ヤーンマフラーのクリーニング

今日は毛皮の編み込みタイプのクリーニングについて書いてみます。

以前、とても流行っていたタイプで、よく売れていました。私のところでも、少し仕入れたものや帽子タイプのものを商品化したものを今も販売しております。
軽く柔らかいことが特徴で、よく重宝されていたようです。

マフラー系だと、首に直接巻きつけて使うことができる分、首や肌に直接密着して、お化粧や汗がマフラーにべったりとついてしまいます。
下の写真でもわかりますが、もう、毛皮の見る影もなく、ベッタリと皮脂がついてしまい、とても、このまま使う気にはならない状態になります。

これをクリーニングしたのが下の画像⬇️ですが、以前の、ふわっとした元の状態に戻ってますね。洗い方は、残念ですが、今回は書きません。

セーブルは元々はそれほど皮脂を吸収するタイプの毛皮ではないのですが、それでも、使用頻度が多いか、もしくは、たまたま、汗をたくさんかかれた場合等では、ここまで皮脂で汚れてしまいます。

この画像は⬇️チンチラですが、これも綺麗に皮脂が落ちています。

うっかり、元の状態をとっていなくてクリーニング後の仕上がり写真しかありません。

チンチラは特に皮脂を吸収しやすく、毛皮素材のなかで一番、皮脂が落ちにくい毛皮です。一般の人がやるとすれば、コーンスターチ等の粉をかけて、その粉に脂分を吸収させる方法もあります。

しかしながら、実際にはパーフェクトには落ないことと、チンチラに付いたコーンスターチ等の細かい粉末を一般の方が落とすことは出来ませんので、あまりお勧めはできません。

今日は短いですが、そろそろ冬の装いの準備が始まる時期かもしれませんので、いざ使おうと思ったら、脂汚れや匂いに驚いてしまうような場面に当たるかもしれません。そんな時のために書いてみました。

長澤祐一

 

にほんブログ村 ファッションブログ オーダーメードへ

毛皮の逸品とは?

今日は毛皮の逸品という言葉の意味について書いてみます。ネット検索すると「逸品」すぐれた品(しな)。絶品。とあります。他の商品については私は解りませんし書くつもりもありませんが、毛皮なら書く事ができます。

最近、よく逸品会というものが各小売店でありますが、毛皮の逸品とは?果たして何を示すのかという疑問をよく持ちます。大半が中国で作られた毛皮製品、一部に海外ブランド、一般の人があまり聞いたことのないインポートものという大きな枠で括られた商品群。

一般の国内毛皮加工が海外品から大きく劣るという国内事情もあり、中国産やヨーロッパ製品で決して抜群に綺麗なとどは言えないものでも逸品として陳列するしかなく、しかも、値段がより高額なものが逸品だと認識されているこの業界のなかでは正直、目もあてられない現状があります。

例えば、牛肉のなかでも一般の牛肉と、逸品と言われる牛肉があり、それは毛皮に置き換えれば、ミンクでも、チンチラでも、セーブルでも、リンクスキャットでも、とても逸品と言えないものもあれば、うぁ~綺麗!! デザインも最高! と思わず感動してしまうようなものがあるということです。リンクスキャットだからセーブルだからと一括りにして逸品と扱うのは、完全な売る側の勉強不足なのです。

ミンクでも、例えチンチラの小物でも、圧倒的に優れた素材や作りの違いがあるものが逸品と呼ぶのに相応しいのであって、素材が高ければ、値段が高ければ ”糞でも味噌でも”逸品というのは売る側にも問題があるような気がします。

逸品会等のカタログに出ているもののなかで、おっ、これは、ほんとうに逸品なのか?と目を疑うものもあり、その出品されているものを良く知っていると、そう感じるものがあります。そんなものが出ていると、知らない他の商材にも疑問を持ったりもします。ただ、ひとつ商材を揃える側に立って理解するところがあるとすれば、厳密に逸品しか出さないと言ってしまうと出展する商材がほんとうに限られてしまうという現実もあることもよく理解できるのです。しかし、こと毛皮という商材に限れば、疑問は大きく残ります。

