オンラインショップでの一点一画像の難しさ

今日はオンラインショップでの写真について書いてみます。

他のサイトではよく見られますが、一点の商品画像を数枚載せて、同じデザインやサイズのものを何点も販売するというようなことがあります。

パショーネのオンラインショップでは、一点一画像でアップしています。ですから販売されたものの商品画像は二度と使うことはありません。

皮のバッグや衣服は仕上がりが、ほぼ同一に仕上がりますが、毛皮商品は、まず素材が均一ではないということと、技術者のレベルによって作り方に大きな差が出たりします。そのため、皮のバッグのように、ほぼ同一に仕上がることがありません。

仮に私が作ったとしても、ほぼ同一に仕上がるということはありません。同じレベルに仕上がったとしても、それぞれにわずかな素材の差によって生まれる違いがあります。革製品のようにほぼ同じように作ることが出来ないのが毛皮商品です。

 

であれば、一点一画像でやらなければ、たとえ小物でもやはり一点ずつ画像を撮ってアップするしかありません。毎回、一点ずつ写真撮りをしてアップするのは時間も手間もかかりますが、手で触れることが出来ないオンラインであればなおさらのことですが、一点一画像を守る必要があります。

そんなこともあって、現在オンラインショップの商品アップが遅てれています。一点売れたものを再度作っても商品としてアップするのにするのに以前の写真を使うわけにはいきませんから。

一度決めたことを頑なに守ることは大変なことです。販売という場においても作ることと同じで手は抜けません。

それともうひとつ、一点ずつ写真を撮ればそれでよいか、誠実であればそれでよいか?というと、そうでもありません。商品の良さを引き出す写真が撮れないとアップ出来ないのです。それでもしょうがありません。自分で納得できない写真をアップしても、ずっと不満が自分のなかに残ったままですから。売れれば何でも嬉しいはずです。しかし、自分が納得できない画像で売れたとしても100%で喜ぶことはできません。

 

そんな意味でも、今現在、オンラインショップがブレーキがかかった状態です。今日チンチラの商品をアップしました。前回と同じバーキン30につけるトリミングをアップしています。

良かったらオンラインショップを覗いてみてください。

 

長澤祐一

オガの汚れ具合と吸収力

今日は先日の、オガの一般的な効果と可能性というタイトルの続きです。

一般的に通常の鞣しで毛皮をドライクリーニングする場合にはオガが極端に汚れることはありません。

 

そして一般的な毛皮専用と言われているパウダークリーニングでも、多少の有機溶剤を使うと書いてあるところもありますが、極少量の有機溶剤とオガでコートの表側だけをクリーニングするだけなら、ほとんどオガが極端に汚れるということはありません。

私がやっているリフォーム時にせっかく裏地や付属を外したのであれば、皮裏面も含め徹底したクリーニングが出来ればと大量のオガと有機溶剤を使ったクリーニングは、これまでのクリーニングとはまったく違うものです。

写真を見ていただければわかります。

これは一度クリーニングしたオガを試しに洗ってみました。洗う方法は前回書いていますので省略いたしますが、洗濯機のなかの水は真っ黒になります。毛皮は水でジャブジャブ洗ったりすすぐことができませんので、皮や毛に染み込んでいる脂や汚れと匂いなどを有機溶剤で溶かしオガにしみ込ませ吸収するということをしますが、クリーニング後にオガを見ても、多少黒く変色しますが、実際のところどれくらい汚れが落ちているかはわからないのです。

そんなこともあってオガを洗ってみました。オガの価格からいえば、大きな袋で2,000円くらいなものですから洗う手間より買ったほうがはるかに安く上がりますが、オガが実際に汚れを吸収しているかどうかを知るには、このように洗ってみるしかないのです。

さらに、もうひとつ今回の実験で分かったことがあります。オガの水分の吸収力というか保湿力というか、とにかく乾燥しているのですが、すでに二週間以上経っていても、まだ半分くらいしか乾きません。やっとサラサラになってきましたが、まだまだ湿気を含んだままです。

洗ったらヒノキの香りは無くなるかと思いましたが、まだまだ十分にヒノキの香りがします。

リフォーム品によく見られがちな強い匂いも、このヒノキの消臭効果によって強いカビ臭さが取れているのかもしれません。

毛皮にも様々な技術が受け継がれてきていますが、その技術の意味も考えずに継承するということもよくあります。

オガについても以前から毛皮のムダ毛を取ったり汚れを取ったりすることに効果があると言われていました。ただ、それは以前から受け継がれてきた技術であり自分の努力から導き出したものではないのです。

そんな意味もあって、今回のように実際に自分で、その効果を検証してみるということは自分の技術への自信を深めるという意味でも大切なことです。

これまで毛皮のクリーニングにつきましては何度も、このブログで書いてきましたが、今日の投稿で、今後新しい発見がない限りは一旦終了といたします。毛皮という難しい素材のなかでもクリーニングは特に技術を極めるという意味では難しい作業です。この難しいテーマを継続して読んでいただきありがとうございました。

