毛皮のリフォーム前のクリーニング


Fur_Cleaning

今日は毛皮のリフォーム前のクリーニングについて、もう少し具体的に書いてみます。

上の画像を見てもらうと解りますが、溶剤で丸洗いして出た汚れです。これだけ汚れているということになります。

業者関係者が見て誤解を生まないよう書きますが、回収設備のいるパークと専門的に呼ばれている溶剤ではありません。一般に市販されている溶剤を使っています。もちろん中国でいまだに使われているのではないかと疑われているフッ素(フロン系)溶剤でも、ありません。 (さらに…)

毛皮クリーニング、私のもうひとつのこだわり

見えない裏側の皮の部分のクリーニング

 

今日はなぜ私が見えない裏側の皮の部分のクリーニングにこだわるのか?という、もう一つの理由について書いてみます。

私が経験したリフォーム品の数は弊社がリフォーム専門ではないという理由もあり、そう多い数量ではありません。ただ、少ないと言っても年間で数点しかやらない訳ではなく、何百着と言う単位にはならないというくらいの着数はやっています。

このなかの半分近い点数で、匂い、カビ、は当たり前ですが、ダニ等の虫がついている場合がみられます。虫が付くのは古い毛皮コートの保管の状態に原因があります。 (さらに…)

毛皮のクリーニング(毛ぐせとり)


今日は毛皮の一般的なクリーニングと弊社のアトリエでやるクリーニングとの違いを昨年、ビデオに撮ったものがあったのでそれを見ながら説明してみましょう。

毛皮で一番大事なのは表から見える毛であることには間違いないのです。しかし、それと同じくらい大事なのが毛を支えている皮の部分です。私の経験では毛はほとんどの場合劣化しません。

皮は、以前も書いていますが、タンパク質でできていて、思ったよりも条件次第では劣化いたします。そして、劣化がある程度のところまで進行すると、病気の癌と同じように手が付けられない状態になります。 (さらに…)

毛皮クリーニングの問題点

やっと、昨年のものが終わり、ようやく新しいシーズンがスタートします。せっかく立ち上げたブログも二か月手つかずになっていました。

昨年始めたブログを読んで、お問い合わせいただいた、大切なお客様の大半がシーズンに間に合わず今シーズンまでお待ちいただいてしまいました。そのお客様にお詫びのメールをだし、やっと、今日から、また、始めることができます。

今日は、クリーニングについて書いてみます。毛皮は基本的には水洗いができません。理由はなめしの方法にあります。レザー製品のようにクロムなめしという手法ではなく、ドレッシングという手法でなめされています。

毛皮の場合柔らかさを出すために、この手法が用いられているのですが、 (さらに…)

リフォーム品 | 保管の仕方考

今日はリフォーム品を承るにあたっての縫製以外での注意点を書いてみます。リフォーム品には多かれ少なかれ、毛皮にはほこりや汚れ以外に、香水、カビ、場合によってはダニなども付着している場合が多くみられます。コートから裏地や芯を外しているときにも、よく私たちの手や身体にかゆみがでることもあり、個々のお預かり品ごとに、かなり慎重な取り扱いをしなければなりません。コートを預かっている期間または加工期間は、常に他のお客様のお預かり品と触れることのないように厳重にカバーを幾重にもかぶせます。

その理由は、預かったコートには香水やカビ、さらには樟脳(きものなどを虫やカビからまもる薬)などの匂いが混ざり合って、とてもきつい匂いになっている場合が多く、隣同士にハンガー掛けしていると確実に匂い、その他のものも移ります。カビ等が一旦移ったら、まず取れないと思って良いでしょう。ですから要注意品は特に厳重な保管が必要になります。

アトリエでは全体をほどいて毛皮と裏地が外された後に、必ずドラムという毛皮の毛を落としたり柔らかくしたりする機械にオガと脱脂溶剤、さらに消臭剤を入れて余分な脂や汚れ、ほこり、匂い、さらに出来る限りのカビやダニ等の駆除を行います。

この記事を読まれて、同じことをされる方がいるかも知れませんので、念のためお伝えいたしますが、消臭剤は液体で水(H2O)を含んでいて、劣化しかけた毛皮の皮のタンパク質をその水分によってさらに劣化させることもありますので、ご注意ください。

基本的にはクリーニング用のオガには消臭効果もありますので皮の劣化状態を見ながら、消臭剤を追加するかどうかは決めるべきでしょう。

このようにして、一着ごとに一般的なクリーニング屋さんでやるパウダークリーニングと言われるもの以上のクリーニングをしていきます。そうしなければただ形が変わっただけのリフォームになってしまいます。もちろん、オガも通常の毛とりのときは再利用しますが、クリーニングの場合は都度、新しいオガでクリーニングします。余談ですが、パウダークリーニングしたコートのほとんどが裏地とコートの裾の隙間や袖口などにオガが入った状態になっています。おそらくオガドラムに入れて最終仕上げの段階でオガを落とし、さらにポケット等の中のオガを掃除機等で吸い取るのでしょうが、コートの中に入り込んでしまったオガは取りきれていません。時には裾や袖口に一杯入っているときがあります。

