Russian sable fur coat (heavy silvery)

ロシアン・セーブル・ヘビー・シルバリー(Russian sable fur coat heavy silvery)の作り

今日は、昨年作ったセーブルコートの作りの一部分をテーマに書いてみます。素材は大変珍しいワイルド3番色のヘビーシルバリーです。青味があってとても綺麗ですね。

ワイルドセーブルの加工で難しい作業のなかのひとつがアゴの部分の黄色く毛の悪い部分をどう取り除くかです。ファームセーブルにはアゴの黄色い部分が少なく綺麗で、ワイルドは多いからです。

しかし、ただカットするだけなら簡単なのですが、写真のようにキャラクター(背筋の黒い部分)が浮き上がるように作らなければなりません。

ということは、接ぎ合わせる原皮の色、毛丈、雰囲気、すべてが綺麗に合わないとキャラクターが浮き上がるようには見えてこなく、原皮一本ごとに見えてしまいます。それでは、綺麗に見えないのです。

前足から下の毛の長い部分は以外に綺麗に合いやすいのですが、アゴをカットした頭の部分は、接ぎ合わせるセーブル同士の雰囲気をすべてぴったりに合わせなければなりません。

しかし、お作りになられていらっしゃる方にはお分かりだと思いますが、ワイルドでぴったり合う原皮なんでないのです。合わない原皮を目の錯覚を利用して、わずかに色をずらして行くしかありません。

そして、その微妙に色が変化していくことが、毛皮の魅力でもあり、天然素材の強みなのです。しかし、つい、時間を惜しんで、つながりのない、色合わせをしてしまうと、いい原皮を使っても、感動するような仕上がりにはなりません。技量と、気力が試されるところです。

セーブルのつくりの難しさ

Russian_sable _fur_coat_heavy silvery

上の(画像)は背中の中心くらいから右の肩、そして右の前身頃へと、繋がっている部分です。もちろん、前身頃と後ろ身頃の肩はカットして縫ってあります。でも、綺麗に繋がって見えていて、接いであるのがわかりませんね。

簡単そうですが、かなり難しい部分です。アゴの黄色い部分もすべてカットしてありますが、黄色い部分をカットすれば、うまくいくのか?? いえ、そうではありません。ここは頭から前足に向かって毛が流れていて、毛の長さが大きく変化するところですので、わずかにカットしただけて毛の長さが変化します。

そのため、左右の原皮の毛の長さと色をしっかり見ながら、落としていきます。さらに、アゴの黄色い部分が落ちても、わずかに黄色い刺し毛が残る部分もあり、そこが、左右の原皮同士でぶつかり合うと、やはり、綺麗に見えません。

しかし、カットし過ぎると、もう後戻りすることは出来なくなるので、ほんとうに左右の毛を見ながら何度もチェックして、場合によっては、縫い目を大きくして試し縫いをしてでも、確認をしていきます。

このセーブルの前足から上の頭の部分が綺麗に作れれば、全体のなかでかなりの部分をクリアしたことになり、ほんとうにホッと安心できる瞬間なのです。

最後にひとつ、誤解があると困るので書いておきますが、ファームはアゴがワイルドに比べて綺麗だから、、、、と言いましたが、だからといって、アゴを使っていいとは言っていません。よくミンクを作るように、セーブルのアゴを全部使って作られているコートがあります。世にあるコートの6割くらいはそうですね。この作りは正しくはありません。

セーブルコートの背中はミンクのように、原皮の頭がかまぼこ型のように、凹凸があるようにはつくりません。ほぼ、フラットに作るのが基本です。

ミンクを作っている職人さんが、なにも知らずにセーブルも作ると、こうなるのかもしれませんが、セーブルのアゴが入っているコートに価値などありませんから。ここはきっちり言っておきます。

海外で作られた有名なセーブルコートでもアゴの落とし加減は職人さんによって多少は違いがあります。

ロイヤルクラウンセーブルやインペリアルセーブル、ビスカルディ、、、いろいろありますが、インペリアルセーブルのものが、やはり素晴らしい仕上がりです。マーティンパスウォールの抜けたロイヤルクラウンセーブルの作りは、残念ながら落ちています。ビスカルディのものを見ましたが、インペリアルセーブルほどではないですが、そこそこ綺麗にアゴは落ちて良い仕上がりでした。

ファームで作ったコートの背中をいつか、おみせしますが、やはり、ワイルドと同じようにアゴは綺麗に落とします。ファームだから簡単でワイルドだから難しいという訳ではありません。

強いて言えば、養殖のファームセーブルのほうが色が合いやすいので、わずかにつくりやすいかもしれませんが、決して手を抜けるものではありません。この、背中、肩周り、前身頃の部分の毛合わせは命懸けの勝負に近いものがあります。ファームだから手が抜けるということではありません。誤解のないよう、お願いします。

次回は、ロシアン・セーブル・ヘビー・シルバリーの「えりの作り」について書いてみます。

長澤祐一

にほんブログ村 ファッションブログ オーダーメードへ
ファッションブログランキング