 

次回以降は、また新しいテーマを見つけてブログを書いてまいります。

最後にもうひとつだけ、、 毛皮にとって正しいクリーニングができるということは、とても大事なことです。最後にそのことだけお伝えいたします。

長澤祐一

 

 

 

オガの一般的な効果と誰も気付かない可能性

今日のタイトルは、オガの一般的な効果と可能性です。

私もオガの科学的な知識はありません。あくまで使ってみた経験から得た知識でしかありません。

何十年も前のことですが、大量のオガを使ってフォックスのエリを綿や裏地を付ける前にかけたことがあります。私が毛皮を初めて四年くらいの頃だと思います。当時新しい工場の立上げに関わり、大きなドラム(毛皮の毛を取ったりクリーニングするための機械)が導入され試験的にオガでフォックスのエリに加工されたものの毛取りをしたことがありました

 

そのときのオガで毛を取り除かれたフォックスのエリの綺麗さは、今でも私の記憶から無くなっていません。目的はフォックスをカットして製品内に残った無駄毛を取り除くということだけなのですが、現実にはそれ以上に製品そのものの魅力というか、毛皮の魅力が最大限に引き出された状態で、大きな感動とともにその効果のすごさにショックを受けたことを覚えています。

一般的にはドラムという機械を小さな加工屋さんでは持つこともなく製品化されていらっしゃるところも多かったり、ドラムがあっても、毛皮の仕上がり時にわずかに加工時にでた毛を取り除くためだけに、わずかな時間をかけるだけのところが多いのですが、本来は、加工時に水を使うことで皮が硬化したものを柔らかくしたり、加工時に汚れた毛を綺麗に戻すという大事な役割があり、ドラムとオガの組み合わせは想像以上のものが存在します。

 

もちろんすべてのひとがオガとドラムによって仕上がったものに感動するとは限りません。しかし、最低限、作る側の人間ならばその効果を感じられる必要があります。

 

オガについては一般的に専門家の間では、オガの周りについている細い繊維(チャカチャカと飛び出ていると言われています)が毛のほこりや汚れを引っかけて取るともいわれています。そして、そのチャカチャカが無くなってしまうと、オガの効果はなくなるとも言われています。

鞣し業者さんでもオガを繰り返し使い、オガの交換の時期をそのチャカチャカが無くなった頃と判断しているようです。ただ、これは実際には顕微鏡でオガを見るようなことをしているかどうかはわかりませんので、おそらくですが経験的に何回使ったら廃棄するということになっているのだろうと推測しています。

ここで次に私のところでの使い方を記載してみます。

一般的には鞣しやさんで使う場合には、新しい原皮を仕上げるためにオガをつかいます。しかし、私のところで使う目的は商品化したものに対して使う一般的な使い方と、もう一つには古い毛皮、例えばリフォーム品などの皮や毛が極度に汚れたものを洗う場合にも使います。

そのためにオガについているチャカチャカによって毛の表面についている汚れだけを落とすだけではなく、以前も書きましたが、有機溶剤を同時に使って毛に付着している脂汚れや皮についている匂い成分や実際の汚れも落とします。

ずっと悩んでいたことがあります。

本当に、自分が想像した通りに、有機溶剤で皮や毛から溶け出した汚れが落ちているのだろうか?? 通常の洗濯の中で使われる濯ぎの時の水の役割をオガがしているのだろうか?という疑問をどこかで解決しなければなりませんでした。

 

そのために以前一度やったことがあるのですが、そのときに写真を撮ることを忘れてしまったり、洗う量が多すぎて上手くいかなかったこともあり、再度、オガを洗ってみて実際にどの程度オガが汚れを吸収しているかを確認してみました。

結果は想像通り、水は真っ黒になりました。

最近の洗剤は香料がついていることもあり使用せず、さらに、有機溶剤で溶け出した脂をオガが吸収しているとすれば、汚れとともに脂も溶かす必要がありますので、脂を落とす方法として、最近流行りのバイオクリーニング剤を使いました。洗濯機のなかにお湯をため込みバイオクリーニング剤を入れて水となじませてから、シーチングといわれる綿の平織りの生地に入れたオガを洗濯機の浴槽に入れて回しました。

 

結果は次回、写真でお見せいたしますが水が真っ黒になりました。有機溶剤は一般的な油も落とせますが、毛皮で使われるアブラは油ではなく脂なので油よりもさらによく溶かすことができ、オガに吸収されます。

但しです、脂、いわゆる樹脂製のものなのですので水だけで充分落とせると思い、鞣し屋さんからも専用洗剤を譲ってもらい、洗いましたが私が望むような落ち方はしませんでした。やはり一般的なドライクリーニングで使う規制のかかった有機溶剤でなくとも最低限有機溶剤である必要があることは経験でわかりました。

 

今回使った家庭用のバイオクリーニング剤は、例えば台所のガス器具周りの油汚れも落とせることで、強い油の洗浄力があることが解っていましたので、オガに汚れとともにしみ込んだ脂くらいは溶かすことが可能であろうと推測して使用しました。

