モデリストI氏のいうの技術とテクニック違い

今日は前回のブログ記事に出てきたモデリストというテーマで書いてみます。私が本当にモデリストと尊敬するのは、以前、HBというアパレルの会社に在籍し、その才能が生かしきれないまま、今は退社されたI氏という方です。

私が毛皮をアルバイトで始めたころの30年くらい前のことです。彼はHBという会社を辞めて一時的に毛皮を勉強してみようとされていて、私が働いていた加工会社に入社してきました。その後、私も、その会社を辞めI氏も辞め、I氏は毛皮で一時独立をされました。私は、別のところでお弟子さんとして一時働き、その頃に、彼のところに、度々お邪魔して、仕事のやり方、考え方、彼の哲学も学びました。

I氏氏はそんなことは記憶にないでしょうが、私は必死に何かをつかもう、盗もうとしていたのを今も思い出します。

当時、彼の元で作業をして、今でも、印象に残っている言葉は、  めんどくさいということに慣れたおしまいだ、面倒くさいと思うなら簡単に出来る方法を考えろ  さらに、こうも言いました。技術とテクニックは違うと、、、 私は聴いた時、技術とテクニック?? 同じでは? と思いましたが、I氏が言ったのは技術とは会社に蓄積していくものであり、会社の中の誰でもが使えて、人が変わっても品質が変わることがなく続いていくものだと。テクニックは個人の技で、その人が辞めてしまえば、企業には何も残らないというものだ。それは技術とは言わない、、、と、厳しい口調で言い放ちました。だから、人が変わっても品質が変わらない技術というものを考えていかなければ考える意味がない。と熱い口調で語り続けていたのを今も思い出します。

その後20年以上もお会いすることがなく、三年前程に、また古巣に戻っていらっしゃるということを聞いて、直接、HB社に電話を入れて連絡がとれましたが、丁度退社する直前で、あ~~せっかく戻っても、また彼の大きな能力を使いこなすことができずに退社されるのかと思いました。

I氏は各方面でも、派手な知名度や活躍はされていませんでしたが、会ったかたは、おそらくほとんどの方が彼の能力の高さを認めていたのだろうと私は確信しています。モデリスト協会というのがあるらしく、そこに誘われたと言っていましたが、あまり興味もなく入ることはなかったそうです。私は、I氏こそがモデリストと呼んでまちがいのない高い能力を持っていたと今も確信しています。

最近、どこかの毛皮業者のサイトにて、女性の方でしたが(女性だからという訳ではありません)ファーモデリストとサイトに紹介されていて、おいおい、そんな簡単にモデリストという名前を使うな、、、と、苦笑いしたものです。私も長年、この仕事を学んでいますが、いまだ毛皮の分野においてさえも、I氏のレベルに達したとはいえず、道は深いと技術を知れば知る程、余計に不安にかられます。それほど、あまり一般には知名度のないモデリストという言葉ですが、その意味は広く深く、そして価値があるのです。

技術とテクニック、私にとってはI氏からいただいた永遠のテーマ。このテーマこそがパショーネの哲学である、あたりまえのことをあたりまえにこなすという思想につながっているのだと思っています。

下記の日本モデリスト協会のリンクにモデリストの定義らしきものが書いてあります。
http://ifashion.co.jp/jnma/modelist/background.html

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