毛皮で一番軽い素材は? 

毛皮で一番軽い素材は?という検索で入ってくることが多いので、今日は昨日徹夜して納品したアーミンについて書いてみます。

今回の作りのテーマはとにかく軽く柔らかくです。このことで一番問題になるのは軽く柔らかくすることと、形を綺麗に表現することを同時に行わなければならないことです。一般的にアーミンの作りは、他社ではアーミンの皮が薄く切れやすいと理解されているらしく、毛皮と裏地の間に一枚の薄い芯を抱かしています。もちろん、前芯やその他の芯もしっかり使って仕上げています。

そのためにせっかくの軽く薄い皮の利点が表現されずにいます。結局は、作る技術者と求めるお客様との接点がないために、技術者は皮が切れるリスクを避けたり、形が崩れるリスクをさけたりして、無駄な芯を貼ってしまいます。しかし、お客様がアーミンに求める姿は、あの軽さと柔らかさを映画でみる女優のように着こなしたいと、そう思っているように私は思います。

今回の依頼者も同じ思いでいらっしゃったこともあり、ほんとうに軽く柔らかく、さらにシルエットも思うように、、、を実現しようと作り出しました。

最初に、考えたことは皮の脂の問題です。確かになめしあがりで入ってきた脂は一見、柔らかく見えます。しかし、鞣し上がりで使われた脂は私たちが使う界面活性剤のような脂ではなくグリスのような脂を皮に叩き付けながら加えていきますので、簡単には脱脂できません。これは業者さんにお願いしなければなりませんので出すことにしました。

仕上がってきた状態は、同じ柔らかさでも、鞣し上がりで入ってきた脂の柔らかさとべたつく柔らかさとはまったく違い、サラサラ、カラカラというような皮の状態になっています。ここで大事はことは脂を抜くことで形が補強芯を使わなくても良い状態になりやすいのです。鞣し上がりに入ってきた脂が入った状態は、柔らかいのですが、それは皮を鞣すことをビジネスとしている人たちと、それを依頼した原皮屋さんやメーカーとの間で認識される柔らかさであり、お客様が求める本来の柔らかさではありません。

鞣し上がりで柔らかいと言われるのは、皮を引っ張ったときに、ぶにゃっという柔らかさで、ドライがかかった、からっとかサラサラといった感じではありません。しかし、鞣し屋さんは、この鞣しかたを一般的にはします。その理由は仕事を出す側が本来のお客様が求める柔らかさを理解出来てないケースが多く、鞣し業者さんも、どちらが良いかわかっていても、あえてリスクをさけ、お客様の本来求める柔らかさを理解していない仕事を出す側(お金を支払う側)の求める仕上がりにしてしまうのです。

話がそれました。柔らかさのことを書き出すと止まりません。

ひとつだけ、理解しやすいように伝えます。脂の入った柔らかさは、皮を引っ張ると、確かに柔らかく伸びます。しかし、引っ張られた皮はそのまま戻りません。脱脂された皮は引っ張っても、すぐに戻ります。これが型崩れを防ぎます。逆にいうと、脂が入った皮は、補強材を使うか、糊を使って固定しないかぎり、伸びたらそのままになりやすいのです。

今回の作りに話を戻します。

毛皮の加工の途中では必ず水を使います。ドライをした毛皮は 脱脂した分、紙のようにパリパリと音を立てるような状態になります。これは水以外のアルコールなどを使ってもおなじです。

この状態でコートにはなりませんので、加工段階で柔軟剤を使います。使う量や加え方は、都度変化し、難しいですが、この方法が一番効果的です。

一つ注意点は私たちが使う柔軟剤にも二つタイプがあります。べたつくものとさらっと仕上がる二つのものです。私はリンスに入っている、ウールなどを柔らかくする成分。多分、なんとか?メチコンという名前だったと思いますが、そんなものから、洗濯用の柔軟剤、毛皮用もふくめて、たくさんのものを試しました。洗濯用にも、二種類ありべたつくものとさらっと仕上がるものの二つのタイプがあり、毛皮用も同じでした。おそらく成分は洗濯用も毛皮用もほぼ同じで、香料をつけて売っているのは洗濯用なのではと、使いながら思いました。

この柔軟剤のさらっとしたタイプを私はよく使いますが、今回もこれを使いパリパリしたような皮の状態を本来のさらっとした柔らかさに戻すことが出来ました。

これで、形も崩れずにさらっとしあがり、無駄な補強材や芯も使わずに仕上げることができます。そして、お客様にもとても喜んでいただくことが出来、徹夜した疲れも癒すこともできました。

今回の作ったのは短いコートでしたが、65cm着丈で重さが580グラムで仕上がりましたが、ひとつアーミンについて誤解があるようにおもわれますので伝えます。一般的にはアーミンは薄く切れやすい素材と思われがちですが、実際は紙のように薄い素材の割りには、良いなめしがされたものは繊維のからみもしっかりしていて引っ張っても簡単には切れません。同じような薄い毛皮の、アーミンより少し厚いウィーゼルやチンチラに比べれば圧倒的に強度はあります。アーミンを見る機会がありましたら、是非、そんなことを思いながら触ってみてください。

次回はアーミンの一般的な作りかたと、私たちの作り方の違いを書いてみます。

写真は今回のものは朝仕上がってそのまま納品になりましたので撮る時間がなく、参考までに別の写真を載せますので見てください。薄いアプリコットブランディーという色の染色ですが、このクラスの色はほぼ真っ白の価格の高いアーミンを使わないと、この色はでません。一般的には価格の安い黄ばみの強いアーミンを染色には使いますが、これは真っ白のアーミンを使っています。

長澤

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