毛皮の話に戻りますが、一般のお客様はリンクスキャット、セーブル、、、と聞くと、すごい、高い、というようなイメージを持たれるかと思います。しかし、リンクスキャットやセーブルでもピンキリなのです。ボリューム、毛質、色、腑の綺麗さ等でランクが別れ、さらに、作り方でも大きく品質が変わります。腹だけを使って作られる真っ白いリンクスキャットのベリーでさえも、ろくでもない商品はたくさんありますし、ネットでは十把一絡げでセーブルやチンチラを扱われていますが、本来の価値はそれぞれに大きく差があるのです。

今日はこれ以上書くと、いろいろと支障がでますので、いつもよりも短いですが、ここまでで止めておきます。書き出すと止まらなくなりますから。(笑)

今日の写真は、最近インスタグラム(Instagram)を始めて、私が綺麗と思う写真をアップしていますが、その中のいくつかを載せてみます。

一番上の1枚は チンチラカフスセット(マグネットでマフラーにも使えるタイプ)の写真です。

よく、このブログで背中心を正確に出すことや腹のラインを正確にチェックすることなどを書いていますが、このチンチラをよく見ていただければ、背中の黒い部分の分量や白い腹の分量が正確に左右に別れていることがわかりますね。

そして、写真で見ても、デンマーク産の最高ランクのチンチラの良さが解ります。ちなみにこれはブラックベルベットタイプではありません。それでも、これだけ白、グレー、黒がはっきりしていて、まさしくこれが逸品なのです。腐ったセーブル、チンチラ、リンクスキャットは逸品ではありません。

もう一枚は、見て解りますが、写真からも、その毛のシルキーさが伝わるような黒染めのチンチラです。チンチラブラック染めは、どうしてもチンチラの毛のウエーブが染色工程で伸びでしまいボリュームが落ちます。

そのため、デンマーク産のものでも、さらに選び込まれたボリュームのある原皮を選ばなければなりません。写真でも黒の沈み込むような黒さと毛の横面に光があった部分でチンチラの立体感が出ていますね。これも、間違いなく逸品なのです。逸品だからと言って、価格の高さや雰囲気に踊らされることのない購入が望まれるところです。

長澤祐一

 

にほんブログ村 ファッションブログ オーダーメードへ

チンチラのクリーニング後のリフォーム

今日は前回の記事にあった、有機溶剤で洗ったチンチラコートをロングマフラーに仕上げたビデオです。

二点、リメイクを受けて、一点は少し黄ばみがあり、コートにするのはやめました。内容はビデオを見てもらうしかありませんが、柔らかさと毛の風合いです。

大事なことはビデオで、すべて言いたくないことまで言ってますので、書く事はほとんどないのです。

チンチラは場合によっては、新しいバンドルでも、劣化のあるものが、たまに混じります。そんなこともあり、リフォーム品のほとんどが劣化してると言って過言ではないのです。 (さらに…)

毛皮のクリーニングをどこまで知っているか?

今日は、また面白くない、毛皮のクリーニングのお話です。すみません。ほとんどの毛皮のサイトでクリーニングについて書いてありますね。

そして、その内容のほとんどは毛皮はパウダークリーニングがいいと書かれています。しかし、そのサイトでパウダークリーニングがいいと書いた、どれだけのひとが実際にパウダークリーニングを自分でやったことがあるのでしょう。この私も実はやったことがないのです。

やったことがあるひとは、私の予想では、ほとんどいないでしょう。ほとんどが業者任せですから。それくらい、どこかに書いてあることをただ記載しているというのが現実です。 (さらに…)