 

以前やったときには、単純に水だけでしたが、今回はバイオクリーニング洗剤を入れましたのでやはり水の汚れかたが違っています。

 

ここで一度、オガに有機溶剤で溶かされた汚れが吸収されることがわかりましたので、ここでこの話は終わります。

 

今回のタイトル、オガの一般的な効果と可能性の、可能性という部分の話をしてみます。

 

前回も苦労しましたが、洗った後のオガの乾燥が問題でした。今回もそうですが、完全に乾燥するまでにひと月以上かかります。乾燥する専用の機械でもあればいいのですが、普通に表面を広くして広げて乾かしてもなかなか乾きません。

逆に考えると、保湿効果が高いとも考えることができ、その強い保湿効果で、有機溶剤によって毛皮の毛や皮から溶け出した汚れをオガが強力に吸収してくれるということが推測できます。

一般的な洗濯のように水をどんどん入れ替えて濯ぎをすることができませんので、オガに汚れを吸収する能力が高いということは、今回のテストでわかりましたが、とても大事なことなのです。

 

最後に少しだけ書きますが、前回の投稿二日後に起こったロシアのウクライナ侵略戦争が始まって以来、インスタグラムで知り合ったウクライナの友人二人の安否を毎日インスタグラムでのオンラインで確認したりメッセージで数日はやり取りしていましたが、さすがにメッセージを確認してもらう時間もないだろうと、ただひたすら相手のオンライン状態で相手の生存を確認するという状態が続きあっというまに20日間経ってしまいました。

さらにはインスタグラムでブロックされてしまったロシアの友人も、アメリカに移住したいと言っていたりして、しかし、アメリカは毛皮産業にとっては厳しい地域だったりと、自分のことも含め今後のことを心配する日々が続いています。

今はひたすら、ウクライナの友人の無事とロシアの友人の今後の仕事の無事を祈ります。

 

次回、今回つけることができなかった画像を上げたいと思います。

昨年四月から、再度書き始めたブログです。やっと一年近く経ってグーグルなどの検索にも引っ掛かりやすぐなってきていますので、ここで止める訳にもいきませんので、また再開いたします。

今日のオガの可能性については、今後も他では絶対に得られない、誰かに聞いた話を書くということではなく、私が実際に確認したことを書いてまいります。またこのブログに来てもらえると嬉しいです。

 

長澤祐一

 

毛皮のドライクリーニング 毛皮の皮から脂を抜く難しさ

今日は、毛皮クリーニング 毛皮の皮から脂を抜く難しさ というタイトルです。

一般の方には、すごく解りずらい内容ですね。

 

私のブログでは何度も書いていますが、

簡単にいうと、毛皮は皮の脂を抜き過ぎると、干物のようにカチカチになります。ほんとのことです。するめイカのようになります。

毛皮を鞣すというプロセスがあります。業者さんは鞣しをそのままプロセスとも呼んでいます。

この鞣しのときに入る脂の量というか、脂の抜き方で毛皮が商品になったときの仕上がりとその後の保管による毛皮の皮の部分の硬化や劣化に対して大きな差が出ます。

この脂の入り加減に三つのパターンがあります。

 

一つ目は、脂を抜き過ぎると、するめイカのようにカチカチになります。そのままでは加工することも商品にすることも出来ません。抜き過ぎると本当にカチカチになります。

 

次に、脂が適度に入っている、、、言い方を変えると適度に抜くが正しいかもしれませんが、実際に適度に抜かれた皮は、湿気も吸収しにくく、柔らかく、さらにさらっとしていて、乾いた感じがします。

ただ、この状態はすごく幅がせまく、鞣しやさんがやるドライクリーニングでも、なかなかピッタリにはなりません。でも、この感覚を触って分かるようになるには、豊富な経験が必要です。何度も様々な条件の皮を加工して仕上げてみて初めて分かることです。単に何千本と毛皮の皮を触っても理解することはできません。

 

最後に一般的によくあるタイプで、脂が残り過ぎの状態です。ほとんどがこの状態です。この状態は、鞣し上がりの初期状態はとても柔らかくてよさそうに見えます。しかし、時間の経過とともに湿気を吸収して、徐々に硬さがでます。原皮屋さんが長期保管した毛皮のほとんどが硬く湿気を吸収して重く感じるのは、このことが原因です。しかし、鞣し上がりのときはすごくよく見えます。

 

このように原皮の段階でも、上に書いた三つの状態があります。

 

それではどうして、二番目の一番ベストの状態に、なかなかできないのか?ですが、鞣し屋さんで使っているドライクリーニングの機械は、大型で溶剤だけで毛皮を入れて回し、気化した溶剤を再度、液化する装置が付いていて、ドライの効果も強く、そして早く脂を抜くことができます。

