なぜクリーニングを通常の仕事としてやらないか?

当社は、おそらくですが、どこよりも毛皮と毛皮のクリーニングを知っていて、どこよりも綺麗な商品を作ることが出来ると自負しています。よく毛皮の知識と言っても、産地や種類をたくさん知っていらっしゃる専門家はたくさんいらっしゃいます。しかし、それと毛皮の商品としての高い品質がどうあるべきかを知るということとは別の問題になります。

今日はクリーニングの話なのに、いきなりおかしな書き出しですが、毛皮を作り販売し、クリーニング・保管をするということは、かなり広範囲でさらに素材についても深く知る必要があります。素材といっても、ラビットとかからどんなものでも深く知る必要があるという訳ではありません。販売されている商品のなかでも、素材価値の高いミンクやチンチラ、セーブル、ロシブロ、アーミン等の知識については、より深く知る必要があります。その理由は高額品を預かるというリスクが高くなるからです。

当社は仕事として商品を作り販売するだけではなく、販売した商品のクリーニングや保管も考えなければなりません。

やっと本題に入りますが、当社がクリーニングを本業にしない理由があります。もちろん、パショーネのメインの仕事が商品を作り販売することですが、販売した商品のアフターとしてクリーニングや場合によっては保管をしたりもいたします。それから未来のお客様のためのクリーニングもあります。

しかし、クリーニングは本業ではないのです。その理由のひとつとして、一般的に知られていませんが、古い毛皮コートや小物の多くは保管状態の悪さから、カビや香水の匂い、さらにはダニや毛皮に良く付く虫もいます。リフォーム時によく身体がかゆくなることがありますが、おそらくダニかなにかの虫がいると想像がつきます。

毛皮のリフォームを当社も時々受けますが、そのすべてを裏地・付属等を外した状態でオガを使いながらのドライクリーニングを一番最初にします。これによって匂いやカビ、ダニや虫の大半の駆除をして、自社商品やお預かり品への匂い移りやカビや虫が付くことを防ぎます。

しかし、ビジネスとして大量にクリーニングをやるとなると当然、当社の商品在庫や大切なお客様からのお預かり品にも、クリーニングでお預かりした古いコートなどから匂いやダニ、虫等がつくリスクが高くなるのです。そのため、大量にクリーニングを受けることはありません。今日のタイトルの理由がこれです。

 

そんなこともあり、クリーニングにつきましては、当社の技術の高さを知ってもらうためにやることがメインでクリーニングやお直しが専業ではありません。どんなにクリーニング技術が高くても、どんどんクリーニングを受けるということはないのです。

お問い合わせいただき、内容を聞いて、私のところでしか出来ないと思うものは極力やろうとしています。しかし、何でもかんでも受けるという訳ではありません。

当然ですが、私のところで販売したものは全てが毎年ではないにしてもクリーニングをいたしますので、常にクリーンな状態をキープしています。そのためクリーニングでお預かりしてもほとんど他のコートに強い匂いを移したりカビ臭さを移したりすることはありません。しかし、当社以外の商品を受け入れるのは、未知の部分が多く大量に受け入れることはリスクが大き過ぎて出来ないのです。逆に言うと、それくらい当社の商品とその購入後のお客様の商品のクリーニング時の取り扱いについては神経を使っているということです。

せっかく購入していただいたものが、カビ臭かったり、虫が付いたりしたら、どんなに価値があると信じて購入していただいても意味がないからです。

最後にひとつ付け加えますが、販売前の毛皮製品がどんな扱いで保管されているかというと、そんなに良い環境ではありません。そこそこ大きな部屋で大量にストックするわけですから、しかも一点ずつカバーをかけたりしないのが普通です。もう少し大事に扱えばいいのにと良く感じています。  長澤 祐一