チンチラの毛捌きとボリューム感

前回のブログ更新から10ヶ月も経ってしまいました。一年以上もグーグルの検索では一位だった毛皮のオーダーメイドも、二位、三位、四位、五位と順位が下がってきました。

さすがに更新しないとダメかと思い、何を書こうか迷っていて、毛皮で一番やっかいなチンチラをさらに突詰めて書いてみることにしました。

チンチラの良さや欠点をこれまでも、いろいろな角度から書いてきましたが、今日はチンチラの毛捌きというテーマで書いてみます。チンチラのいい商品として自分が上げるならば、フィンランドのリンナネンというメーカーのチンチラは私がみても綺麗だとおもえます。

以前も書きましたが、チンチラは皮の脂分が一般的にはとても多く、その脂分が下手な加工技術だと、というか、ちゃんとした設備と技術がないとうまくいきにくいのです。 (さらに…)

チンチラのブラックベルベットの意味

チンチラ ブラックベルベット

今日はチンチラのブラックベルベットという品種について書いてみようと思います。以前、ブラックベルベットと2XDや3XD(色の濃さを表した名称:数字が大きいほうが濃い)を比べ、作り方によっては価値の低い2XDのほうが綺麗に見えると書きました。

今回写真で見せるチンチラはあきらかに2XDや3XDよりも綺麗で、私が見る中でも本当のブラックベルベットと呼ばれるものです。安いブラックベルベットと違い、毛が弱くなりやすいにも関わらず、しっかりとした毛のボリュームがあり、まさにブラックベルベットと呼ぶにふさわしいチンチラです。

しかし、よく見てもらうとわかりますが、 (さらに…)

チンチラはそんなに軽くない

今日はチンチラが、そんなに軽くない事について書いてみます。チンチラは一般的に毛皮のなかでも繊細な毛皮の最たるものとして扱われていて、イメージとしても、とても軽そうに思われているかもしれません。しかし、実は決して軽い素材ではないのです。軽いイメージはおそらく、毛の繊細さや、皮が何年もしないうちに破れたりして、皮が薄く弱いというイメージからくるものなのでしょう。

チンチラの皮は決して薄くはないのです。腹の部分は確かに薄いのですが、腹を過ぎて背中心に向かうほど皮は厚くなってきて重さに影響を与えています。以前もチンチラの皮の劣化について書いていますが、チンチラの皮は他のミンクのような皮に比べ何倍も切れやすいのです。

もちろん個体差があり、さらにはなめしの最終の仕上がり状態にも大きく影響を受けます。というよりも、最後のなめし上がりの仕上げ方と保管の状態で皮の劣化や強度が決まると言っても過言ではありません。

さらに重さという意味では、繊細といってもチンチラは毛のボリュームがあるため皮の厚さだけではなく毛自体も重さの要因になっているのだろうと思われます。

以前、当ブログで「毛皮クリーニングの問題点」を書いたかと思いますが、クリーニングするためのドラムにかけただけで切れる可能性があるのです。その理由は、一見、皮が薄く弱いからと誤解されがちですが、実際には弱くても軽ければ、そう簡単にドラムのなかで切れることはありません。重いコートがドラムのなかで回転することで遠心力も加わり、下にたたきつけられるというなかで切れるという現象が発生します。

よく着用せずにハンガーに吊るしたままで、肩が切れてしまったというようなことが起きるのも皮の弱さだけではなく重さも大きな原因の一つです。

最後にひとつ付け加えますが、すべてのチンチラが弱いわけではありません。前にも書いたようになめしの状態がよく、湿気を吸収しない状態にあり、さらに、できるだけドライな環境で保管をする、そして、加工段階でも切れそうな部分にはしっかりと補強をするという、この三つの条件が満たされていれば、簡単に切れることはありません。

よく、全体に芯を抱かしてあるものが見受けられますが、あれはあまり意味がないのです。重さがかかる部分にコートが硬くならないように注意をしながら補強をしていくというのがベストな考え方でしょう。

長澤

にほんブログ村 ファッションブログ オーダーメードへ