ただ、この早く抜くことが出来るというところに、もしかしたら微妙なコントロールが効きにくいのかもしれません。私は実際にやってみていないので明確なことは言えませんが、抜き過ぎて問題になるより、抜きが少し足りないくらいが一番コントロールしやすいのかもしれません。

そういう意味では、私がやっている通常の毛皮用のドラムで、オガと有機溶剤を混ぜて、少しずつ長時間かけて脂を抜くほうがコントロールが効きやすいとも言えます。

実際に、市販の有機溶剤を使って、毛皮の皮をびちゃびちゃに濡らして絞り、そのまま乾燥すると、カチカチになります。

ドライクリーニングの機械ではジャブジャブ有機溶剤で洗い、ドラムの中で回転させながら乾かすのだと思いますが、回転させながら有機溶剤を気化させますので一旦は柔らかくなりますが、仮に抜き過ぎたとすれば、水に濡らすとカチカチになります。ただ、このへんの最終仕上げ方の詳細は私は分かりません。想像です。

ただ、私がやっていることは想像ではなく事実です。ベストの状態というのは、すごく範囲が狭く、脂が残り過ぎると湿気を吸って重くなったり硬化したりしますし、抜き過ぎると逆に硬くなります。本当にベストの状態は難しいのです。

ですから、効率は悪く、時間はかかってもゆっくり時間をかけて抜くしかないのです。そのためにリフォーム前にやるクリーニングはドラムに丸二日間入れて回しながら自然に有機溶剤が気化して自然に乾燥するまでドラムに入れるのです。

ただ、私がここに書いているようなことは、誰も気にしてはいません。

ここまでやっていることさえ、一般の業者さんには、このブログを読んでも理解もできず、信じることもないのかと思います。

皮をギリギリまで薄く鋤くことや、長期の柔らかさを維持するための皮に入った脂の量を調整したりすることは国内どころか海外でさえも、誰も気にしていないのが現実です。

もちろん、これだけでパショーネの商品が綺麗に見えるわけではありません。実際に作る感性と技術があっての現在の品質ですが、同じように私が作っても皮の状態の悪いものは、同じ仕上がりにはなりません。

それだけははっきり言えます。それくらいに皮の状態が仕上がりに影響します。

今日書いたことは、理解してもらうのには、かなり難しいテーマでしたが魅力的な毛皮にするという意味では、すごく大事な問題です。

 

長澤祐一

 

追伸  先日、鞣しの技術者さんと話をする機会があり、皮を鋤くためには鞣し用の油を入れるらしいです。脂ではなく油です。その油の目的は、皮を鋤くときに毛根を切らないようにするために皮を膨らませる目的だそうです。油を皮に塗って染み込んだ後にコーンスターチを溶かしたものを塗ってさらに皮が膨らむようにするようです。その時に使った油を抜くためにもドライクリーニングが必要だとも言っていらっしゃいました。頂いた電話で40分も話し込んでしまい、申し訳ありませんでした。そして互いに知識を深められたこと嬉しく思いました。いつかこのことは別に書きたいと思います。

 

インスタグラムでの友人

ここで政治の話をするつもりはありません。しかし、心配です。

私のインスタグラムのお互いにフォローをしているアカウントのなかにウクライナの友人が数人います。その彼らと、DMでわずかなやり取りをしています。

返信はわずかですが、爆撃が始まった、、とか、ヨーロッパからトラックで武器が届く、届いたら反撃する、、、 等とわずかな言葉のなかに緊張感が走ります。

その友人たちの年齢はおそらく50代か60代だろうと思います。それでも、国を守るために戦うといいます。ニュースではよく聞いていますが、現実にインスタグラムでしかやり取りしていない私にも国を守るといいます。

言葉がでません。

 

ロシアにも何人かずっとやり取りしている友人が何人かいます。そのひとりとやり取りしましたが、政府のやることを全く指示できない、、、と言っていました。ロシアでも自分の意志ではなく戦いたくさんの若者が亡くなっています。

きっと経済制裁によってこれから友人達の仕事も大変なことになるかもしれません。ロシア国内だけでなくヨーロッパへ商品を販売していると聞きいたことがあります。

とにかく早い収束と、友人たちの命の無事、経済的な無事を祈ります。  長澤祐一

毛皮のパウダークリーニングの疑問、そしてクリーニングが出来ることの本当の意味

こんにちは。投稿の間隔が少し短いですが、前回が結構空いてしまったので、今日もアップします。

これまでも何度も一般的な毛皮のクリーニングで使われている手法のパウダークリーニングを施されているコートのリフォームをしてきましたが、最近ようやく少し理解できたことがあります。

私のところでも、リフォームを依頼されることがあります。最近気づいたことですが、コートを解体して最後に作業台の上に、小さな粒が残ります。粉というよりもさらに大きな粒なのですが、クリーニングで使うおが屑とも違います。確定は出来ませんが、毛皮のクリーニングで一般的に言われるパウダークリーニングのパウダーと言われる粉だと思われます。それ以外に毛皮のコートの中に入るものはありませんから。