そういう意味ではリフォームの時以外に、徹底したクリーニングと皮のメンテナンスをする機会はないのです。よく裏地交換をする場合もありますが、あれはあくまで裏地のみを交換するだけで、芯を外して軽いものに付け替えるということはしませんので、結果としては完璧なクリーニングができる条件にはなりません。

そして、このクリーニング処理はリフォームが決定してお預かりした段階ですぐにやります。そうしないと保管期間に他のコート同士が触れ合い、匂いやカビ、ダニ等が他のお客様のコートに移るのを防ぐことができません。

あと、やれることがあるとすると、よく布団乾燥機のカバーのようなものがありますが、あの中で高温状態でダニ等を殺すことです。

しかし、やれるだけのことをやっても、100%取れるとは限りません。匂いなどは毛の表面はとれますが、毛の奥や皮のなかに染み付いたものは完全に取りきることができません。オガドラムをかけた直後は良いのですが、時間の経過とともに空気中の水分などと混ざり合い、匂いが出てきます。それでもやらないよりは格段に違いがあります。元の匂いのきつさはほぼ取れると私は考えています。

このように、リフォームをするには、小物クラスのリメイクならば問題がないでしょうが、着用するものに再度作り替えるならば、毛や皮の状態を出来るだけ綺麗な状態に戻す必要があるでしょう。

そして、毛以上に注意しなければならないのは皮に入っている脂の状態です。少なくて、このまま放置すれば、間違いなくパリパリと紙のように劣化していく皮か、もしくは脂が入り過ぎていて、そのため空気中の湿気を吸収してしまい、皮のタンパク質を壊し劣化が進むのかをよくチェックして脂を抜くのか足すのかを都度考えなければなりません。

毛についてもただオガドラムをかけただけでは本来の美しさにはなりません。毛の癖や縮れをとったり、スチームで毛のボリュームを出したり、汚れた髪の毛が生え際で束になってしまうような状態が毛皮にも起こりますので回転アイロンで毛の根元からサラサラにしたり、つや出しの薬品を場合によっては使うなど、やることはたくさんあります。

一般的にはお客様との打ち合わせではデザインや作り方に話が集中しがちですが、リフォーム品としてお預かりし、仕上がり品になるまでには、目には見えませんが、メーカーとしてやらなければならないことがたくさんあります。そして、この難しいリフォーム品の保管は社内から一歩も外に出さないことが条件になります。その理由は、外注加工にでれば、社内アトリエと同じ保管条件を求めるのは難しいからです。

写真は皮の脂が黄色く変色してきたものを半分カットして、脱脂をしたものをもう一度縫い合わせたコートです。写真は触ってみることが出来ないのでわかりませんが、皮の柔らかさも違います。脱脂していない黄色い皮は表面に湿気が残り、硬さもあります。ただし、全てのコートで脱脂すれば良いということではありません。中にはドライ(脱脂)をしたあとはすごく柔らかいのに、加工段階で硬さや劣化が出てしまうことがありますので皮をよくチェックする必要があります。

長澤

 

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年月の経った毛や皮のケア

実際に年月の経った毛や皮のケアをするということは大変難しいことです。原料から製品になり、リフォームされるまでの毛皮にはひとつの歴史が存在します。

購入した時は、毎日のように着用していたのが出番が減りながら、やがて長い間タンスの中で眠った存在になっていたもの。またはお気に入りのワードローブ、冬の必須アイテムとして毎年、湿ったタンスと乾いた冬の外気の行き来を繰り返してきたもの。

毛皮自体を再び良い状態に戻し、美しさ・やわらかさを持った新しいデザインに生まれ変わらせるために、私は今までに、毛皮の毛を洗い仕上げるためにいろんな薬品を試しました。毛皮業界で使われているものや、業界と関係なく販売されている様々なものを使ってみました。

結果としては、女性向けの髪のお手入れ用品の中に優秀な仕上げ剤が多い事がわかりました。業界内で使う薬品の成分まではわかりませんが・・・匂いや使った結果から見るとほぼ同じものだと思います。

私はずっとリフォームにはデザインはもちろんなのですが、毛皮の美しさの大元の毛そのものや、それを支える皮にも充分なケアが重要だと考え、再びその美しさを取り戻せるように思考錯誤してきました。

無意識にですが、リフォームと一般の製品やオーダー品とを分けることはしないでやってきました。それは、毛皮の為でもあり、お客様の為になることだと思っています。

このように考える中で、私には「お客様のものをお作りし直すということではオーダー品と変わりない位置づけになるの事がリフォームのあり方(位置づけ)」いうことを改めて実感しています。

長澤

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