小さくてもファーブランドとして生きる

今日は、小さくてもファーブランドとして生きる、、、というタイトルですね。

パショーネの元は毛皮を純粋に作るところから始まっています。

20年以上前は、少しだけ小売店等にも卸したりしていましたが、その後一昨年まで20年くらいいた百貨店の毛皮サロンに常設しパショーネブランドを前面に押し出した販売をしてきました。一昨年、その百貨店をやめたことを機に、昨年4月にオンラインショップを立上げたのですが、それでも、小売店という意識は、まったくありません。

かと言って、どこかに卸して、よりたくさんの商品を売るというようなことも考えていないのです。これまでもOEMも含め、国内某ブランドからのお誘いや各方面からのお誘いもあったりと、いろいろありましたが何処かに卸すとか、他の販売ルートを考えるとかは、一切ありませんでした。

それは、パショーネとしてのブランド価値を頑なに守ることが、すべてにおいて優先してきたからです。規模の大小は関係ありません。

そういう意味ではパショーネは一般的な小売店ではないのです。

オンラインショップやアトリエに併設した商品をお見せする場所もありますが、決して小売店ではありません。

小さくてもファーメーカーもしくはファーブランドとして存在しようとしています。そしてその商品提供の窓口が、アトリエに併設した接客スペースであったりオンラインショップだったりしています。

一般的に、小売店なら何を売っても成り立つのです。

しかし、パショーネは毛皮以外のものを売ろうなんて欠片も思っていません。

国内の某有名ファーブランドが通販でお酒も販売していますが、私のところでファー以外を商品として販売することはありませんし、もちろん洋服なども販売はいたしません。

ひたすら毛皮だけを販売してまいります。それは今後も変わることはありません。余計なものに目や時間を取られて毛皮に目を向ける時間がなくなることは避けています。

しかし、毛皮以外を扱うことを批難している訳ではありません。企業が継続していくということは、それほど難しいということも私は知っています。

ただ、私は企業として大きくするよりも自分の納得いくものをやりたいと、それだけを優先してきました。しかし、それでも事業継続は簡単ではありません。売上が取れれば何でもやりたいという気持ちは誰よりも分かるつもりです。

ただ、それだと何処かで本当にやらならなければならないことを見失うような気もします。他のアイテムを扱いだしたら、ファーの品質なんて継続して保つことなんか出来ません。出来ているというならそれは、厳しい言い方ですが、その程度のものです。ファー以外のものに目が行ったらファーのことは何処かに行ってしまいます。

ファーが宝飾のように大きな市場にならないのは暖冬や毛皮に対する誤解もありますが、ファー素材の均一化が難しく、とても曖昧だからです。個体ひとつずつすべてが大きく違いが存在して、さらに作る職人のレベルでも他の業種以上に大きな差が存在します。

その分、いい加減なところも一杯あり、顧客からみて基準が曖昧というか、ほぼ無いに等しいからです。顧客は業者を信じるしかなく、その業者もいい加減な知識で販売しているところが多く、顧客から絶対的な信頼感を得ることが難しいからです。

そんな難しい素材で、他のビジネスに目が行ったら、毛皮の高い品質を維持するのは私は難しいと考えます。毛皮をビジネスとして捉えてたくさんの企業が大小過去に存在しましたが、大半は潰れて行ったことでも、そのことが分かります。

パショーネは、これからも小さな規模のまま今の商品力とアフターや技術力のみでファーブランドとして存在していきます。

ただひとつ必ず変わるだろうと言えることは、これまでも百貨店内の競合他社の絡みもあり出来なかったサービスやアフターもありますが、今後は少しずつ変えて行こうと思っています。

そしてパショーネにしかできない商品とその”ものまわり”を充実させてまいります。

それが、今日の、小さくても”ファーブランド”として生きるというタイトルの意味です。

 

ですから、小売店でもなく、加工業でもありません。もちろん、様々な難しいと感じるお直し等も加工屋としてではなくファーブランドとして、接客対応も含め、しっかりとしたお打ち合わせの時間も取りながら、お直し等の仕事も受けてまいりますが、単純な、たいした打ち合わせもなく、お直しだけをするということは基本的にはあまりありません。

ただひとつ、加工だけを受けるとすれば、他社で断られたもので私のところであれば出来るかもしれない、お役に立てるかもしれない、、、という特殊な場合と毛皮がひたすら好きでたまらないという方の要望は出来る限り聞こうと思います。

それが、ファーブランドとして生きる意味のひとつでもあると思っています。  長澤祐一