よくオガ屑も一緒にコートの中に入ることがありますが、今回はオガ屑ではなく小さな粒がたくさん、コートを解体した後に作業テーブルの上に残りました。以前もよくありましたが、このコートのお客様に聞いたところ、随分昔に二回ほど毛皮のクリーニングに出して、そのまま保管していらしゃったようです。

今日の一番のテーマは、毛皮のクリーニングをする業者さんが、クリーニング後の結果をほとんど知らないという事実です。しかし、それはしょうがないこととも言えます。クリーニング後に、その自分がクリーニングしたコートをじっくりと見ることがないからです。

一般的に使われている毛皮クリーニングの手法、パウダークリーニングを誰が最初に考えたのかは分かりませんが、今実際に作業している人たちは、きっと何も考えることもなく疑問も持たずに作業をしているのだと思います。もちろん責められることではありません。しかし経営者は今のパウダークリーニングが本当に効果があるのかは検証する必要があると私は思います。

私も、過去に毛皮クリーニングについて、かなりの量の記事を書いていますから、都度書いたものに責任を感じてはいます。

毛皮は本来クリーニングするものとしては、かなり特殊なものです。一般の布帛以上に都度取り扱いを分ける必要があります。

話を戻しますが、作業をする人がなんの疑問も持たずに作業をして良いと言えるほど本来は簡単な素材ではないのです。もちろん、作業しているひとがこの記事を読んだときに、肯定するか否定するかは分かりません。しかし、何割かの人は確かに、、、と思うはずです。一般的には作業効率が何よりも優先するのが当たり前ですから、敢えてパウダークリーニングを否定はしませんが、今現在、国内で主流になっているパウダークリーニングには問題も多く含まれていると私は感じます。

毛皮のクリーニングは基本的には裏地が付いた状態であれば、オガや有機溶剤、またはパウダーと呼ばれるものを使ったとしても、絶対に手洗いして、オガやパウダーを払い落すためにドラムにかけるというのが正解でしょう。考えれば当たり前のことです。

オガやパウダーと一緒にドラムにかけたら、絶対に裏地と毛皮のまつり口からオガやパウダーとよばれる粉がコートのなかに入ります。おそらくですが、いや絶対と言いましょう。業者はそのことを知っています。知っていて知らぬふりをしています。絶対です。こんな簡単なことが分からないはずはありません。それでも、それしか方法がない、、、 儲かる方法ですよ。儲かる。それしかないと考えてパウダークリーニングをしています。

私のインスタグラムのフォロワーのロシアの業者さんは、全て手洗いです。中にはバイオクリーニングをしているところもあります。ロシアのほうがクリーニングは遥かに高いレベルでやっています。しかも、日本のように毛皮が分からないクリーニング業者がやるのではなく、毛皮業者が自分でクリーニングをしています。

クリーニング屋だって、その気になってちょっと調べればすぐにわかります。しかし今やっていることを替えようとはしません。

現実に以前、ブランド品を専門に扱うクリーニング店の社長さんから問い合わせがあり毛皮のクリーニングをして欲しいと依頼を受けたことがあります。その方も今のパウダークリーニングに大きな疑問を持たれていたようです。もちろん私のところでクリーニングを大量に受けて仕事にすることなどありませんので、お断りをして毛皮専用のクリーニングドラムがなくても出来るクリーニング方法をアトリエに来ていただいて二度ほど少しだけ教えて差し上げたことがあります。ただひとつだけ言えば、毛皮の本来の状態を知らずにクリーニングの方法だけを学んでも無理はあります。またいらっしゃると良いのですが。

話もどします。パウダークリーニングは毛の表面、または毛の少し奥のところまでしか洗うことが出来ません。そのため、例えば匂いですが、表面に付いている匂いはパウダークリーニングで一度は取れる可能性があります。しかし、毛の奥から時間の経過とともに匂いが戻ります。極端なことを言えば、スチームなどを仕上げに使えば簡単に匂いが戻ってしまうのです。あとは時間の経過とともに湿気が出たり入ったりすることで匂いはさらに戻ります。

仮に毛の奥まで匂いをとっても、皮についている匂いを落とさなければ、またすぐに皮から毛の奥へ、毛の奥から表面へと嫌な臭いが戻ります。毛皮のクリーニングは本当に難しいのです。そのためには有機溶剤とオガで洗うしかないのですが、そのためには裏地や付属を全部外して洗う以外に方法がありません。

私のところでやる毛皮のクリーニングは、毛皮専用のクリーニングドラムを使いますが、時間で言えば48時間くらいかけます。オガと有機溶剤で洗いますが、丸一日程度では足りません。有機溶剤が皮に染み込み、皮の脂分が有機溶剤で溶かされ、オガに吸収され、さらに毛皮やオガから有機溶剤が完全に抜けるまでドラムを回し続けます。

以前は一日程度で終わっていましたが、研究を重ねた結果、48時間を目途にドラムをかけるようになりました。その理由は匂いもですが、柔らかさが一日では十分ではなく、有機溶剤が完全にゆっくりと飛びきったところで初めて完璧に柔らかくなります。理由は私にはわかりませんが結果が示しています。

