品なのです。逸品だからと言って、価格の高さや雰囲気に踊らされることのない購入が望まれるところです。

長澤祐一

 

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