でも、パウダークリーニングを専門にやっているところで丸二日もドラムにかけたら仕事になりません。コストも合いません。ですから仕方ないことなのです。

私のところでも、リフォームはコストがほとんど合いません。それでもとことんやる意味は技術向上と仕上がりのためです。お客様が誰とかも関係ありません。目の前の毛皮と向き合うだけです。もちろん既成の商品やオーダー品を作るときもそうです。

毛皮には見た目の美しさが十分にありますが、その美しい毛皮に嫌な臭いがあったり硬さがあったりすれば、毛皮本来の美しさは出ません。

作る職人さんは毛の仕上がりには拘るかもしれませんが柔らかさや軽さ、匂いにまでは気を使うことはあまりありません。

でも、その全てが上手くいかないと本来の毛皮の魅力が出ないのです。その意味でも毛皮のクリーニングは、古い毛皮の汚れや匂いを落とすということと同時に新たな商品を作るときにも絶対に必要な技術なのです。

美容室で髪をカットして、その後シャンプーをしてセットをしないことは少ないかと思いますが、それと同じです。新しい原皮だからすべてがパーフェクトとは限らないのです。皮が厚ければ皮を鋤いて薄くもします。匂いや硬さがあればクリーニングもします。

汚れたり匂いのついた毛皮を洗う技術は新しい商品を作る上でも、とても重要な技術なのです。

そしてパショーネがファーブランドとして生き抜くためにも毛皮のクリーニングは絶対に不可欠な技術なのです。

最後にやっと今日の大事なテーマ(クリーニングが出来ることの本当の意味)に戻れました💦

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

長澤祐一

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?

今日のテーマも難しいですね。

 

しかし、これはこれまでのお客様に判断していただくしかありません。

と、普通は書きますね。

確かに、これまでやってきたことでしか判断はしてもらえないのです。しかし、それは事実と違う場合があります。

それは毛皮という素材をお客様が理解できないということがあります。私は、お預かりしたものはどんなことがあっても最高の状態にしようと未知の劣化の酷いものでも、何とかしようとします。

お客様に判断して頂ければと言えるのは、簡単なことです。とても綺麗な言い方で誰でも言いそうな文言です。現実はそんな簡単ではありません。

以前書いたかどうか記憶にありませんが、本当にどうにもならずに、お客様に極限までやれることをやり、どうにもならずに、ご理解いただいたことが一回だけあります。

blogを始めて二三年のときだったかとおもいます。劣化等について書き始めた頃に、駆け込み寺のように、たくさんの問い合わせがありました。その中でどうしても、思うようにならないコートがあり、その時は、頭を下げ、お客様には許していただきました。都度途中経過も説明しながらです。

最後は、長澤さん、もう良いですよ。もう十分やっていただきました、、、と言ってもらいながら、これ以上は無理だと自分で判断しあきらめたことがあります。

 

劣化のあるものは読み切れるものと、先が全く読めないものがあります。そんなこともあり普通は絶対やりません。一般的な業者のほとんどは、劣化や硬化に対して知識がないということもありますが、そのために少しでもリスクのあるものは受けません。それは仕方ないことなのです。責任が持てないということが一番の理由です。まして高額な毛皮という素材ですから。

私の場合は自分なら出来るかもしれないという気持ちと、なんとかして上げることが出来ないだろうかという気持ちが半々で、お引き受けすることがほとんどです。

もちろん、利益なんか度外視です。利益やリスクを考えるから他の業者さんは絶対に手を出しません。それはよく解るのです。でも、だから何時までたっても、技術力が進歩しないともいえます。

 

確かに、リスクのある状態のコートのリフォームは利益なんかまったく出ません。しかし、ノウハウという大きなメリットは自分に残せます。そのノウハウは次に必ず役に立ちます。

もちろんすぐではありませんが、複数の結果は必ず回答を導きだしてくれることがあります。

 

ただ、正直言うと、複数の失敗したデータから導きだされた結果が、一番最初に解っていれば、あの時のあのコートももっとよく出来たのではないかと思うこともあり、申し訳ないと思うことも多々あります。というかその連続です。科学技術も含め、それはあたり前のことと思いながらも、あの時に今ある技術があれば、もっと良い処理が出来たのではと思うことが多いのも事実です。

ちなみに劣化について少し説明しますが、完全に繊維のチェーンが外れてしまい、段ボールの紙のようになってしまうと、水に濡らしただけで簡単に切れます。こうなるともう100%どうにもなりません。

じゃあ何故こんなに格闘するかというと、ほとんどの場合は劣化しかかっている状態であったり、硬化してしまって元に戻すことができないと判断されてしまったりして一般的な業者からは、これは元には戻りません、または出来ませんと言われてしまうのです。

一見、丈夫そうに見えるヌートリアが簡単に切れることを以前書きましたが見た目ではなかなか判断が出来ないのです。

 

今日もタイトルと一致したかどうかわかりませんが、いつも頭のなかでぐるぐると考え悩んでいることです。

どれだけ、書いていることとやっていることが一致しているか?難しいテーマです。

ただ、お一人でも、このブログを読んで、もしかしたら、、と思いお問い合わせくださる方には、これからも、全力でフォローを致します。

前回のファーブランドとして生きるという記事でも書きましたが、毛皮が好き、、毛皮で助けて欲しいという方がいらっしゃいましたら私にできることは、時間はいただきますが全力で致します。

 

長澤祐一

 

 

小さくてもファーブランドとして生きる

今日は、小さくてもファーブランドとして生きる、、、というタイトルですね。

パショーネの元は毛皮を純粋に作るところから始まっています。

20年以上前は、少しだけ小売店等にも卸したりしていましたが、その後一昨年まで20年くらいいた百貨店の毛皮サロンに常設しパショーネブランドを前面に押し出した販売をしてきました。一昨年、その百貨店をやめたことを機に、昨年4月にオンラインショップを立上げたのですが、それでも、小売店という意識は、まったくありません。

かと言って、どこかに卸して、よりたくさんの商品を売るというようなことも考えていないのです。これまでもOEMも含め、国内某ブランドからのお誘いや各方面からのお誘いもあったりと、いろいろありましたが何処かに卸すとか、他の販売ルートを考えるとかは、一切ありませんでした。

それは、パショーネとしてのブランド価値を頑なに守ることが、すべてにおいて優先してきたからです。規模の大小は関係ありません。

そういう意味ではパショーネは一般的な小売店ではないのです。

オンラインショップやアトリエに併設した商品をお見せする場所もありますが、決して小売店ではありません。

小さくてもファーメーカーもしくはファーブランドとして存在しようとしています。そしてその商品提供の窓口が、アトリエに併設した接客スペースであったりオンラインショップだったりしています。

一般的に、小売店なら何を売っても成り立つのです。

しかし、パショーネは毛皮以外のものを売ろうなんて欠片も思っていません。

国内の某有名ファーブランドが通販でお酒も販売していますが、私のところでファー以外を商品として販売することはありませんし、もちろん洋服なども販売はいたしません。

ひたすら毛皮だけを販売してまいります。それは今後も変わることはありません。余計なものに目や時間を取られて毛皮に目を向ける時間がなくなることは避けています。

しかし、毛皮以外を扱うことを批難している訳ではありません。企業が継続していくということは、それほど難しいということも私は知っています。

ただ、私は企業として大きくするよりも自分の納得いくものをやりたいと、それだけを優先してきました。しかし、それでも事業継続は簡単ではありません。売上が取れれば何でもやりたいという気持ちは誰よりも分かるつもりです。

ただ、それだと何処かで本当にやらならなければならないことを見失うような気もします。他のアイテムを扱いだしたら、ファーの品質なんて継続して保つことなんか出来ません。出来ているというならそれは、厳しい言い方ですが、その程度のものです。ファー以外のものに目が行ったらファーのことは何処かに行ってしまいます。

ファーが宝飾のように大きな市場にならないのは暖冬や毛皮に対する誤解もありますが、ファー素材の均一化が難しく、とても曖昧だからです。個体ひとつずつすべてが大きく違いが存在して、さらに作る職人のレベルでも他の業種以上に大きな差が存在します。

その分、いい加減なところも一杯あり、顧客からみて基準が曖昧というか、ほぼ無いに等しいからです。顧客は業者を信じるしかなく、その業者もいい加減な知識で販売しているところが多く、顧客から絶対的な信頼感を得ることが難しいからです。

そんな難しい素材で、他のビジネスに目が行ったら、毛皮の高い品質を維持するのは私は難しいと考えます。毛皮をビジネスとして捉えてたくさんの企業が大小過去に存在しましたが、大半は潰れて行ったことでも、そのことが分かります。

パショーネは、これからも小さな規模のまま今の商品力とアフターや技術力のみでファーブランドとして存在していきます。

ただひとつ必ず変わるだろうと言えることは、これまでも百貨店内の競合他社の絡みもあり出来なかったサービスやアフターもありますが、今後は少しずつ変えて行こうと思っています。

そしてパショーネにしかできない商品とその”ものまわり”を充実させてまいります。

それが、今日の、小さくても”ファーブランド”として生きるというタイトルの意味です。

 

ですから、小売店でもなく、加工業でもありません。もちろん、様々な難しいと感じるお直し等も加工屋としてではなくファーブランドとして、接客対応も含め、しっかりとしたお打ち合わせの時間も取りながら、お直し等の仕事も受けてまいりますが、単純な、たいした打ち合わせもなく、お直しだけをするということは基本的にはあまりありません。

ただひとつ、加工だけを受けるとすれば、他社で断られたもので私のところであれば出来るかもしれない、お役に立てるかもしれない、、、という特殊な場合と毛皮がひたすら好きでたまらないという方の要望は出来る限り聞こうと思います。

それが、ファーブランドとして生きる意味のひとつでもあると思っています。  長澤祐一

 

 

 

気が付く限りのことをする

今日は、気が付く限りのことをする、、、というタイトルですね。

最近、お客様への発送があり、既存のお客様のためのものも、オンラインショップで販売されたお客様への発送もあり、ずっとどうすべきかを考えています。

ただ、最終的には、これまでと同じ、サンクスレターのようなものはなく、ブランド品のような綺麗なコストのかかった箱でもなく、ひたすら、お買い上げ頂いた商品を今後どう保管すべきかというところに力を注いでいます。

それで良いかどうかは分かりません。きっとブランドのような煌びやかを求めるお客様からすれば、すごく物足りないのでしょう。

でも、単純に皮のバッグののようなものなら、煌びやかな箱に入ればそれで夢見心地にさせることはできます。しかし毛皮です。ほとんどの人がどう保管し、どう扱っていけばいいか解らないのです。もちろん販売する側のプロでも、怒られるかもしれませんがほとんどが理解していません。

であれば、どうやって扱えばいいかを伝えながら、それに必要な梱包や付属を付けて差し上げたほうが余程親切な気が私はします。

一般のブランドものの扱いは、納品するまでが全てです。サンクスレターも付けて、梱包を綺麗にして、、、 でも、その後どう毛皮を扱えばいいかは、どこも責任を持ちません。どうしたらいいかをお店も解らないのです。

私は、納品が終わって、そこからが一番大事だということを知っています。そのためにどうすればいいかを考え、お伝えすることが納品時に一番大事なことだと考えます。

以前の百貨店時代は競合他社に合わせる必要があり、思うようなことが一部出来ないこともありましたが、今は単独のショップからの販売です。

そのため、私が考えることを出来る限り実践しています。

今日のテーマに沿ったかわかりませんが、気が付く限りのことをするという意味では、これからも徹底して、納品後のことを出来る限り考えて行こうと思います。

コートやマフラーなどの小物も含め、お買い上げ後、一回はクリーニングが無料というのも、その一つとして提供しています。

 

長澤 祐一

綿の大切さ

今日は綿の大切さ、というタイトルです。

綿も用途に応じてと言いたいところですが、基本毛皮は柔らかいというイメージですね。例えば毛皮の皮がせっかく柔らかいのに、わざわざ少しジャリっとするバイリンを使うメーカー、または加工会社がたくさんあります。

バイリンは確かに軽いのですが、意外に硬いのです。頻繁に使われる理由は、コストが安く済むせいです。

私のところでは、以前はスウィッサーという、一般のウーリーネットというものよりもさらに柔らかいものを使っていました。しかし、生産中止になってしまい、海外の綿を使ってみたのです。

価格は超高いですが、さすがにこれ以上はないなという感触です。丸徳繊商株式会社 さんというところで買ったもので、ジェノバという綿です。これには参りました。

例えば、セーブル、チンチラ、リンクスキャット等に適切に入れると、まるで本物を(私は本物を触ったことはないのです💦)触ったような感覚で今までの綿の感触ではありません。これには家内も驚きました。

量産のものや、低価格で販売しようと思うものには高い綿かもしれませんが、所詮綿です。そんなに高いものではありません。毛皮のマフラーがいくら低価格のものを売ろうとしてたとしても何万です。何円を削る必要なんてないはずです。しかし、加工に対するメーカーや問屋、小売店の認識があまく安い工賃でやらせようとすることが結果、徹底して安い付属を使うしかなくなるのです。

 

もちろん、加工する側も、それに甘んじて安易な商品作りをしてしまう傾向があるのも事実です。結果、技術なんて向上するはずがありません。だから国内の技術が海外から馬鹿にされるのです。

あっ、ごめんなさい、馬鹿にされたというのは事実ではないかもしれません。しかし、逆に言うと完全に日本国内の技術など無視されているかもしれません。多分、それが事実です。もちろん、私は悔しいですよ。

話戻します。

以前はこの綿をドミット芯としてコート全体に入れていたようですが、さすがにコート全体に入れるには重すぎます。エリとかカフスに入れるにならば最適なのかと思います。

上でも書きましたが、よく毛皮は柔らかいものだというイメージがありますが、毛皮の毛は柔らかいですが、皮の部分については全てが柔らかい訳ではありません。厚くて硬い皮のセーブルやチンチラも実際に鞣しに問題があるときにはよくみられます。ファーの柔らかさを表現するには毛はもちろんですが、皮を柔らかくする必要があるのです。

そして、最後に柔らかく弾力のある綿を入れる必要があります。10円20円をケチって安いバイリンを入れることなど本来はあり得ないのです。しかし、現実にはほとんどが1円でも安い綿を入れようとしています。

無駄なことをして、わざわざ品質を下げているとしか思えないのです。

気になった方は、丸徳さんに是非問い合わせしてみてください。小物や、コートのエリやカフスに入れるには最高の綿です。

長澤 祐一